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■■■ 「古事記」解釈 [2021.6.22] ■■■
[172] インターナショナル視点での无間勝間之小船
上巻での海人の神の流れをみてきた。最終は❿。
 天孫降臨後。
 山彦こと火遠理命は、海彦の針を失くし、
 捜索のため、鹽椎~の助言に従って海を渡航。
 綿津見大神の娘である豊玉毘売と結婚する。

  📖インターナショナル視点での南海海神

オマケ的だが、そのなかの鹽椎~(≒潮ッ霊)の无間勝間之小船に触れておきたい。・・・
鹽椎~來問曰:
「何虚空津日高之泣患所由」
  :
  :
爾 鹽椎~云:
「我爲汝命作善議
 即 造无間勝間之小船 載其船以教曰
 我押流其船者差暫往 將有味御路
 乃乘其道往者 如魚鱗所造之宮室 其綿津見~之宮者也
 到其~御門者 傍之井上有湯津香木
 故坐其木上者 其海~之女見 相議者也」


海神の使者的存在の鹽椎~から、山彦が、漁撈民島国の王宮に招かれたことになろう。
山彦こと火遠理命の別名は、天津日高日子穂穂手見命であるが、鹽椎~はさらなる別名で呼ぶ。綿津見~もその名称を用いているから、南島域では、天という用語は不適切で、あくまでも虚空なのだろう。

鹽椎~の素性は不明だが、提供する船の名称が独特で、无[無]間勝間。しかも、この語彙は"まなしかつま"と読まされる。面倒なのでその理由は調べていない。
玉勝間は枕詞になっているため、後ろの2文字の勝間の意味はわかる。…
中子と蓋で構成される、両者を"合わす"上質の竹籠を指す言葉であることが知られているからだ。
 (正述心緒)[「萬葉集」巻十二#2916]
 玉勝間 逢はむと言ふは 誰れなるか 逢へる時さへ 面隠しする

そうした竹籠の、籠目が無いというのだから、いかにも構造が奇妙な船に映るが、どうということでもなかった。普通に使われていた実用船だったのである。
亀甲に乗るということで縁起が良いとされるのか、現代でも、ベトナムの海辺のリゾート地で乗ることができる。漁撈用の転用だろうが、ほとんど観光用と言ってよいだろう。密に編んだ竹籠を、牛糞を椰子油で練ったパテで目止めした薄いお椀状の船で、直径は2m迄はいかないがそれなりの大きさ。漁撈が生業なら、竹の表皮を剥いで緻密な織物様の籠を作る能力があれば、そう難しいものでもないのだろう。軽いので、木船に乗せて運搬できるというのも好都合だったろうし。それに、竹材入手は簡単だが、南洋では、船材調達はそう簡単ではないことが多い。尚、竹筒筏作りは簡単だが、直射日光が強いと、竹筒の片面が急速に乾燥してに割れてしまうから実用的ではない。

従って、中国南部や東南アジアの竹が豊富な地域では、織物技能が磨かれている邑なら、普通に使われていた筈だ。ただ労力はただならぬものがあるから、辺境の山奥しかそんな文化は残っていないだろうが。(潮流が無い珊瑚礁海湖や河川傍流の浅い湖沼向き。)
民俗的には牛糞利用だが、入手可能ならコールタールが一番適していよう。
坐しているだけなら安定して浮いている筈で、釣りや小網漁には至極便利だが、流石に外洋航海は無理だろう。

南島にも竹籠船が存在していたのかは不明であるが、竹籠は魚介や荷物運搬用に普通に使われていたし、織物技術に長けていたようだから、存在していたと考えてもよさそう。
「古事記」では、貴人が座す船だから、精巧に編み上げられた漆仕上げかも。

台湾〜先島〜沖縄〜九州 島嶼域推定航路
2ヶ所以外は島伝いの有視界と言えなくもないが、分流の対馬海流とは違い、黒潮は域は潮流が強いので流されるので無視界航行とさほど変わらない状況に陥る箇所がある。
《末盧國(肥前松浦)
 ↓
平戸
宇久島(平)
五島列島中通島(有川)
野母崎
天草牛深
上甑島(里)
串木野
笠沙
野間岬
《九州》枕崎@薩摩半島南西部
┼┼┼┼《九州》大隅半島←《日向》
硫黄島┼┼┼←大隅海峡(蝶は渡海できない。)
┼┼┼┼【種子島】─馬毛島
口永良部島
┼┼┼┼【屋久島】
┼┼┼┼┼←境界(水深のため、海峡的な強い潮流。)
吐噶喇───┘
 (口之島)
 (中之島)
 (諏訪之瀬島)
 (悪石島)
  │←吐噶喇海峡(獣類は渡海できない。)
 (小宝島)
 (宝島)
 (上ノ根島)
 (横当島)
【奄美大島】喜界島
与路島
【徳之島】──硫黄鳥島
沖永良部島
与論島
【沖縄本島】
慶良間諸島
渡名喜島
久米島
 ┴(渡り鳥以外の鳥類は渡海不能。)
 ┬
【宮古島】
伊良部島
多良間島
【石垣島】
竹富島
小浜島
【西表島】黒島
 ├───波照間島…有人最南端(漂着可能性が高い。)
与那国島…有人最西端
 ┴…西方に向かうと大陸に到達する可能性が高い。
 ┬…台湾東側発は太平洋に流される可能性が高い。(生物的繋がり認められず。)
《台湾》

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