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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.9.29] ■■■
[457] 首楞嚴經
ほとんどのお話になんらかの形で触れることができてきたので、「今昔物語集」とは註無しではとても読めたものではないことが実感できる譚をとりあげよう。
ようやくこんな話ができるところまで来た。

本当にこの本を読みたいと思うなら、実は、ここまでが準備体操。
1,000譚もあるのだから致し方なし。要するに、素人は、準備体操無しに読んだところで、ほとんど意味無い書物と考えるべき、ということ。
漫画「今昔物語」があるのかは知らないが、そのような本を読んで楽しみ、そのレべルから一歩先に進みたいと思ったとしても、それは簡単にはいかない。その先は各譚の註を読んで楽しむ領域に踏み込む必要があるからだ。その場合、同時に、全体構成のなかでのその譚の位置づけを感じてじっくりと味わわねばほとんど面白みはない。

さて、対象譚だが、震旦の「首楞嚴経」の威力のお話。
  【震旦部】巻六震旦 付仏法(仏教渡来〜流布)📖「三寶感應要略」引用集
  <31-48 経>
  《39 楞厳経》
  [巻六#39]震旦法祖於閻魔王宮講楞厳経語生浄土語
  ⇒「三寶感應要略」中21法祖法師為閻羅王講首楞嚴經感應
  帛遠字法祖。河内人也。乃於長安。造築精舍。
  以講習首楞嚴經為業時。
  有一人。姓李名通。
  死而更蘇云。
   見祖法師在閻羅王處。
   為王講首楞嚴經。
   無量罪人。聞師講聲。生第二天。
   自云。講竟應生利天。
   彼天等若聞此經。得不退功コ矣。


このお経は、本邦の禅宗系の書物に登場することもあって、情報自体は少ない訳ではない。梵本未発見なので、様々な意見がとびかっているのかもしれない。
 般剌蜜帝[譯]房融[筆録]:「首楞嚴経
     
/大仏頂如来密因修証了義諸菩薩万行首楞厳経705年@広州制止道場
そして、解説を読むと、以下とは違うと記載してあったりする。
 鳩摩羅什[譯]:「新出首楞嚴三昧經/佛説首楞嚴三昧經
ここが厄介きわまるところ。
素人だと、面倒なのでここで通り過ぎていくことになる。
後代の禅宗ならわかるが、広州翻訳バージョンが長安や洛陽で流行っている情景は考えにくいが、楞嚴三昧はいかにもマイナーそうだから。

しかし、全体を眺めていると勘を働かせることができる。ソリャ拙かろう、と。
つまり、おそらく、この経典は隋・唐代ではメジャーでないが、その昔は一世風靡状況だったのでは、と。それを指摘する必要性があるからこそ収録に踏み切ったと想像することになる。
従って、このお経は、多分、こちら。
 支(大月氏)婁迦讖[譯]:「首楞嚴經」179年
極めて初期のお経である。 📖鳩摩羅什

と言うことで軽く調べると、やはりある。
法祖とは、竺法護の晩年期の布教僧で、同時に訳経事業にも注力している。
  ⇒「梁高僧傳」卷一 譯經上9晉長安帛遠(帛法祚 衛士度)
  帛遠[253-305年@晉惠帝],字法祖,本姓萬氏,河内人[@河南黄河以北]。・・・
  祖才思俊徹,敏朗絶倫,誦經日八九千言,研味《方等》,妙入幽微。
  世俗墳素,多所該貫。
  乃於長安造築精舍,以講習為業,白K宗稟,幾且千人。
  ・・・
  後少時有一人,姓李名通,死而更蘇云:
  「見祖法師在閻羅王處,為王講《首楞嚴經》,
   云:"講竟,應往利天。"
   又見祭酒王浮,一云道士基公,次被鎖械,求祖懺悔。」
  昔祖平素之日,與浮毎爭邪正,浮屈,既瞋不自忍,
  乃作《老子化胡經》,以誣謗佛法,
  殃有所歸,故死方思悔。
  孫綽《道賢論》以法祖匹康,論云:
  「帛祖釁起於管蕃,中散禍作於鍾會,
   二賢並以俊邁之氣,昧其圖身之慮,
   栖心事外,輕世招患,殆不異也。」
  其見稱如此。
  祖既博渉多閑,善通梵漢之語,
  嘗譯《惟逮》、《弟子本》、《五部僧》等三部經,
  又注《首楞嚴經》。・・・

「老子化胡經」で論争した僧をそれとなく取り上げたということでもあろう。本当の話かうさん臭さが付きまとうので、こういう形で取り上げたと言えるかもしれない。
  📖「酉陽雑俎」の面白さ[老子化胡経](2017.5.17)

そう思ってしまうのは、この譚はママ翻訳では無いようにも読めるからだ。・・・
「法祖法師、未だ命終らずして、
 此の身乍ら、閻羅王の宮に行て、経を講じて、罪人を救ふ。
 此れ、只人に非ず」
冥土には、たいていの場合、冥官に引っ張られて行くことになるが、遺骸は娑婆にある。間違いもあるし、ご赦免もあり、戻ることもあり、その時遺体が燃されていると元の自分にはなれない。
つまり、肉体は冥土に往くことはなく、魂のみの筈。
この書きっぷりからすると、肉体も冥土に往くことができるようだ。道教仙人的なイメージは否めない。
恣意的に、そう書いたと見てよいのでは。
サロンで、アハハのお話かも。

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