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■■■ 日本の基底文化を考える [2018.9.17] ■■■
鳥崇拝時代のノスタルジー[68]
−鳥居考 [序]−

日本の鳥信仰を考える際に避けて通れないのが、"鳥居"とは何だ、という問題。せっかくだから取り上げておこう。

小生は、雲南辺りの高床式住居に棲む焼畑稲作の少数民族の風俗から見て、神のお遣いたる鳥の止まり木しかあるまいと見ていたが、どの鳥を選んでもしっくりこないので気にはなっていた。
(鶏は長鳴鳥で石上でも飼養されているが天高く飛べない。太陽信仰に関係する烏は、熊野に関わるものの、一般的に神社と係るとは思えない。白鳥は使者の霊が飛んで行くシーンでの登場する鳥で、死を穢れとする神社にはにつかわしくない。葬儀役とされている鳥も拙いだろう。鴨は鴨居という言葉がある以上、該当するとは思えない。そもそも渡り鳥は、肝心の田植え時期と無縁になってしまう。神のお遣いとしては春告鳥がピイタリだが、梅と鴬と並列的になるとは思えない。雀のイメージも今一歩しっくりこないし、鳳凰のような想像上の鳥を措定する習慣があったとも思えないし。)

と言う事で、先ずは軽く頭の体操。

準備体操としては、Wiki(JPN)の"鳥居"の記述について自分なりの見解をまとめるのがベストだろう。
一般的にそうは言えないが、ココの解説は秀逸。レビューとしての質云々の話ではなく、整理がつかないほど色々な見方が生まれる理由がなんとなくわかるように組み立てられているから。

冒頭の"概要"のイの一番にもってきた記述が鋭い。"鳥居を立てる風習は、神社の建物がつくられるようになる前から存在した。"
この一行を受け止めることができるかどうかが勝負ということ。

つまり、神社建築物としてのトリイと、その名称の"鳥居"のどちらの話をしているのか、頭の整理をしてかからないと、情報をいくら集めても混乱をきたすだけですゾとのご注意。

そこらを曖昧にしていると、アプリオリに、雲南辺りの少数民族と日本人は文化的にルーツが同じという主張に乗ってしまうことになる。
この場合、名前の類似性の話ではないから、しっかりと、形態と信仰的類似性を眺めている気分に陥ってしまいがち。ところが、実はそうではない。ご都合主義的に、建造物や信仰の一部だけをとりだし議論しているに過ぎない。情報そのものも、注意してかかるべきであることに気付かされる。・・・
要するに、オレンジとアップルの似ている点や異なる点を、その性状や歴史の観点でいくら精力的に眺めても意味が薄いということ。グレープやカキを恣意的に視野から外して議論しているからだ。

Wiki(JPN)では、《起源》を"文化人類学的な観点"と"語源"に分けており、「語源についても同様に不明である。」との結論になっているが、このことからすれば当然の話。

換言すれば、トリイという建造物の概念をはっきりさせれば、少なくとも"語源"の方は決着済みですナと教えてくれたのである。

実は、この概念の曖昧さこそが、日本の文化の特徴でもある。"ゼロ or イチ?"への回答を、択一を避けて"or"とするような体質を指す。混淆状態を良しとするのだ。

わかりにくいか。

つまり、村の鎮守様に建造されているような"鳥居"の語源ははっきりしているということ。
それは、"鴨居"同様の、建築用語。
(参考) 三田克彦:「鳥居の原型と冠木、唐居敷の変遷−門にみられる長押構造−」日本建築學會論文集48 1954 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijsaxxx/48/0/48_KJ00004403249/_pdf

難しいのはこの先。

もともとは鳥信仰から来た言葉ではなくても、この用語に鳥信仰が被ってきてもなんらかまわないのだ。状況に応じて習合が進んでいくことになる。
同時に、建築用語だから、類似構造の建造物であれば、神社信仰とは無縁でも"鳥居"と見なされることになる。

そんなことは知っていても、わざわざ言わない人社会ならではの現象。曖昧とは、必要ならいつえも習合するという方針を堅持したいがため。バッサリと新陳代謝するしかなければ止むを得ないが、そうでなければ共存かつ習合という3本立てが望ましい訳だ。
お蔭で、概念は曖昧化するが、常に概念を考えないといけないので、概念思考好みと言えなくもない。

おそらく、それは日本人の出自が関係しているのだろう。
超人的能力を発揮して漂着後に土着化した人々と大陸から次々渡来した高級難民のハイブリッド民族が生み出した一体化するためのルールと考えることもできそうだから。
大陸のような、天帝指名の天子と血族信仰一色の儒教国家にしたくないなら、そうするしかあるまい。
[→鳥類分類で見る日本の鳥と古代名]

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