コンピュータの研究開発(3)…


 スーパーコンピュータは時代の先端製品ではあるが、コンピュータ仕様の主流になるという保証がある訳ではない。前述した図のような動きでパソコンが確実に変化していくともいえない。皆が走る方向が正しいという時代は終わった。イノベーションを狙う研究者が増えているからだ。従って、重要なのは、先端を走る技術が本当に次世代の技術として広く使われると予測する根拠の方だ。下図にそうした根拠を検討する場合のキー・クエスチョンを示す。

 スーパーコンピュータ研究といえば、演算スピード競争に短絡しがちな技術マネジメントから脱皮する必要がある。事業的に意義が大きい技術はなにかを常に再定義し続ける必要があろう。トータルなコンピューティングのなかでのパフォーマンスの画期的向上策を練らず、先端技術の追随を続けると沈没する可能性の方が高い。例えば、対応が難しいベクトル型で先端を狙うより、スカラー型で、安価な汎用CPU利用のシステムを完成させる方が、事業的な視点から見れば明らかに魅力的だ。しかし、産業の研究開発にもかかわらず、ドグマ的にベクトル型に固執している研究開発も見かける。理論的に価値あるというのは、アカデミズムにまかせるべきで、企業研究は事業の将来性から判断すべきである。技術の進歩が激しければ、当然のことだが、判断の変更はありうる。朝礼暮改でかまわないのである。

 すでに、スーパーコンピューティング領域では、高価につくベクトル型の将来性は薄いと言う見方が多い。
(http://www.digital.com/hpc/ref/ref_booth4/sld003.htm)クラスター型のコンピュータの性能向上が顕著なためだ。ということは、キーアプリケーション開発が進めば一挙にクラスター・コンピューティング市場の拡大もありうる。それだけのダイナミズムが期待できる産業なのだ。こうした産業での、新しいシステム開発では、優良ユーザーを持っているかどうかが鍵を握る。ユーザーの取り組み次第で成果が大きく左右されるからだ。従って、ユーザーと一体となった開発の仕組みつくりが重要になる。といっても、一般論で仕組みの議論をするより、先端研究の協力を仰ぐべき具体的ユーザー選定に力を割くべきであろう。
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