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■■■ ジャータカを知る [2019.5.9] ■■■
[60] 白鳥
白鳥はユーラシアの北方棲息の鳥であり、本来的には雪が似合う姿である。避寒で南方に渡ってくるとはいえ、体躯が大きな鳥だから山を越えた旅行は並大抵ではなかろう。

従って、インドでは滅多にみかけない鳥かと思っていたら、北方には渡来地があるようだ。
  ●瘤白鳥Mute swan/疣鼻天鵝
    (無鳴ではないが、確かに"Mute"的。囀らないにもかかわらず神聖視か。
       仏教経典では白鳥は美声の鳥として浄土に住む。)

  ×大白鳥Whooper swan/大天鵝…インドには渡来しないが紛れ込む可能性はある。
  ×小白鳥Tundra swan/小天鵝…インドには渡来しない。

白鳥だが、現代ヒンドゥー教のペラ紙神話図絵では、ハムサHamsaとされているようだ。
古代文献からも、Hamsaは白鳥であると認められるという説も少なくないというか、現状に合わせて、それが主流化し始めているのだろう。
しかし、同じ神話上の事績と思われる像が有名なアジャンター等で見つかっているが、それは誰が見ても白鳥体形ではない。
白鳥=ハンサ論では、その手の形状の鳥はHamsaではなく、鳥名としてはKadambで全く別であるとしており、余りの強引さには驚かされる。
(もっとも、宗教や政治が絡むと、このようなことは得てして起こりがちでその観点では驚くようなことではない訳だが。)、

常識的には、白鳥=ハンサ論は"白鳥美し"的な潮流に洗われた対応と見るべきだろう。

ジャータカ英訳では、Swanは後の方でところどころで登場するが、必要な登場役という印象は薄い。他と比べて、インパクトが強い鳥ではなかった可能性が高い。
唯一、これは白鳥でなければという話は一つのみ。・・・
[#107]投擲術譚(小石を投げる男)[→山羊]
喋くり祭祀者の口に山羊糞を投げ入れるという面白話だが、その前段に白鳥の目に石をブチ当てる話がある。
今は、社会的制裁があるので例外的事象だが、子供が白鳥に石を投げるシーンはもともと珍しいものではなかった。"止めろ"という大人もいたが、それは子供の意思で行っているというよりは親の感覚を受けたなにげない行為としか思えない。

ハンサ鳥のモデルの、それも眼球潰を狙うような行為をするとは思えまい。
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