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■■■ 「古事記」解釈 [2021.12.22] ■■■
[355]天皇名詳細検討に意味はあるか
歴代天皇には2文字表記の漢風諡号があり、覚えるにはえらく便利だが、「古事記」の諡号を無視してしまう上に、それぞれの天皇のイメージを固定化しかねないので、太安万侶の努力を無にしかねないのが問題であろう。本当は避けたいところだが、頭の方がついていけなくなるので、どうしても使わざるを得ない。
(漢風諡号は、臣籍降下皇族で、インテリの淡海三船(722-785年)が文部少輔の時に作成されて使われ出したとされている。しかし、天皇を評価することになるせいか、その表現は嫌われたらしく以後は天皇毎に適当に考案するようになってしまったようだ。生前譲位の院政が始まると、諡号を作れなくなったこともあろう。)

一般に、妻問いを別とすれば、天皇は自ら名前を明かすことはないし、臣下が名前で呼ぶなど有り得ない。従って、同定は宮地名となる。崩御後もそれでもよいのだろうが、その地は廃れてしまうので、殯宮儀礼を始める際に臣下一同が諡号を献呈することになるらしい。

品太王五世孫[26]袁本杼命/継体天皇[27]皇嗣は、御子 廣國押建金日王/安閑天皇だが無御子。そこで、弟建小廣國押楯命が継承。取り上げた檜坰地区の[28]天皇である。
📖檜坰〜呉原地域は渡来人の中心地か

この[28]代だが、敬称が"命"でなく"王"であり、違和感は拭えない。但し、基本テキストでは"命"になっているので、そのような原本があるのだろう。しかし、プロである写本筆記者が"命⇒王"と誤記するなどおよそ考えられぬ。筆記時に勝手に"王⇒命"に替えたと考えるのが自然だろう。と言うのは、[26]代段の冒頭系譜では御子の名前として"命"が使われており、[27]代段の冒頭で突然"王"になっているからである。

諡号を記載しているのだから、"王"など有り得ないのだから、太安万侶が恣意的に書き換えたとして読むべきではなかろうか。
しかも、皇后たる橘之中比賣命は[24]意祁天皇の御子とされるが、よくわからない。恣意的に不明瞭感を漂わせていると見てよいだろう。
系譜からすれば、橘之中比賣命が出生した男子が[29]皇嗣たるべき資格を得るのだが、手白髮命の御子が敬称。系譜以外の情報は無いから、ここらにはゴタゴタが発生していることを示唆していると考えてもよさそうである。
橘之中比賣命出生の姉妹が[29]后妃になっていることを考えると、[29]天國押波流岐廣庭命が継承権を強奪したことを意味していそうな印象を与える系譜になっている。
天皇段の冒頭記載で、"命⇒王"としたところを見ると、クーデター勃発のようにも思えてくる。
故なきことでもなかろう。宮は、従来の大和の範疇から外れており、新興渡来勢力が急激に膨張した入植地の置かれたのだから、既存勢力の反感を呼んでおかしくあるまい。
そもそも、[26]品太王五世孫袁本杼命に実権があったのではないし、5世の系譜さえ記載していない位だから、皇后位の手白髮命の力で強引に即位させたと語っているようなもの。
要するに、お眼鏡にかなった訳で、当初から皇継としては自分の産んだ皇子を予定していたと見てよいだろう。しかし、ライバル皇子無しという訳にもいかず、苦慮したに違いなかろう。そのままではシナリオご破算になりかねないから、手を打つしかなかろう。
もともと、皇継候補をすべて抹消した天皇の登場で発生した事態であり、継承権争奪のための暗殺に歯止めがある筈もない。御子が誕生してしまえば、その即位にとって、[26]〜[28]天皇は邪魔な存在そのもの。
それだけのことで、暗殺されようが、たまたま崩御しようが、本質的には何も変わらない。

[24]意祁命
└┬▲春日大郎女([21]大長谷若健天皇の御子)
│├┬┬┬┬┬──┐
│△高木郎女│┼┼
△財郎女│┼┼
┼┼△久須毘郎女│
┼┼┼│●[25]小長谷若雀命
┼┼┼││〇真若王
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┼┼┼┼┼┼┼
└┬▲糠若子郎女(丸邇日爪臣の女)
△春日山田郎女
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[26]品太王五世孫袁本杼命
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└┬──▲手白髮命
[29]天國押波流岐廣庭命
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└┬△若比賣(三尾君等祖)
│├┐┼┼┼┼┼┼┼
│○大郎子┼┼┼┼┼
△出雲郎女┼┼┼
└┬▲目子郎女(尾張連等祖 凡連の妹)
│├─┐┼┼┼┼┼┼
│●[27]廣國押建金日命
││[28]建小廣國押楯命
┼┼┼┼┼┼
┼┼└┬─────▲橘之中比賣命
┼┼│├┬┐
┼┼│△石比賣命⇒次代[29]の皇后
┼┼小石比賣命⇒次代[29]の皇妃
┼┼┼┼倉之若江王
┼┼└┬△川内之若子比賣
┼┼├┐
┼┼○火穗王(祖:志比陀君)
┼┼┼┼○惠波王(祖:韋那君,多治比君)

└┬△麻組郎女(息長眞手王の女)
│△佐佐宜郎女…伊勢神宮拝
└┬△K比賣(坂田大俣王之女)
│├┬┬┐
│△~前郎女
△田郎女
┼┼△白坂活日子郎女
┼┼┼△野郎女/長目比賣
└┬△倭比賣(三尾君加多夫の妹)
│├┬┬┐
│△大郎女
○丸高王
┼┼○耳上王
┼┼┼△赤比賣郎女
└┬△阿倍之波延比賣
┼┼├┬┐
┼┼△若屋郎女
┼┼┼△都夫良郎女
┼┼┼┼○阿豆王


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