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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.9.6] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[57]
−当初、雀は和歌から排除された−

雀はヒトの身近なところに居る鳥だ。
"○雀"という名前は色々あり、生物分類の大きな括りもスズメとされるので一族ご発展という印象を与えるが、類縁種が多いということでもなさそう。小鳥としての体形がほぼ雀的になりがちというだけの話のようだ。・・・

┌──岩雲雀イワヒバリ
┼┼┼木雲雀/便追ビンズイ
┼┼┼田雲雀/犬雲雀/田タヒバリ

│┌─機織鳥ハタオリドリ@主:アフリカ, 一部:東南アジア
││┼┼楓鳥カエデチョウ…含む"文鳥"
││┼┼天人鳥テンニンチョウ@アフリカ
└┤
│┌スズメ
││入内雀ニュウナイスズメ
││家雀イエスズメ@ユーラシア大陸西部, 南北米州, 豪州
││岩雀イワスズメ@岩場(南欧州, 中央アジア)
││雪雀ユキスズメ@高山(南欧州, 中央アジア)
└┤
┼┼鶺鴒セキレイ

┼┼【ウミスズメ】
┼┼┼┼海雀ウミスズメ
┼┼【カラ】
┼┼┼┼四十雀シジュウカラParidae
┼┼┼┼ 小雀コガラ
┼┼┼┼ 日雀ヒガラ
┼┼┼┼ 山雀ヤマガラ
┼┼┼┼吊巣雀ツリスガラ
┼┼┼┼髭雀ヒゲガラ
┼┼┼┼五十雀/木回りゴジュウカラ
┼┼┼┼{類縁ではない}豪州五十雀オーストラリアゴジュウカラ
┼┼【レンジャク(寄生[ホヤ]鳥)】
┼┼┼┼緋連雀ヒレンジャク
┼┼┼┼黄連雀/十二黄雀キレンジャク
┼┼┼┼連雀擬レンジャクモドキ
┼┼┼┼耳黒連雀擬ミミグロレンジャク(=唐雀)
┼┼【ヒバリ】
┼┼┼┼雲雀ヒバリ
┼┼【アトリ】
┼┼┼┼金糸雀/"Canary(金有屋)"カナリア
┼┼【ホオジロ/しとど】
┼┼┼┼蒿雀/青鵐/蒿鵐アオジ
┼┼【かなり離れた種】
┼┼┼┼孔雀クジャク
┼┼┼┼四十雀雁シジュウカラガン
┼┼┼┼胡雀(沙鶏)サケイ
┼┼┼┼雲雀鷸ヒバリシギ
┼┼┼┼雀鷹/雀鷂ツミ
┼┼┼┼雀梟スズメフクロウ

当然ながら、雀が生み出す季節感があるが、日本と中国では視点が全く異なる。
日本の七十二候では春分初候の「雀始巣」だが、中国は寒露次候の「入大水為蛤」である。秋になると、雀が見かけなくなり、蛤が沢取れてしかも美味しいゾということか。

そういうこともあり、中国の感覚とは違う歌を詠むのを控えたのか、萬葉集や平安期の勅撰和歌集に雀は登場しない。
と言っても、「枕草子」では取り上げている。
心ときめきするもの 雀の子飼。 [29段]
きたなげなるもの・・・雀の子。 [152段]
うつくしきもの・・・雀の子の、鼠鳴きするに踊り来る。又紅粉などつけて居ゑたれば、親雀の蟲など持て來てくくむるも、いとらうたし。 [155段]

こうした風潮を破ったのは西行か。
雪埋竹と云ふ事を 西行法師[1116-1190年][「山家集」#535]
雪埋む 苑の呉竹 折れ伏して ねぐら求むる 群雀かな
結果、呉竹と雀が定番になるのである。
 二条院讃岐[1141-1217年][「正治初度百首」]
呉竹に ねぐら争ふ 村雀 それのみ友と 聞くぞ寂しき

しかし、それより前に詠った歌人も。
日々一首詠み、毎月集にまとめるという方法を生み出した歌人の方が早いのである。かなり革新的な歌人だったようで、同時代の人々にはかなり嫌われていたようだ。
三月中 曾禰好忠[不詳(923-1003年)「曾禰好忠集」#73]
(寝屋)の上に 雀の声ぞ すだく(集まって騒ぐ)なる 出でたちがたに 子や成りぬなむ
三月終 曾禰好忠[「曾禰好忠集」#90]
浅茅生(あさぢふ)し 雀隠れに なりにけり (むべ)木の本は こ暗かりけり
(参照:松本真奈美[校注]:「曾禰好忠集」@「和歌文学大系54 中古歌仙集(一)」明治書院 2004年)

曾禰好忠の歌が無視されていた訳ではなさそう。
藤原道綱母:「蜻蛉日記」下巻 天禄三年三月条に"雀隠れ"引かれているからだ。
三月になりぬ。木の芽"雀隠れ"になりて、…

尚、「源平盛衰記」巻十七に登場する"千代に替はらぬ緑は、雀の松原、・・・"はかつての景勝地(現:神戸東灘区魚崎西町)。此処を題材にして詠まれた詩歌は沢山あるらしい。
中納言藤原公尹[n.a.-1300年]
竹ならぬ かげも雀のやどりとは いつなりにけん 松原の跡

このような変化が生まれ切欠は、雀伝説が生まれたからかも。(入内雀の名称由来話となっているが、柳田國男説の新嘗雀を後付的に変更したのだと思われる。)・・・
藤原実方が奥州に左遷されて999年に死亡。雀に化身し帰京京したとの話が持ち上がったようである。今でも、雀塚が更雀寺(793年創建:旧藤原家勧学院)にあり、伝承話は大切にされているようだ。「十訓抄」第八 可堪忍于諸事事には、その経緯が記載されている。
実方、蔵人頭にならでやみにけるを恨みて、執とまりて、雀になりて、殿上の小台盤に居て、台盤を食ひけるよし、人いひけり。
((CC)中川聡" やたがらすナビ http://yatanavi.org/text/jikkinsho/s_jikkinsho08-01)
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