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■■■ 「古事記」解釈 [2021.5.15] ■■■
[134] 鹿の扱いは至って淡泊
狩猟のもう一つの柱である鹿だが、猪の扱いは随分と違う。📖猪の扱いで見えて来る動物観

鹿は肉皮角を使用するだけではなく、面積が手ごろであるため肩甲骨が亀甲代用的に占に使われていた。出土状況から見て、猪骨利用もあったらしいがマイナーである。・・・
【天兒屋命+布刀玉命】…天の岩戸で思金神令思
  召 天兒屋命 布刀玉命 而
  内拔 天香山之
眞男鹿之肩 拔 而
  取 天香山之 天之朱桜
[波波迦]
  令 占合 賄ふ


【天若日子】…降臨
  以 天之眞鹿兒[麻迦古]弓 天之波波矢 賜天若日子 而 遣

【天迦久神】…伊都之尾羽張神のもとへ到達可能な神ということで天照大御神により派遣された。結局、子の建御雷神が国譲り交渉に向かうことになる。
鹿は跳べるし泳いで渡河できるということで、鹿神的に映るので、迦久≒鹿児という説があるそうだ。(「播磨国風土記」飾磨郡の水渡り譚等から。)
春日大社の神鹿や、由緒である鹿島神宮と繋がっていると解釈すれば、ということだろうか。それなら、そう表記してもよさそうなものだが。

名称表記用の文字にかなり使われているが、鹿と関連しそうなイメージを感じさせる場合もあるものの、なんとも言い難し。・・・
[野神]鹿屋野比賣神/野椎神】…神生み
【正鹿山津見神】…所殺迦具土神之於頭所成神
【井氷鹿…尾がある人  井光神社@吉野川上
  從其地幸行者生尾人自井出來 其井有光
  爾問汝誰也
  答曰僕者國~名謂井氷鹿---此者吉野首等祖也

[姪]鹿比賣命】…大倭帶日子國押人命/敏達天皇が娶る。
【針間牛鹿臣】…日子寤間命が祖。
【角鹿海直】…日子刺肩別命が祖。
【高巣鹿之別】…大中津日子命が祖。
【酢鹿之諸男】…清日子と當摩之灯繧フ子。
【伊勢大鹿首之女】…沼名倉太玉敷命/孝安天皇が娶る。
【建内宿禰命率其太子】・・・經歴淡海及若狹國之時。於高志前之角鹿。造假宮而坐。
  幸行于濱之時。毀鼻入鹿魚。

なんといってもわからぬのが、有無を言わさずの打殺譚。恐れられていた峠の地場勢力撲滅ということだろうが、蒜で眼を打つのは、何を意味するのだろうか。
【倭建命】…足柄山坂本の坂~が白鹿に化身して登場
  還上幸時 到足柄之坂本
  於食御粮處 其坂~化
白鹿而來立
  爾卽以其咋遺之蒜片端 待打者中其目乃打殺也


鹿の狩猟については、前半の猪で取り上げた譚にあるが、猪鹿であり、いたって淡泊である。
【忍歯王】…狩猟に出て大長谷王に射殺され残虐に葬られる。
  淡海之佐々紀山君之祖名韓帒白:
  "淡海之久多綿之蚊屋野 多在
猪鹿
   其立足者如荻原 指擧角者如枯樹御獦"


万葉的な表現では、妻恋いで鳴く鹿と覚えさせられるものだが、そのような雰囲気は全く感じられない。少なくとも、季節感は全く示されていない。

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