情報家電の研究開発(2)…


 業務のアウトソーシング化の動きと同時に、部品調達の仕組みも変わる。

 このような動き自体は、開発技術者も知らない訳ではない。しかし、変化の兆しはあまり見られない。

 現実の基板設計業務では、簡単に解決できない問題が常に生じるから、理想論を聞いても「現実感」を感じないのであろう。

 デザイン・レビューさえ行えば解決できる単純ミスの問題は極く一部であり、回路パターンの干渉やインピーダンス不整合といった、やっかいな原因で起きる問題が多いから、どうしてもこのような姿勢になる。配置やパターンを変えるだけではすぐに解決できない体験を持つ以上、「理屈」だけのプログラムが機能すると考えないのは当然といえよう。

 しかし、こうした状況を温存するとどうなるか。情報家電のような軽量・小型機器の場合、実装密度の極限を狙わざるを得ない。従来型の対応を続ければ、ビルドイン型の高密度基板を作成後に不良が見つかったら、ゼロからやり直しになる。部分変更などまず不可能だ。それなら、これを乗り越える方向に一歩でも前進するしかあるまい。設計部隊が率先してこうした動きを進めていない企業は黄色信号が点灯していると考えた方がよさそうだ。このような企業には、もともとデザイン・レビューの意義が浸透してないことが多い。下図に、上手くいかない5つのバリアを示したが、このバリアを突破できないと設計業務革新の方向には進めないと考えた方がよい。

 これからは、設計者がデータやライブラリーを共有しなければ問題解決どころではなくなる。自分の担当部分だけを勧める設計者の集合体では、必ず不具合が生じてくる。分業による結果渡しでは無理になる。相互のノウハウを共有できる体制に移行すべきなのだ。
 研究開発システムの目次へ

(C) 1999-2000 RandDManagement.com