[→本シリーズ−INDEX] ■■■ 日本の基底文化を考える [2018.9.13] ■■■ 鳥崇拝時代のノスタルジー[64] −Hindu神話の鳥− 「酉陽雑俎」と「山海経」を眺めたので[→INDEX]それなりに鳥信仰の全体像が見えて来た感じはするが、仏教伝来と共に入ってきたインドの感覚にも触れておかないと勘違いしてしまうかも。 仏教を通したインドの鳥信仰とは、実にシンプルであって、阿弥陀如来の地に呼寄せられた種が最高峰というだけのこと。経典的には、いくつかあるようだが、基本は阿弥陀経であろう。2つの訳で見ると、以下の通り。 鳩摩羅什[漢訳]@402年:「阿彌陀經」記載の鳥@極楽浄土・・・ ・白鵲…鶴つまり白鳥の清浄感 ・孔雀…豪華な色彩 ・鸚鵡 ・舎利śāri…九官鳥 ・迦陵頻伽kalaviṅka(意訳:妙音鳥)…人頭(女)鳥身 鬼郭公 ・共命之鳥…双人頭鳥身 玄奘[漢訳]@600年:「称讃浄土仏接受経」記載の鳥@極楽浄土・・・ ・鵝…鵞鳥 ・鴈…雁 ・鶖…亜細亜小人鵜 ・鷺…猩々鷺 ・鴻…菱喰 ・鶴 ・孔雀…印度孔雀 ・鸚鵡 ・羯羅頻迦=迦陵頻伽 ・命命鳥jīvajīvaka[婆耆婆迦]…共命之鳥 尚、上記がどの鳥に当たるのかはいくつかの説があるようだが、十分検討して選んだ訳ではない。釈迦の弟子の舎利子の母親名前や、妙音鳥というところから、おそらく読経の素晴らしさが関係していそうなので、それぞれ九官鳥と鬼郭公(チベット辺りの影響を考えるとここらが妥当では。)にしておいた。鴻はコウノトリとされることが多いようだが、河川に係る鳥と見た。(おそらく、インドに純粋な海鳥信仰は無い。河川棲みの海鳥は対象になるが。) 共命之鳥にもモデルがあると思うが、想像がつかない。漢詩にも登場しているから、よく知られたコンセプトだったようだ。 「岳麓山道林二寺行」 杜甫 ・・・蓮花交響共命鳥,金榜雙回三足烏。・・・ さて、これらの鳥は、土着の信仰対象を篩にかけて選定されたに違いなく、モトネタはどのようになっているか見てみよう。 ヒンドゥー神話の鳥で有名なのはガルーダだが、これは仏教では天部に入っており、雪山的な無垢感にはつながらないのであろう。白鳥の清浄感と、鸚鵡的な読経の美しさが尊ばれたということでは。 日本では、もっぱら鳩摩羅什版の5鳥の話ばかりで、玄奘版版の10鳥をどのように見ているのか情報が無いのでよくわからないが、烏や鵜恵の鳥もを選定しているようだ。そうなると、選定基準は無垢感とか読経能力といった点にあるのではなく、ヒトと感情を共有できそうな親近感溢れる鳥が選ばれたというだけかもしれない。 ---Hindu神話の鳥--- 《カシュヤパ仙Kashyapa+妻ヴィナターVinatā=鳥類の母祖》 ┼│↓子息 ┼├・アルナAruṇá(暁の太陽神Surya) ┼│┼└【Gṛdha】Vultures:Sampati, Jatayu ┼│ ┼│【ガルトマーンGarutmān鳥の王】【スパルナSuparṇa美しい翼を持つ者】 ┼└・ガルダGaruḍa迦楼羅…金翅鳥:Vishnuの乗物 ┼┼┼└[仔鳥]:Sumukha, Suvarna, Subala, Sunaama, Sunethra, Suvarcha ┼┼┼⇒迦楼羅天{食吐悲苦鳥}@八部衆 《"Pakshin(Bird)"》 ┼【スパルナSuparṇa(美しい翼を持つ者)】 ┼┼・再掲(Garuḍa) ┼┼・ジャターユJatayu & サムパーティSampaati…(老)禿鷹 ┼【Gṛdha】 ┼┼・再掲(Vultures) ┼【Haṁsa】 ┼┼・ハンサHamsa…白鵞鳥:ブラフマーBrahmā & サラスヴァティーSaraswathiの乗物 ┼┼ Arayanna@ヒマラヤ…白鳥 ┼【Kukkuṭaśāva】 ┼┼・Krichi…雄鶏(戦争の神Muruganの旗印) ┼【Kāka】 ┼┼・Chanda…烏 ┼┼┼│+Brahmiの白鳥 ┼┼┼└・Bhusunda聖人(烏型)+兄弟 ┼【Tittiri】 ┼┼・Chakora…岩鷓鴣@月光 ┼┼・Kapinjala…岩鷓鴣@帝釈天インドラ ┼【Baka】 ┼┼・Bagala…鶴頭神(黒魔術的) ┼┼・Krauncha…鶴 ┼┼・Nadijangha…Brahm愛好の鶴 ┼【Mayūra】 ┼┼・Citramekhala…サラスヴァティーSaraswathiの孔雀 ┼┼・Paravani…孔雀@戦争の神Muruganの乗り物 ┼【Sarngika】 ┼┼・Jarita…Mandapala聖人の鳥型 ┼【Shuka】 ┼┼・Suka…鸚鵡@Vishnuの化身Kamadevaの乗り物 ┼┼・Shuka…鸚鵡@Kalki ┼【Shyena】 ┼┼・Shyena…神鷹@火神Agni ┼【Uluka】 ┼┼・Pravirakarna…ヒマラヤ梟 ┼┼・Uluka…梟@Lakshmi ┼【Sarngika】 ┼┼・Jarita(Mandapalaの妻) ┼【他】 ┼┼・Byangoma & Byangomi…巫役鳥 ┼┼・Gandaberunda or Berunda…双頭 ┼┼・Homa Pakshi…空中孵化 ┼┼・[ペルシア]Huma 《馬》 ┼┼・Dadhi-krā…馬[Ashva]だが、時に鳥 《キメラ体》 ┼┼・Sharabha…ライオンと鳥のハイブリッド獣 《霊体》 ┼┼・Gandharvas(Apsarasの夫)…部分的に馬や鳥に化身 ┼┼・Kinnara & Kinnaris (ご注意) Wiki@enを利用したに過ぎないが出典が辿れなかったり、明示的ないものもあるので、その手の情報は一才記載しないことにした。同一の叙事詩でも文献によって内容がかなり異なるようだし、この分野は対処が難しい。) 本シリーズ−INDEX> 超日本語大研究−INDEX> 表紙> (C) 2018 RandDManagement.com |