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■■■ 「古事記」解釈 [2021.10.2] ■■■
[274] 品遅部の解釈は難しい
😕"御名代定 白髮部"について触れた。📖御名代と御子代の違い指摘の鋭さ
  御子白髮大倭根子命
  坐伊波禮之甕栗宮 治天下也
  此天皇
   無皇后 亦 無御子
  故 御名代定 白髮部

┼┼大長谷若健命/雄略天皇
┼┼└┬△韓比売(都夫良意富美の娘)
┼┼┼├┐
┼┼┼白髮大倭根子命/清寧天皇
┼┼┼┼△若帯比売命

ただ、"名代"ということでは、ココが初出という訳ではなく、垂仁天皇皇子の品牟都和気命のための品遅部が存在する。

さらに、類似用語に映る、"子代"(伊都志部)・ "御子代"(小長谷部)、さらには壬生部(壬生部=乳部[皇子/皇女養育]とされているが御父部と違うか。少なくとも、一般名であり、皇子/皇女の"名"ではない。)も記載されている。
以上、あくまでも、特定の箇所での説明との印象を与える書き方だから、太安万侶が何かを伝えようとして書いていそうだが、その解釈はなかなかに難しいものがある。

最初の品遅部からして、どう考えるべきか首を捻ってしまう。

皇子が鵠之音を聞いて、音声を発した兆候ありとの事件が、発端であるから、山辺大鶙の捕獲ルート上の国々にこの部が設置されるのなら理解できるが、それとは直接関係していない、出雲に随伴した曙立王が、出雲と愛称が悪そうな"伊勢"の部の祖とされているのが不可思議だ。この王は、呼称から見てヤマト"師木"が基盤のようだから、その地の部なら納得できるが。
伊勢と言えば、その東にある尾張の相津での二俣榲作二俣小舟で遊んた話もあるが、これは天皇と皇子同乗の舟遊びで、発声に関与してはいないし。
(鵠ルートは、木/紀伊⇒針間/播磨⇒稲羽/因幡⇒旦波/丹波⇒多遅麻/但馬⇒近淡海/近江⇒三野/美濃⇒尾張⇒科野/信濃⇒高志/越である。朝廷支配が進んでいる地域すべてを並べたと思われる。)
曙立王の想定ルートの播磨⇒但馬⇒因幡⇒出雲(西部)の道行の国々には部民が存在していたようだ。実際、品遅=品治とすると、この部名氏族が存在していることがわかる。
  品治神社@鳥取南
   (御祭神:豊玉姫+玉依姫命+天児屋根命+天照大御神+倉稲魂命+速須佐之男神)

しかし、瀬戸内西部の国々(吉備 安芸)にも部民氏族が存在しているようで、後世に、どこかの部民が転出したと見るべきなのだろうか。
  品治神社@(備前)瀬戸内邑久山田庄本神
   (御祭神:息長日子王+火牟都和気皇命)

  品治別神社@(備後)福山
   (御祭神:品牟侘和気命)


天皇殺害を目論んだ皇后であるから、出自系の勢力が入貢的に皇子を支えることができないからとはいえ、余りに広範囲に部民が存在しているように見える。
どうして、ここまでも、という印象を与える。
ただ、素人的には、伊久米伊理毘古伊佐知命と:日下地区の佐波遅比売命の関係を考えると、なんとなく見えてくるものがある。・・・

⑧大倭根子日子国玖琉命/孝元天皇
└┬ △伊迦色許売命
┼┼
⑨若倭根子日子大毘毘命/開化天皇
└┬┘(継母/父の妃)
│├┐
│⑩御真木入日子印恵命/崇神天皇
御真津比売命

