知恵で戦うファインケミカル事業(1)…


 時代の結節点では、大きな潮流に乗ることがなんといっても重要だ。
 重要な変化は今までの産業の枠組みが崩れ、新しいコミュニティが次々と発生してくることである。従って、この変化に合わせた動きを進めることが肝要といえる。
 図に、時代の潮流に乗る組織とはどういうものになりそうかを理解するために、概念図を示した。左から右へと時代の流れに応じて変化が進む。

 ファインケミカル事業を推進する際、自社のケーパビリティに応じて、これから伸びそうな領域を優先し参入を図っていくというパターンを踏んできた。大きな組織の場合は、その範囲を広くとることで、まあまあ成果を確保できていた。はっきりとしたターゲットではなくとも、成長が約束される大きな市場セグメントに資源を投入していけば、当面勝てるというもの。大きく資源投入できない場合は、当然ニッチを探すことになる。

ところが、こうした動きでは、うまくいかないことが次第に見えてくる。ユーザー側の技術変化が早く、しかも要求事項も目まぐるしく変わる。追いつくのが大変になってきたのである。大きな資源投入をしている企業ほど、対応する動きが遅いために、出遅れたり、 市場が開かないという状況に直面することになる。機敏に動く小規模な体制で進めている研究開発の方が優位に立ってきた。ニーズをしっかり捉えた企業は、その分野に資源を投下し、徹底的に技術を磨きリーダーの地位を強化することができるが、そうでない大規模資源投入企業は縮小、撤退を余儀なくされる。研究開発の方向転換も含め、柔軟に対処することが極めて重要になった。これが現段階である。

 さらに進むとどうなるか。一般論で語るなら「コミュニティ化」が始まるのである。大規模組織なら、組織的に知恵を活用する仕組みを作る企業が力を持つし、小さな組織なら、新しい知識を生み出すことで、独自の産業界を形成していくことになろう。次第にファインケミカル業界という枠組みで考えることはできなくなるかもしれない。

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