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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.10.8] ■■■
[100] 箸墓
最後から2〜3番目に収載されている毛色の変わった話のうちの1つ。
大和城下の箸墓譚である。
 【本朝世俗部】巻三十一本朝 付雑事(奇異/怪異譚 拾遺)
  [巻三十一#34]大和国箸墓本縁語
全長280mもある箸墓の話。
周囲の環境が引き立てていることもあって堂々とした印象を与える古墳だ。と言うか、纏向遺跡が邪馬台国時代の王都であり、その関連の巨大御陵と考えるから、そんなイメージになると言った方が正確。
現時点での名称は「倭迹迹日百襲媛命大市墓」で、ご神体三輪山でもある大物主命の妻(7代孝霊天皇皇女)の墓地とされている。
  [→山の辺の道時代(瀬戸海)] [→山の辺の道時代(盆地内)]

お話は「日本書紀」バージョン。
 姿形が端正な皇女がおり、天皇と母后は可愛がっていた。
 未婚だったが、
 誰とも知らぬ極く気高き男がお側に忍んで来て、
 「夫妻に成りたい。」と。
 皇女は
 「男に触れた事もなく、
  そのようなお言葉に追随することはできません。
  それに、
  父母にこのことを申し上げなくては。」と。
 しかし、夜々、来訪。
 それでも、皇女は近付くことはしなかった。
 そのうち、
 皇女は、天皇に申し上げた。
 「こんなお方が夜々来て、こう申すのです。」と。
 天皇の仰せは、
 「それは人ではない。神のご来訪になり申してりうのだ。」と。
 そうこうするうち、
 皇女はついに関係を結ぶtことに。
 その後は、相思相愛で過ごした。
 とはいえ、誰とも知らず状態のママなので、
 「誰とも知らずでは、極て不審です。
  何処よりお出でになられるのですか?
  真実、我をお思いになっておられるなら
  隠さずに、誰なのかお話になって下さい。
  お住まいもお知らせ下さい。」と。
 すると男は、
 「この近所に住んでおります。
  "我の姿を見たい"とお思いなら
  明日、お持ちの櫛箱中の油壺の中を御覧下さい。
  ただ、見て、恐怖に陥らないように。
  もし恐愕されると、心が堪えられなくなりますので。」と。
 皇女は約束し、男は帰って行った。
 その後、櫛箱を開け、油壺の中を御覧になったのである。
 そこには動く者。
  何だろうと持ち上げて見ると、
  極く小さな蛇が蜷局を巻いていた。
  
(油壺に入れる大きさだったのである。)
 契をしたにもかかわらず
 皇女は恐愕し、声を出し、棄てて逃げてしまった。
 その日の宵には、男来訪。
 いたって機嫌悪く、近付こうともしない。
 どうしたのかと、皇女が近寄ると、
 「あのように申したにもかかわらず
  恐愕するとは
  極めて情けない。
  と言うことで、
  我は、今より先、参ることはない。」と。
 全く気のなさそうな様子で語ったので、
 皇女は
 「これしきの事で、"来ない"とおっしゃるとは
  口惜しい限り。」と言って、
 男を引っ張った。
 その時である、
 男は、女の前に箸を立てた。
 そのため、皇女は即死。
 天皇と母后は歎いたがどうにもならない。


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