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■■■ ジャータカを知る [2019.4.10] ■■■
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🐖豚は紀元前4,000年頃メソポタミアで家畜化されたらしいが、その種が各地に伝播したのではなく、各地土着の猪が豚となったと見てよさそうだ。
猪との一番の違いは、繁殖に季節聖がなくなった点だろう。
  〇豚Domestic pig/家豬

豚は汚物をも食べるから不浄だという感覚は上流階級には強いかも知れないが、そのことは放置しておくだけで飼育可能なうえに、凶作時でも生き延びる力があることを意味する。イザというときの備えに豚ほど重宝する動物はなかろう。

にもかかわらず大切にされてはおらず、「豚」と呼ばれることは、軽蔑されているとみなすのが普通。
ところが、ジャータカではそのような扱いではない。

瘤牛[→]のところで触れた、姆尼迦豚譚[#30]とほぼ同じ論旨な豚譚がある。[#286]
お米の粥で養なわれている太った豚を牛は羨んでいた。ところが、その家の女の子の婚礼儀式のために殺され料理されてしまう。それを知って、切り藁の食事なら長寿命実現と納得。基本牛の方の話で、豚の方は無視されている。
だからこそ、次の豚譚が生きてくる。

肉用豚そのもののお話なのだ。[#388]
老婆が籠を持って来たので殺されると思い母豚が逃げてしまい、残された兄弟子豚は息子のように育てられた。成長しても売る気がなかったが、無理にそうさせられ、豚が呼ばれた。雰囲気を察し、弟豚は死の恐怖に慄く。兄豚は、もともと食べられるために育てられたのだと説諭。どうせ殺されるなら穏やかに対応すべしと。その教えの素晴らしさのお蔭で豚は生き残った。

想像がつくかと思うが、兄弟豚は入浴し香油の香りで満たされ、衣服を着用し、花鬘をつけてもらい、侍者もあてがわれたのである。
言うまでもないが、この牝豚に宿ったのは菩薩。
このような話は、おそらく、聖書の民には簡単に受け入れられるものではなかろう。

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