金属素材産業は情報通信技術で飛躍が可能(1)…


 金属系基礎素材というと、どうしても重厚長大産業のイメージが強い。しかし、「産業革命」に向かう波のなかで、この産業は変身する可能性が高い。

 「鉄」や「アルミニウム」自体が全く別なものに代替される恐れはない。だからといって、こうした材料特性が変わらない訳ではない。20世紀の材料研究から、理論的には、こうした素材の特性の上限値自体は極めて高いことがすでに分かっている。但し、そのような素材は製造コストがかかりすぎ実用性がなかったり、安定した品質で生産はできない。従って、今まで、こうした極限材料は基礎研究が対象とする「夢」でしかなかった。

 情報通信技術が進展すると、この分野でブレークスルーが起きる可能性は急激に高まる。理論的に可能なら、高度な材料を安価に生産できる時代は予想より早く到来する。もちろん、今までのように人の力で研究していたのでは、100年以上かかるだろうが、コンピュータ技術の進歩を活用すれば短期間に成果があがる可能性が高い。

 成分調整と環境条件設定によって、金属組織をコントロールすることで、目的の機能を実現するのだから、製法と環境条件管理技術が鍵を握る。金属組織をコントロールするプロセス技術と解析技術を磨き、他分野の先進技術を活用すれば、ブレークスルー創出は極めて現実的だ。
 科技庁のフロンティア構造材料研究プロジェクト、通産省のスーパーメタルプロジェクトがすでに動いている。(図参照)米国は後発だが、2000年から本格的に研究開発費投入を開始する。高速演算処理とシミュレーション分野の先端企業の本格的参加を促せば大きな成果が期待できる。逆に、情報通信技術の進歩を取り入れる大胆な仕組みをつくらずに、金属材料のプロだけで進めてしまえば成果は極めて限定的となろう。素材技術の知識を情報通信技術でグレードアップして研究開発の生産性の飛躍的向上を早急に図った方が優位に立つといえよう。

 材料の将来に賭ける研究開発は長期的に見返りは大きいように思える。未来に繋がる仕組み作りになるような研究テーマを重視するべき時であろう。現行の製法改良テーマ選択も極めて重要な意味を持ってくる。例えば、組織のナノ・メートル・クラスの解析技術に係わりそうなものを戦略的テーマとみなすことができよう。アルミの成形性向上が図れる金属組織構造を検討している改良研究も重要なテーマとしてもよい。肝要なことは、「産業革命」の時代に武器になる技術領域を見抜くことだ。そして、その分野の知識では世界のナンバーワンになれる仕組みを作ることだ。
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