→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2021.5.14] ■■■ [133] 猪の扱いで見えて来る動物観 その理由に気付いたのはかなり前のこと。 そんなことに興味を持っていた訳ではないから、テキトーに書いてあるが。 📖「豕」考@2014年10月26日 内容を簡単に言えば、亥/𧰨⇒"豕/𧰧"は肉を食べ尽くして残った骨の形象ということ。従って、本来的には、冢(=塚)に使われる場合は"豖"となる。食用ブタを飼っている家との違いは、冠を替えただけではない。 さらに付け加えれば、犭はケモノ偏と呼ばれるが、紛れもなく犬の形象だから、本来はイヌ偏。犬という用語にも注意が必要で、現代中国ではイヌは狗であって犬ではない。 豬[本字]:い[訓]/チョ[呉音/唐音]≠猪/^(=犬+者[≒貯]) この時、自分の"無知"を思い知った。と言うか、そこから脱することがいかに難しい社会に住んでいるかを改めて感じさせられたのである。間違えてはこまるが、"正しいこと"を見つけることができたと思っている訳ではない。そんなことができそうにない問題にどう対処すべきか、という話。 以上、どうでもよい話だが、何回かおことわりしているように、小生は、漢字や「古事記」そのものに特段の興味を持って書いている訳ではないので、ご留意頂きたくということ。 🐷ついでながら、「豕」が野ブタ偏であることを知ると、イのシシ、カのシシ、と呼ばれる理由も見えて来る。・・・ 肉[正字]しし[訓]/ニク[呉音]=𠕜⇒宍(食肉) └→豚[月(肉)+豕]⇒豘 䐁/㞘 但し、イヌ偏をケモノ偏と呼ぶのはおかしなことでもない。・・・ 獣/獸[嘼(狩猟用具と囲いの"口")+犬]けもの[訓]シュ[呉音]シュウ[唐音]ジウ[慣用音] 「古事記」を眺めると、動物は、漁猟の対象になるか否かで、一線が引かれていそう。そうなると、猿や鼠、蛇・蜂・等はその他扱いになるのかも知れない。さらに食肉系は、山産毛物と海産鰭物に2分割されているが、概念がわかりにくい。 少なくとも、中華帝国型の生物のスキン分類は取り入れなかったようだ。ヒトは裸虫で、獣は毛虫といった観察分類は好まれなかったのだろう。毛物とは狩猟対象となる動物であり、荒毛と軟毛で2分しているわけではないから、鹿のように頑丈で荒々しく動くタイプと、鳥のような柔軟なタイプに分けているようにも思われる。 【火照命/海佐知毘古】 取 鰭廣物 鰭狹物 【火遠理命/山佐知毘古】 取 毛麁物 毛柔物 (麁=麤⇒品≒粗) 毛物としては、メジャーが猪と鹿で、それに次ぐのが熊や素菟ということのようだ。 飼育対象としては、猪・鹿・犬に加え、牛・馬があげられる。 このなかでは、猪が王の狩猟対象でもあり、極めて重要視されていたことがわかる。神の化身になったりするからである。猪の場合、狩猟を怠るとすぐに田畑に侵出して荒らし回るから、それは王の当然の勤めでもあった筈だし。・・・ 【大穴牟遅神】…伯耆国 赤猪岩神社@西伯南部 赤猪此の山に在あり 故 われ共に追ひ下くださば 汝なれ待ち取れ 【香坂王(忍熊王の兄)】…怒猪 香坂王騰坐歷木[=櫟くぬぎ]而 是 大怒猪出堀其歷木 卽咋食其香坂王 【大長谷若建命】…葛城山の病猪 やすみしし わが大君の 遊ばしし 猪の 病み猪[夜美斯志]の 吼き恐み 【倭建命】…神之正しき身 伊吹山[伊服岐能山]白猪 於是詔 茲山~者徒手直取 而 騰其山之時 白猪逢于山邊其大如牛 爾爲言擧而詔 是化白猪者其~之使者 雖今不殺還時將殺 而 騰坐 於是零大氷雨打惑倭建命 此化白猪者非其~之使者 當 其~之正身 因言擧 見惑也 【大山守命】…弟 宇遅能和紀郎子殺害を図るも船頭に変相され船から落とされ溺死 "傳聞では、この山に忿怒の大猪が有る。 吾はその猪を取ろうと欲す。 捕獲できるだろうか。" 梶執は「不能。」と答えたので、 再び、何故か問う。 その答: "時は時。往くは往く。取ろうとして取れるものではない。 だから、不能なのだ。" 【忍歯王】…狩猟に出て大長谷王に射殺され残虐に葬られる。 淡海之佐々紀山君之祖名韓帒白: "淡海之久多綿之蚊屋野 多在猪鹿 其立足者如荻原 指擧角者如枯樹御獦" 【赤猪子(天皇の命を仰ぎ待ちて既に八十歳)】 己が名は引田部の赤猪子と謂う。 【大猪子】 又續遣丸邇臣口子而歌曰: 三諸の その高城きなる 大猪子が原 大猪子が 腹にある 肝向かふ 心をだにか 相思はず有らむ イノシシは大王クラスの行う狩猟対象であることがわかる話だらけであり、そのストーリーから見て極めて危険な動物と認識されていたようだ。 ところが、そんな毛物を公的に飼育していたのである。現代でも、ウリ坊は人に懐くので、それほど難しくないとはいえ。・・・ 【猪甘】 初天皇(哀祀命)逢難逃時 求奪其御粮猪甘老人 是得求 喚上而斬於飛鳥河之河原 皆斷其族之膝筋 【🐗猪甘 + 🐄牛甘・🐎馬甘】 市邊王之王子等 意祁王 袁祁王 聞此亂而逃去・・・ 故到山代苅羽井食御粮之時 面黥老人來奪其粮 爾其二王言 不惜粮然汝者誰人 答曰 "我者山代之猪甘也" 故逃 渡玖須婆之河至針間國 入其國人名志自牟之家 隱身伇於馬甘牛甘也 (C) 2021 RandDManagement.com →HOME |