└┬△意祁都比売命(丸邇臣先祖 日子国意祁都命の妹)
└○日子坐王
┼┼└┬△山代 荏名津比売/苅幡戸弁
┼┼│├┬┐
┼┼│○大俣王
┼┼││○小俣王(祖:当麻勾君)
┼┼││志夫美宿祢王(祖:佐佐君)
┼┼││
┼┼│└┬△ n.a.
┼┼├┐
┼┼"倭者師木登美豊朝倉"曙立王
┼┼┼┼┼┼(祖:伊勢品遅部君 伊勢佐那造)
┼┼┼┼菟上王(祖:比売陀君@大和郡山)
┼┼
┼┼└┬△沙本大闇見戸売(春日 建国勝戸売の息女)
┼┼┼├┬┬┐
┼┼┼○[兄]沙本毘古王(祖:日下部連, 甲斐国造)
┼┼┼│○袁邪本王(祖:葛野之別, 近淡海 蚊野之別)
┼┼┼│○室毘古王(祖:若狭耳別)
┼┼┼
伊久米伊理毘古伊佐知命/垂仁天皇
┼┼
└───┬△[妹]佐波遅比売命/沙本毘売命
┼┼┼│○品牟都和気命…本牟智和気御子
┼┼┼┼┼┼↑救出(焼死回避)
┼┼┼└┬┘
┼┼┼┼焼死

要するに、日下には兄妹婚の一大勢力が存在しており、天皇は神婚の巫女でもある沙本毘売命との婚姻を図ったことになろう。 (初代皇后の大物主の娘 富登多多良伊須須岐比売命同様に、神意を伝える力があると見られていたと考えて間違いない。)ところが、妊娠してしまい、御子の父の確定で微妙な問題が持ち上がる。兄からすれば、妹による天皇暗殺は必然となろうが、妹からすれば天皇の御子を宿しているのにそんなことはできぬという、大后の精神的板挟み状態が描かれていると読むからである。
結局、皇子は沙本毘古王-沙本毘売命の元で誕生することになる。天皇としてはこの勢力の抹消を図るしかないが、奇跡的に、稲穂の火中から品牟都和気命だけが救出される。これはどう考えても、一種の火中出産譚である。太陽神系(日子)の"日の御子"信仰を彷彿させる訳で、この皇子への尊崇が生まれておかしくなかろう。但し、口がきけないということで、皇嗣の目は無かっただろうが。

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n.a.…開化天皇
n.a.…崇神天皇
n.a.…垂仁天皇
  "子代"伊都志部…[皇子]伊登志和氣王
  《品遲部 鳥取部 鳥甘部》…[皇子]本牟智和気
  (河上部)…鳥取之河上宮
  (土師部)
大帯部…大帶日子淤斯呂和気天皇 景行天皇
  (膳之大伴部)…伴は臣下
  (田部)…職掌部
若帯部…若帶日子天皇 成務天皇
n.a.…仲哀天皇
n.a.…応神天皇
  (海部 山部 山守部 伊勢部)
雀部…大雀命 仁徳天皇
  葛城部…[大后]石之日賣命
  壬生部…[太子]伊邪本和氣命
  蝮部…[皇子]水齒別命
  大日下部…[皇子]大日下王
  若日下部…[皇子]若日下部王
  八田部…[妃]八田若郎女
⑰伊波禮部…磐余稚桜宮 履中天皇
  (若櫻部)…臣
n.a.…反正天皇
n.a.…允恭天皇
  軽部…[太子]木梨之輕太子
  刑部…[大后]忍坂之大中津比売命
  河部…[大后之弟]田井中比賣
穴穂部…石上穴穂宮 安康天皇
㉑長谷部…長谷(泊瀬)朝倉宮 雄略天皇
  白髮部…白髮太子⇒清寧天皇
㉒白髮部…磐余甕栗宮 清寧天皇
n.a.…顕宗天皇
n.a.…仁賢天皇
小長谷部…小長谷若雀命@長谷列木宮 武烈天皇
  "御子代"小長谷部…[無皇子]
---以下「古事記」記載無し(Wiki記載)---
[(伊波礼部)]…磐余玉穂宮 継体天皇
[勾部]…勾金橋宮 安閑天皇
[檜前部]…檜隈廬入野宮 宣化天皇
[金刺部]…磯城嶋金刺宮 欽明天皇
[他田部]…他田宮 敏達天皇
[[(伊波礼部)]…磐余池辺雙槻宮 用明天皇
[椋椅部]…倉橋柴垣宮 崇峻天皇
[n.a.]…小治田宮 推古天皇

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