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■■■ ジャータカを知る [2019.5.8] ■■■
[59] 金翅鳥
ガルダGaruḍaは鳥類の王であり、その図絵は鳥頭人身が普通。

鳥トーテム族の統合シンボルなのだろう。蛇トーテム族とは対立的な存在であるらしい。と言うのは、ガルダの母ヴィナターは蛇の奴隷にさせられており、その解放のため、永遠の命と引き換えにヴィシュヌの乗り物となったとされているから。
(ヴィシュヌと妻ラクシュミー、ヴィシュヌの化身クリシュナ、場合によってはヴィシュヌのシャクティであるヴァイシュナヴィVaishnaviの、ヴァーハナ[乗り物]として描かる。)
このことは、ガルダが最高神であった時代があり、それは最古の可能性も、と見ることもできよう。

発音変化と思われる迦楼羅Karura[=喰龍鳥の金翅鳥]と同一とされており、"金翅鳥"として、インドネシア共和国の徽章や、タイ王国の王室紋章にその図絵が起用されているのはご存知の通り。
ただ、日本では、キメラ表現は嫌われるからか、ほとんど見かけない。その代わり、不動明王が背負う炎は迦楼羅焔であるとされる。一般に仏像はナーガ(コブラ)光背なので、それとは対照的な像であることを示したかったのかも。

Wikiには以下の譚だけ、ジャータカ3部構成がわかるように、記載されているので引用しておこう。・・・
[#327]カーカーティ伽伽蒂妃
○釈迦は、出家者の戒の不淫に耐えられず還俗しようとする弟子に、次のような話をした。
○ガルダにより妻のカーカーティ妃がさらわれた後、ヴァーラーナシーの王はナタクヴェラNalakūbara/那羅鳩婆(宮廷楽士)に探しに行かせた。ナタクヴェラはガルダの羽に隠れてガルダの巣まで行き、カーカーティ妃と性的関係を持った。再びガルダの羽に隠れてヴァーラーナシーへと帰還した後、ナタクヴェラはカーカーティ妃と何があったかを詩にして披露した。それを聞いたガルダは欺かれたと悟り、カーカーティ妃をヴァーラーナシーの王の城へ戻した。
○ヴァーラーナシーの王は釈迦の前世(菩薩)で、ナタクヴェラは還俗しようとする弟子の前世だった。

[#360]スサンディー須遜第妃
ガルダ王は都の王宮でサイコロ遊びをするため、美青年の姿に化けて一族が住む鳥を抜け出した。傑出した美しさの王妃と恋仲になり、暴風を吹かせて知られぬように連れて帰島。王は音楽師アッガに探索させるがなかなか見つからず。
ある時、乗船し商人にせがまれて奏楽。海で聞いていて酔ったモンスター魚が飛び跳ねて、船はバラバラに。漂着したのがガルダの島。王妃と相思相愛になり、ガルダ王に内緒で不倫三昧。商人来訪で突如仕事を思いだし帰国。王宮の遊戯の場でその事情を読み込んで吟遊。ガルダ王後悔。王妃を戻させ、王宮に遊びにも行かなくなった。

「古事記」を読んでいると、ピンとくる。
素晴らしい歌を詠じる美男子が、女性に選ばれる婚姻こそが神話のハイライト。鳥トーテム族とは渡来者や外戚が入り乱れる開かれた"歌垣"時代でもある。あくまでも土着命的な蛇トーテム族とはそこらで折り合いが悪い。
蛇の項ですでに取り上げたような、ナーガ v.s. ガルダ話が基本である。[→]
[#518]パンダラPaṇḍara(snake)
秘密を洩らし、ガルダの王garuḍaに捕まる。
聖者と信じてしまい、体重増のために岩を呑み込むことでガルダ族の脅威を避ける方法を漏らす。その情報を得て、尾を攫んで岩を吐き出させる方法により、ナーガ族はガルダ族に捕獲されてしまう。
[#154]竜譚
金翅鳥に狙われてしまい蛇(serpent)は苦行者に助けを乞う。功徳を説いてどうにかおさまる。

----- 参考 ----- @鳩摩羅什[訳]:「妙法蓮華経」《序品第一》【迦楼羅衆】
    有四迦楼羅王。
  ・大威徳迦楼羅王
  ・大身迦楼羅王
  ・大満迦楼羅王
  ・如意迦楼羅王
    各与若干百千眷属倶。


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