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■■■ ジャータカを知る [2019.5.5] ■■■
[56] 鸚鵡
鸚鵡[オウム]Cockatoo/風頭鸚鵡と鸚哥[インコ]Parrotは鳥のなかでは見るからに異端。
我々が見かけるのは、中南米や東南アジア島嶼部棲息種だけだが、インドでも似た様なもの。
  ●緑砂糖鳥Vernal hanging parrot/短尾鸚鵡…小型 インド〜東南アジア
  ●大本青鸚哥[オオホンセイインコ](通称:印度鸚鵡)Alexandrine Parakeet/亞歴山大鸚鵡
  ●輪掛本青鸚哥Indian Rose-necked Parakeet/紅領緑鸚鵡
  ●達磨鸚哥Red-breasted Parakeet/緋胸鸚鵡
  ●薔薇色小青鸚哥Blossom-headed Parakeet/花頭鸚鵡
  ●緑輪掛本青鸚哥Blue-winged parakeet or Malabar parakeet…インド固有種

手乗の小鳥がインコがで、枝木に留まる烏並の大きさがオウムとされているが、前者が"true" Parrotこと鸚鵡である。要するに、頭に冠羽があるタイプ。この羽根飾りが美形の種に人気が集まるようだ。

体形的に一番似ていそうなのは鳩だが、それでも余りに違いすぎ、類縁種が見当たらないから、古くに分岐したのだろう。
(そう思って眺めると、嘴から尻尾にかけて恐竜形に近い気がしてくるから不思議だ。)

熱帯型森林棲で植物食の鳥だが、人を懼れずよく馴れる。言葉の物真似が上手な上に、指と嘴を器用に使うので、ヒトに親近感を与えるのだろう。そんなこともあってか、すでに紀元前400年に、ギリシアで飼育されていたとの記録があるそうだ。支配者層には飼育人気があったのだろう。

鸚鵡は、"男女間の愛の神"カーマKāma/伽摩(or マンマタManamatha)とその妃Rati/羅蒂[性愛的歓喜]の乗り物"Sukha"として知られるが、どうしてそうなったのかはよく分からない。

玄奘[訳]:「般若心経」ではアヴァローキテーシュヴァラAvalokiteśvara/観自在菩薩が登場するが、この菩薩の経典と言うよりはマントラであろう。もともとは、衆生の苦悩を聞くのだから観世音菩薩だった筈 。玄奘も天竺への旅でそれを唱えていたのだろう。その菩薩が白鸚哥を従えていることがある。言葉を伝える聖使途であろうか。「仏説観音救苦経」で"左返白鸚鵡 右返聖水瓶 脚踏金蓮華 手提楊柳枝"とあるからのようだ。鳩摩羅什[訳]:「仏説阿弥陀経」の六鳥にも入っていることもあろうが。
  彼國常有 種種奇妙 雜色之鳥
    白鵠
(白鳥)
    孔雀
    鸚鵡
    舍利Śāri
(九官鳥)
    迦陵頻伽
    共命之鳥
  是諸衆鳥 晝夜六時 出和雅音」


ジャータカでは不倫話に登場してくる。
[#145]拉達鸚鵡
鸚鵡は、男好きの婆羅門の妻を見張るように命令されるが、ご乱交を制止せず放置したまま。帰宅した夫に一部始終を報告。こんな家にいられぬと鸚鵡は森に飛び去る。
[#198]ラダ[羅陀]鸚鵡
婆羅門は、留守中に、男好きの妻を見張るよう、飼っていた兄弟の鸚鵡に頼んだ。直ぐに男を連れ込んだので、説諭した方は、捻り殺されて火に投げ込まれ灰と化した。

果実好きの習性はよく知られていたようだ。
[#255]鸚鵡
マンゴーの島で、熟れた汁を味わい、実を親のために持ち帰ったが、親は危険だから止めろと。意にかえさず、行くのだが、食べ過ぎで帰途居眠り。実を落とすだけでは済まず、身まで落下し魚に食べられてしまった。
[#429]大鸚鵡
住んでいる果樹に実がならなくなっても、僅かな食べ物で生活し続けている鸚鵡の王がいた。その徳が帝釈天の知るところとない、試すために木を枯らしたのだが、鸚鵡王はそれにめげず木屑で命を繋いだ。帝釈天は白鳥になり、枯れ木を捨てない真意を語らせ、感激し再び果実が実るようにした。

目立つ習性は何と言っても真似言葉だが、嘘をつく訳ではないということだろうか。蛇、鼠、鸚鵡が約束を守るが王子は逆との話あり。すでに取り上げたが。・・・[#73]真實語[→鼠]
嘘はお嫌いなのであろう。
[#127]カランドゥカ[伽藍杜迦]奴隸収入役の奴隸がいなくなった。交易商の娘と一緒になり豪勢な生活を謳歌していたのである。鸚鵡は命令を受けて、その居場所を捜し出した。奴隷は、そこで、自分の系譜や地位を、まことしやかに自慢していた。

と言うか、一旦世話をされると、その恩義を感じているせいか、逃げていくことは滅多にないとされていたのかも知れぬ。
[#430]小鸚鵡
一羽のオウムは長いあいだ住んでいた木が枯れてしまっても、その木への友情をもちつづけて捨て去ることがなかった。

と言っても、鸚鵡だから、真面目で品行方正などということはなし。
[#503]薩提坤巴(槍羣)妥鸚鵡
兄弟の鸚鵡は、換羽の最中に旋風で、それぞれ盗賊村と賢者村に飛ばされてしまった。
片や、学んだものは、刃傷、拘束、策略、騙し、卑しい変節、襲撃、暴力行為。片や、自制心、禁酒、優しさ、正義、そして真実を学ぶことになる。その結果は如実に顕れる。

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