問題2:技術のキャッチアップ…

 日本の技術マネジメントに危機感が薄い2つ目の理由は、時代の読みに係わる問題だ。もしも、この読みが間違っていたら深刻な事態を招く。自信を持って、将来を読み切っているのならよいのだが。

 2. 揺籃期には遅れていても、技術が確立される時期に頑張れれば競争力は保てると考えている。

 今までの日本はキャッチアップ路線で成功を収めて来た。産業への技術応用が始まった時点で遅れていても、市場がすぐに開けるとは限らないので、後追いでも頑張れば十分戦えるとの考え方だ。

 「先行できる研究開発」とのスローガンを掲げていても、実態はキャッチアップ路線が大半である。

 技術進歩が著しい時期は「負けて」もともととと考えるのだ。といっても、できる限り、ヒト、モノ、カネを投入して必死に基盤力向上に励む。そして、技術が成熟してきた時に一気に攻勢をかけて勝利をもぎ取ろうとの目論みだ。当然、「大胆な挑戦」でなく「小振りの試行で当座は辛抱」が重視される研究開発となる。

 問題は、このシナリオが通用するかだ。かつての世界では、このシナリオ通り進んだ。しかし、技術応用が次々と生まれ産業構造が激変するのに、この方式で通用するのだろうか。このシナリオが外れたら、完璧に競争力を喪失することは明らかだと思うが、それだけの緊張感を持ってこのシナリオを選択したのだろうか?

 「産業革命」が始まると考えるなら、とてもこうした悠長な対応はできまい。技術が成熟する頃には新産業構造ができあがっており、キャッチアップどころか、当該産業に参加さえできない可能性が高いからだ。
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