1990年代に始まった事業パラダイム変化…


  95年前後には下図のようにパラダイムが変化した。

 川上とか川下という考えでなく、マス市場で普及品展開を図るコモディティか、絞り込んだ市場や顧客に独特な商品展開を図るスペシャリティなのかという選択が迫られた。さらに、製品の使用方法の提供業務を含む、高度な知識を集約した医薬やコンピュータ・システムのようなサービス型の商品事業が3つ目の基本タイプになった。
 さらに特徴的なのは、スペシャリティの中でも製品特性別のパラダイムではない新しいタイプがいくつか発生した。

 1つはスコープ追求型。---マスプロダクションによるスケールメリットでなく、知識基盤をもとにした類似事業を束ねる動きだ。例えば、化学なら医薬中間体のような特殊製品を主体にするファインケミカル事業体は小規模という常識をくつがえし、幅広く特殊品を揃えた大企業の創立といった挑戦である。当然ながら個々の事業に属する機能を担当するのは小人数とならざるを得ない訳だし、これに対応できる研究開発体制が敷かれる。また、中央集権型の研究は極く重要なものだけになる。従って、戦略によっては中央研究所不要という方針も登場する。

 もう1つが、新産業システム創出型。---パソコンのCPU/OSやゲームが典型だ。これらの成功の鍵は、知識を集約した商品の革新性というより、技術を利用した優れた事業の仕組みである。製品主導の事業とはパラダイムが根本的に違う。製品志向でなく事業の枠組み主導型なのだ。こうしたパラダイムの違いが研究開発システム設計にも重要な時代になった。例えば、自動車産業ならITS(高度道路交通システム)、動力源、環境といった問題に迫られると、事業の枠組み主導型の新しい研究開発システムが登場しておかしくないのである。

 といっても、95年頃のパラダイム変化を知ったところで、意味は薄い。研究開発の成果は将来であり、現在ではなく、将来の事業パラダイムにマッチしたシステムにする必要があるからだ。

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