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■■■ 「古事記」解釈 [2021.2.19] ■■■
[49] 鴈産卵の戯歌も収載
/雁は冬季に日本列島に幼鳥を伴って渡来し、湿原で越冬する。冬季に産卵することなどあり得ない。
人々は、その鳴き声に特に感興を覚えたようであり📖雁が音、そんな生態をご存じない筈がなく、産卵したならとてつもない吉兆ということになろう。
ところが、お気軽な調子で、産卵を寿ぐ歌が収録されている。

[16]代大雀命/仁徳天皇が豊楽ということで、女嶋に行幸。
その島では、鴈が卵を生むと聞いて、・・・
【天皇】
たまきはる 内の朝臣 汝こそは 世の長が人
そらみつ 倭の国に 雁卵産むと聞くや

【建内宿祢】
高光る 日の御子 諾うべこそ 問ひ給へ
真こそに 問ひ給へ
吾れこそは 世の長人
そらみつ 倭の国に 雁卵生むと 未だ聞かず

【天皇】御琴を弾き
汝が御子や 遂に知らむと 雁は卵産らし
<本岐[寿]歌の片歌>

小生からみれば、ユーモア溢れるシーンである。
なにが面白いかといえば、天皇が戯れ歌として詠んでいるのだが、臣は"長く生きて来ましたが聞いたことなどございません。"と真面目に応答しているからだ。
もっとも、小生もまさか戯れ歌とは思ってもいなかったから、騙されたクチであるが。

よく読めば、姫島とは摂津比売島@難波八十島のことであることに気付く。そこは、淀川河口だが、現在は陸地の一部なので、そんな場所に行幸など有り得ないとして、無視してしまいがちなのだ。
しかし、その地には当時の残渣が現存している。
   姫嶋神社/比売碁曾社(御祭神:新羅王の子 天之日矛の妻 阿加流比売神)
要するに、そこは阿加流比売神が新羅から逃げて来た地ということ。・・・
[15]代品陀和気命/大鞆和気命/応神天皇の頃のこと。女神が夫を逃れて来たというのである。
  新羅国
   ⇒筑紫伊波比の比売島
     (=国生みの姫島@瀬戸内海西端:周防灘と伊予灘の境)
     ⇒摂津国の島(同名で命名)  [@「摂津国風土記(逸文)」比賣島松原]

「古事記」では、天之日矛が、祖国に逃げた妻を追って渡って来たとされている。渡の神が道を塞いでしまい、難波には至らず、宝器を持って但馬国に入ってからの事績が詳しい。

このことは、大陸から転々としながら難波にやって来た阿加流比売の"産卵"を、雁として扱っていると見てよいのでは。もともと、新羅で"赤玉"から生まれた女神でもあるし。それに、天皇自身も大雀だから、雁としたところでほとんど違和感は生まれまい。

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