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■■■ ジャータカを知る [2019.4.23] ■■■
[44] コブラ
ナーガ王Nāgarāja/那伽竜王族とは竜である。
コブラ型毒蛇トーテム族と見て間違いないだろう。ナーガNāgaと蛇snake & serpentは別扱い。

ヴェーダではナーガと言う名前は無視されているようだ。蛇信仰は迫害されることが多いが、婆羅門も嫌ったのであろう。毒蛇を殺さずに野放しにする土着のコブラ信仰には耐え難かったのか、蛇使いに祭祀権を侵されることを懼れたのか、よくわからぬが。
ともあれ、大衆的には蛇の生活圏を犯すなという感覚が広がっていたのだろう。日蔭を与えてくれる樹木の精霊を大切にすると同時に、その樹木の洞や枝はナーガのテリトリーとして神聖な場所としていたのだと思う。これを破ると、罰が下ることになる。だからこそ、大衆に人気があるビシュヌVishunuが、蜷局を巻くアアンタ(基本形は数多くの頭を持つコブラだが通常の蛇頭の図絵もある。)[=ナーガ王シェーシャ])の上に横になって微睡む訳だ。もちろん、非婆羅門を鮮明に打ち出す放浪的苦行者達(サドゥー)の信仰対象である、非ベーダの神シヴァもナーガを首に巻いている。現実の修行者の場合は、普通の蛇しか巻かないだろうから図絵はコブラでなくなっている可能性もあるが。

換言すれば、それぞれの地域あるいは家のレベルで、土着のナーガが存在することになる。コブラが棲んでいなければ、他の毒蛇が代替していることもあろう。ここまで深く浸透しているのは世界を眺めてもインド以外には無いのではなかろうか。

ジャータカにナーガが登場してくるのはこんなところ。・・・

[#81]飲酒譚
酒祭での泥酔醜態話だが、この説話の背景説明に猛毒なナーガNāgarāを降伏させる力を持つ釈尊の弟子サーガタSāgata/莎伽陀が登場する。人々から供養された酒を飲み酔ってしまうのだ。
この事件を切欠として禁酒戒が生まれたのかも知れぬ。25年間近侍を務めた阿難以前の可能性が高そうだから。
果木での収穫時や葉刈の際に、毒蛇の存在に気付かずに噛まれることが多かったと思われ、仏僧は毒蛇を避ける聖仙と見なされていたのだろう。
[#133]Caṇḍaナーガ王…
住んでいる湖に鳥が糞を落とすので激怒し火焔放出。
[#304]ナーガの王とその兄弟王子@ヒマラヤのダッダラDaddara山
弟は乱暴者で兄がかばう。(serpentでもある。)
[#386]山羊の話で取り上げた。[→]
王が蛇としてやっつけられていたナーガの王を助けて交流。
[#524]サンカパーラSaṅkhapālaナーガ王…
戒を守ることに忠実で捕まってしまった。
[#543:長編]ブーリダッタBhūridattaナーガ王子…
人間界に転生したい。地下の王宮では難しいと考え、地上のヒトの世界で瞑想することに。
[#545:長編]ヴィドゥラ賢者Vidhura
Varuṇaナーガ王の命令で賢者は夜叉Yakkhaの将軍に捕まる。女王が心臓を得たいがため。

和訳(中村元[監修]藤田宏達[訳]:「ジャータカ全集 1」春秋社 1984年)には、"因縁物語(ニダーナカター)"が収録されており、"竜"が登場してくる。"
[I] 遠い因縁話
徳の威力で大地が震動したが、都の人々は立っていられないほどの難儀。これは、竜、鬼神、夜叉、天神の誰の仕業かと。もちろん、竜王話もでてくる。
[II] 遠くない因縁話
釈尊誕生時、空中から二筋の水が流れ出て注ぐ。灌頂シーンであろう。この箇所は、様々な経典に登場するらしく、温冷二水を竜王あるいは帝釈天が注ぐという話も多いらしい。
出家、つまり城からの出発時には、神々、竜、金翅鳥等が花環や香を持って供養。
菩提樹に向かう際には、竜、夜叉、金翅鳥等が供養。
そして、魔軍に勝利すると、竜、金翅鳥、神々、梵天は大賛辞を。

[III] 近い因縁話
釈尊の解脱は菩提樹("Bodhi Tree" or Pippala tree 印度菩提樹)下だが、様々な樹木の下で真理を考察した。アジャパーラ・ニグローダAjapālanigrodha/阿闍波羅尼倶律陀樹(Banyan tree ベンガル菩提樹)、ムチャリンダ樹(Freshwater mangrove or Gaertn パッカドンナム)下。解脱した喜びに浸った訳で、ラージャーヤタナ樹Rajadana(Ceylon ironwood ケート)下では、ムチャリンダ竜王Mucalinda/目支鄰陀が七重にトグロを巻いて囲った。
そうこうして、梵天勧請に繋がるのである。

🐉《Nāgarāja/那伽竜王族》
  [祖]カドゥルーKadrū & カシュヤパKaśyapa⇒1,000ナーガ
   [〇:「法華經」八大竜王]
  〇ヴァースキVāsuki/和修吉
  〇ナンダNanda/難陀 =シェーシャŚeṣa/舎沙
  〇トクシャカTakṣhaka/徳叉迦
  〇ウパナンダUpananda/跋難陀
  〇サカラSāgara/娑伽羅 or Karkotaka
  〇アナパダッタAnavatapta/阿那婆達多
  〇マナスManasvin/摩那斯 or Manasa/摩納娑
  〇ウッパラUtpalaka/優鉢羅
  ・ムチャリンダMucalinda/目支鄰陀
  ・アパラーラApalāla/阿波邏羅

[不空[訳]:「大雲輪請雨經」卷上]
難那竜王。塢波難那竜王。娑伽羅竜王。阿那婆達多竜王。摩那斯竜王。拏竜王。徳叉迦竜王。持國竜王。素吉竜王。目眞隣陀竜王。伊羅跋拏竜王。芬陀利竜王。威光竜王。吉賢竜王。電鬘竜王。大摩尼髻竜王。摩尼珠髻竜王。光耀火竜王。帝釋仗鋒竜王。帝釋幢竜王。帝釋杖竜王。贍部幢竜王。吉祥竜王。大輪竜王。大蟒蛇竜王。光味竜王。月威竜王。具吉祥竜王。寂見竜王。善見竜王。善住竜王。摩尼瓔珞竜王。興雲竜王。持雨竜王。雨竜王。大拍脇聲竜王。小迫聲竜王。奮迅竜王。大撥拏竜王。大項竜王。深聲竜王。大深聲竜王。大雄猛竜王。塢鉢羅竜王。大歩竜王。螺髮竜王。・・・象耳竜王。・・・牛頭竜王。・・・馬形竜王。・・・

鳩摩羅什[訳]:「妙法蓮華経」《序品第一》 【龍王衆】
    有八竜王。
  ・難陀竜王
  ・跋難陀竜王
  ・娑羯(伽)羅竜王
  ・和修吉竜王
  ・徳叉迦竜王
  ・阿那婆達多竜王
  ・摩那斯竜王
  ・優鉢羅竜王
    等。各与若干百千眷属倶


(参照)崇麿満久:「仏典の中の樹木 : その性質と意義(2)」木材研究資料 7, 1973年

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