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■■■ 「古事記」解釈 [2021.1.14] ■■■
[13] レガリア語らずの意味
「古事記」では、"三種の神器"という用語は使ってはいないが、降臨に当たって、天照大御神が日子番能邇邇芸命に与えたのだから、それがレガリアを意味しているのは自明。
ただ、独自性を感じさせるレガリアとは言い難いし、3種なのも概念的に珍しくない。・・・
  教権(鏡-御璽)・王権(剣-国璽)・命/食(玉-神璽)

しかし、現代の、即位の礼でも、剣璽等承継の儀として、公的式場に神器が運ばれたから、諸外国の人達は大いに驚いたらしい。マ、覇権実現のためなら革命大歓迎体質だと、当然の反応。超能力渡来人や高級難民大歓迎の風土を護って来た皇統の象徴との認識ができないだけ。

太安万侶は、そんな意味を考えていたようだ。

序文で、神世は道教の世界と断じており、レガリアも当然その流れに乗ると言っているようなものだが、それだけではなく、この3種には、異なる流れを習合させる意味もあると見たのでは。
レガリアにしては、いずれも余りに中途半端な登場の仕方だからだ。

先ず第一に、三貴神に対応しているような風情を醸す点があげられよう。ただ、それは読み手の勝手な解釈で、月讀神はもともとどのような存在かわからないのである。次に不可思議なのが、草那藝之大刀/草那藝剣という名称。もともとの都牟刈の大刀とか、道教的命名の天叢雲剣ならわかるが、この名称だと八岐大蛇退治とは異なるシーンを神威の元としていることになってしまう。しかも、作成者/所有者不詳である。
鏡にしても、高天原の神威ある伝承品ではない。天の岩戸前での神々の対応策として造られたと記述されており、その後、鏡を大神として祀るようにと仰せられたので神器になったと読むしかない。
大穴牟遲~が須佐之男命之御所から宝器と女神を強奪し、大國主~として認めてもらうようなシーンを欠くせいもあるが。
  負其妻須世理毘賣 卽取持 其大~之生大刀與生弓矢及其天詔琴

・・・だからこそ、なかなかに味のある書き方と言えよう。

至極の権威の標章だが、小振りとはいえども同じような標章が各地に存在していたと考えられるからだ。特に、鏡と剣については、道教では呪器として必須なので汎用品に近いし、南方部族では様々な珠・玉がチャーム的に用いられていたことが知られている。
実際、日本の初期の墳墓で、鏡・剣・玉が出土することが多い。
 (当然だが、異なる定義も存在する。例えば、「伊賀國風土記(逸文)」伊賀國號:"三種の寶器"の岩波版註記には、天の逆太刀・逆鉾・金鈴[@「倭姫命世記」]、とある。饒速日命の十種神宝伝承もあり、こちらの方が真正レガリア的。[@「先代旧事本紀」]:嬴都鏡、邊都鏡、八握劔、生玉、死反玉、足玉、道反玉、蛇布禮、蜂布禮、品物布禮)
 (尚、呉越の地では、剣は敢えて使用したりせず、箱に入れて蔵に収納する、至上の宝器だった。 夫有干越之劍者,柙而藏之,不敢用也,寶之至也,…[「荘子」外篇 刻意第十五])
 (すでに触れたが、【遼河文明】@紀元前6200年〜"興隆窪文化"地区では、玉製品[翡翠の龍]、琵琶形銅剣器が多数出土している。)📖海人4面性理解が古代史解明の第一歩

三種の神器は、当該氏族の神寶であり、その神を奉じることで、天皇への帰属を示すことになる。
 (【例】怡土郡の縣主等が祖、五十跡手、天皇幸しぬと聞きて、五百枝の賢木を抜取りて船の舳艫に立て、上枝に八尺瓊を挂け、中枝に白銅鏡を挂け、下枝に十握劔を挂けて、穴門の引嶋に参迎へて獻りき。[「筑前國風土記(逸文)」怡土郡] )

そんなことを考えてしまうのは、「古事記」を太安万侶の歴史観の書として読むからである。

それを意識するとモノの見方が変わって来る。例えば、Wikiには三種の神器の様々な解釈が並んでいるが、どれも教説的で、ピンとこなくなる。
  鏡=正直の本源 玉=慈悲の本源、 剣=知恵の本源…北畠親房説
  鏡=知の用、玉=仁の徳、剣=勇の義…一条兼良説
  鏡=知の象、玉=仁の象、剣=勇の象…熊沢蕃山説
  鏡=天照大神=知徳、玉=月読尊=仁慈、剣=素戔嗚尊=武勇…田中智學説

用語表現は色々あろうが、こんなイメージの神器に映るからだ。
  鏡=辟邪、玉=魂再生、剣=武威除鬼
もちろん、「古事記」的に解釈するなら、依り代ということになり、その神も見えてくる。説明不要と思う。
  鏡=天照大御神、玉=神産巣日~、剣=高木神/高御産巣日~
神器に皇統継承以上の意味を問う必要はないように見える。

ここでの"むすひ"⇒"産巣日"という当て字には舌を巻く。天地・万物を生成・発展・完成させる霊的な働きを指すとされており、その場合、"ひ"は、魂あるいは霊だが、それを日としてあるからだ。
太陽信仰は、天照大御神以前に存在していたと言いたげ。高天原の統治権が天照大御神に譲られたとはっきり書いてあるのだから。
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