知恵で戦うファインケミカル事業(2)…


 下図は、ファインケミカル企業像を分類したものである。

 最初は図中の中心に位置しているが、次第に分化が起こる。

 武器とするコア技術の性格による動きがおこる。各企業は、武器とする技術を次第に明確にしていくのだが、物質そのものの製造技術か、物質応用の仕方に関係する技術かで大きく2分されよう。
 さらに、時代の進展と共に、顧客企業が形成しているコミュニティ内でどのようなプレーヤーとして参加するつもりなのかが問われてくる。広いコミュニティ内で活動するのか、特定の企業群と深く連携するのか、ということだ。

 分類すると、大きく4つのタイプの企業像に分かれる。

(1)マーケットプレース参加型
 製造技術をベースに、コミュニティを広くカバーする。関連製品群を網羅的に揃える必要に迫られよう。様々な同業者と協力関係を結ぶ必要があるから、それぞれの特徴を持つ企業の連合体が形成されていく。


(2)受託生産型
 製造技術をベースに特定顧客とのタイアップを前提にする動きも出よう。医薬品バルクや中間体のように、品質管理と製造責任について顧客が満足できる体制があれば、特定顧客との関係は深まる。研究者が医薬品市場の流れを先読みし、バルク製造受託に成功すればハイプロフィットな事業も可能だ。このタイプに進む場合は、言うまでもないが自社が用意できる技術と、特徴的な技術を、ポテンシャル顧客が理解できるように明示する必要がある。

(3)ロードマップ作成型
 物質の応用技術を武器にして、対象領域を広くカバーする企業とは、普通は当該業界のリーダーである。例えば、半導体レジスト産業が代表例だ。今後の材料開発の方向や、開発タイムラインを掲げ、材料利用の流れの標準を提供し続けていくことになる。技術ロードマップを提案できるから、圧倒的高収益が約束される。しかし、その地位を狙う新技術開発の挑戦者も増える。従って、先頭に立って新技術を生み出していかない限り、地位は守れない。新技術のタネを確保する仕組み作りが必要だ。

(4)モジュール担当型
 物質の応用技術を武器に特定顧客に限定して事業を展開するタイプだ。自社事業が顧客事業のバリューチェーンの一部になってしまう。担当部分に関しては、独占的に受け持つのが普通だから、企業は違うのだが、実態からいえば垂直統合企業の1事業部門に近い形態になる。独立企業の研究開発だが、顧客の研究開発と同一歩調で動く必要がある。両者でバーチャル・ラボを創出する位の一体感が生まれないと、成果はあがらないだろう。当然ながら、自社コア技術がこのバリューチェーンの価値の源泉となるような戦略的研究方針を案出する必要がある。
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