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■■■ ジャータカを知る [2019.4.2] ■■■
[23] インドの犬
🐕インドの犬は独特の体質を持っているとの談をよく目にする。

野犬と家犬の差は僅少で、地場犬Domestic dogとして一緒くたに生活していそうとの見方が多いようだ。もちろん、先進国的なペット犬も居ることはいるが例外的存在と見なされている。人々も、癒し感など期待している訳もなく、ほったらかしだが、誰彼の見境なく精一杯の親近感を与えるべく近寄ってくる犬も多いらしい。

小生はインド旅行をしたい気分になったことがないのでよくわからないが、ヒンドゥー一色のバリ島には。かつて毎年1週間以上滞在してのんびり過ごした覚えがあるので、その時の印象と似た感じを受ける。下目つかいでいかにも卑屈そうな態度。怠惰そうに過ごしており、邪魔なところにいるとヒトに足蹴にされ、すごすごと去っていく調子だった。日本の物価と少なくとも一桁違う頃であり、仏教のバンコクの犬も似た風情だったので経済的要因と気候の違いと見ていたが、ジャータカを読んでいて、どうもそれだけではないような気がしてきた。

印度狼の系譜話[→]で触れたが、狼は群れの動物であり、犬もその習性を引きづり飼い主一家の一員として収まらないと落ち着きを失うと考えていた。野犬化して飼い主不在でも、自分達で群れの社会を樹立するのが普通。
しかし、それはインドの犬には通用しないかも知れない。つまり、日本とインドでは犬とちても相当に違うということ。

日本の犬らしい犬とは、秋田犬や闘犬系の大型種や、北海道産の犬達をあげる人もいるが、島国であるから矢張り小型の甲斐犬や柴犬の方だろう。
これらは、シェパード系を除けば、洋犬とは随分と違う。体形や表情だけでなく、その性格にも、狼的なモノを感じさせるからだ。
人工的な育種を嫌う風土だったから、それも当然と思っていたが、それ以上のモノがあるのではという気になってきたのである。

インドの犬には、そもそも群れの概念が無いのと違うか。

従って、順位序列観は場当たり的になる。
ジャッカルは群れるが、その順位序列と社会秩序については厳格ではない印象を受ける。群れにとっての意味付けのもとでの行動とは思えない、単独での活動時間が余りにも長いからだ。狼と違って、それぞれが、勝手気ままに生活しているようにも見える。
つまり、インドの犬は体質的に狼よりジャッカルに似ているということ。

データに基づいてもいないし、そのような説があるとも思えないが、どうしてもそう見えてくるのだ。思わずこんな系譜を考えてしまうのである。
┌────金色ジャッカル
┌──×[絶滅した]ユーラシアの灰色狼
└┬┴──インドの野犬/家犬
└┬──大陸狼
┼┼└──日本の野犬/家犬

ただ、今のインドの犬の生態と、古代が同じであったのかはなんとも言い難し。

ジャータカには帝釈天が創った大黒犬がでてくる。[#469]・・・
すべての人々が堕落し法をないがしろにした生活をしていることに気付き、帝釈天は見るだに恐ろしく凄まじいうなり声をあげる黒い神犬を放ち、人々を震え上げさせた。

この犬は巨大な黒色の純粋血統の猟犬、"Mātali"。バナナより大きいプランテンの大きさの4つの牙があり、妊婦は見るだけで流産するような形相。5つ撚りの鎖で繋がれ赤い花輪の飾りがついている。
一方、手綱をとる帝釈天は、一対の黄色袈裟を着け、頭の後ろで髪を束ね、赤い花輪を飾り、珊瑚色の弦を張った大弓を持ち、先が堅い槍のような矢を指先で回し、森の人の出で立ち。


犬が恐ろしい動物でもあった訳で、だからこそヤマYama/閻魔の使いになったと思われる。

しかし、森の狩猟者にとってみれば犬が神であってもおかしくない訳で、グジャラート近郊の地母神Hadkai Maaは犬の背に乗っている。
よく見れば、シヴァにも犬王Svapathiがよりそっている。憤怒相Bhairavaの時は乗り物になっているし。

街中でグウタラに過ごす姿は、犬の本来のイメージとは大きく違っていた可能性があろう。

勿論、ジャータカには飼い犬話も収載されている。
犬可愛がりもあったようだ。[#22]
王が大切に使っている馬具の革紐が雨に濡れ、齧られて使い物にならなくなった。犬の仕業とされ、怒った王はすべての犬の殺害を命じたが、よく訓練された王宮犬だけを除外。しかし、犯人は王宮犬で外は無関係と菩薩が指摘し、犬に嘔吐草入ミルクを飲ませその証拠を提示した。

犬の存在で癒されるという気持ちもあるようだ。但し、動物間での話だが。[#27]
国の儀仗役の象が居場所で、象が落としたお米を食べる犬がいた。両者は大の仲良しに。
その象がある時食事が摂れなくなり、なにもしなくなってしまった。王はその原因を調べるよう命じた。すると、たちどころに理由が解った。犬が連れ去られたからだった。犬を戻すと、象は大泣きして喜んだ。

飼い犬の習性は遍く知られていたようである。一見、勝手に生活しているように見えていても、飼い犬としての本分はあるようだ。[#242]
タワーの休憩室で水運びに子犬時分から飼われていた大きな犬がいた。村人がその犬を買って鎖でつないで連れていった。なにも抵抗せず、吠えもせずだったが、夜になって逃げて戻ってきたのである。

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