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■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.6] ■■■
[370]くどいが、 女系末子継承の国である
時に触れてきたので繰り返しになってしまうが、太安万侶は儒教的継承ルールをどう評価していたのか、気になるので少々考えてみたい。特に、後世、仁徳と号された天皇の皇位継承の記述がいかにも儒教的でありながら、ひっかかるような表現を恣意的に記述しているようにも思えるし、当該段全体から見ると反儒教的風合いの印象は否めないからでもある。

要するに、儒教では、継承に於いては《禅定=最高の徳》であるし、宗族第一主義である以上、年令が順位の基本であり、これを揺るがせば宗祖のヒエラルキーで生きる社会が成り立たないのだから、若年者は老人のために存在する僕でしかない。
その観点では弟 大雀命が兄 宇遅能和紀郎子に皇位を譲り続けたのは、いかにも仁徳ありの姿勢と評価することになる。しかし、現実を知る兄はそれを受け入れることはなかった。結局のところ、"崩御された"ということで、実権を握る弟から天皇扱いされただけ。
しかし、もともと非同腹の3太子が設定されており、皇位争奪を誘う仕掛けのようなもので、およそ異常と言わざるを得まい。長幼の意味はほとんど無かった筈である。
どちらかと言えば、女系的な末子相続の伝統を引き継ぐ雰囲気を醸し出させて即位を阻んだと言った方が当たっているのではなかろうか。竈の煙でも有名な天皇だが、この時期は大陸北部から半島まで、気候変動による例を見ない大飢饉に襲われてことがはっきりしており、日本列島も租税どころではなかったのは自明。大被害を被るような天変地異は天子の責任とされてしかるべきだが、逆に仁徳ある為政者とされている。

この段は、もう一つ不思議な記述がある。女鳥王討伐者が遺骸から釧を盗んで妻に与えたことを、大后が気付き死刑の"詔"を発したと記述しているからだ。儒教的倫理観の話を加えているように見えるが、女性が天皇と同位の権限をふるうなど、儒教国では有り得ない。従って、死の穢れを朝廷に持ち込まれてしまったのですべてを抹消処分したと読むこともできよう。大后は最高祭祀者として、その役割を果たしたことになる。

天照大御神      📖上中下巻の系譜上の切れ目
├┬┬┬┐"誓約"五皇子
〇〇〇〇〇
│⬁正勝吾勝勝速日天忍穗耳命
└┬△万幡豊秋津師比売
├┐
天火明命
┼┼〇天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命
┼┼└┬△神阿多都比売/木花之佐久夜毘売
┼┼┼├┬┐
┼┼┼火照命
┼┼┼┼火須勢理命
┼┼┼┼┼〇火遠理命/天津日高日子穗々手見命
┼┼┼┼┼└┬△豊玉姫
┼┼┼┼┼┼〇天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命
┼┼┼┼┼┼└┬△玉依毘売
┼┼┼┼┼┼┼├┬┬┐
┼┼┼┼┼┼┼五瀬命
┼┼┼┼┼┼┼┼稲氷命
┼┼┼┼┼┼┼┼┼御毛沼命
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼①若御毛沼命/神倭伊波礼毘古
┌─────────┘
┼┼●大物主@三輪
┼┼└┬△勢夜陀多良比売(三嶋湟咋の娘)
├─┬─△富登多多良伊須須岐比売命/比売多多良伊須気余理比売
┼┼┼@狭井の河之上(三輪山麓)…大后
├┐├┬┐
○○○日子八井命
┼┼┼神八井耳命
┼┼┼┼②神沼河耳命
┌───┘
③師木津日子玉手見命
├┬┐
○④○
┌┘
├┐
⑤○
├┐
兄 天押帯日子命
⑥弟 帯日子国忍人命
┌┘
├┐
が大吉備諸進命
⑦大倭根子日子賦斗邇命
┌┘
├┬┬───┐
││├┬┬┐├┐
⑧△△○○△○○
├┬┬┐
│○○⑨若倭根子日子大毘々命
├┐
│○
└┐

┌──┘
├┬─┬┐
│├┐││
○⑩△○○
┌┘
├─┬───┐
├┐├┬┬┐├┬┬┬┬┐
○△○○△△⑪○△△△○
┌─────┘
├┬────┬─┬─┬┬──┐
│├┬┬┬┐├┐├┐│├┬┐├┐
○○⑫○△○○○○△○○○○○△
┌─┘
├────┬───┬─┬─────┬┬─┐
├┬┬┬┐├┬┬┐├┐├┬┬┬┬┐│├┐│
○○○○○⑬△○△○△△△○○△△○○○○
┌────┘
├┬┬┬┬┐
○⑭○○○○
┌┘
├─┐
├┐├┐
○○⑮○
┌─┘
大山守命 ⑯大雀命 宇遅能和紀郎子 [三皇子]
山海之政  食國之政  天津日繼
├────┬──┬───┬──┬┐
├┬┬┬┐├┬┐├┬┬┐├┬┐││
○△△△⑯○△△△△△△五世の子孫㉖↓
┌─────┘⬁大雀命┼┼⬁宇遅能和紀郎子

├───┬─┬┐
├┬┬┐├┐ n.a.
⑰○││○△
⑱│
⑲男淺津間若子宿禰命
│└┐
└┐│
├┬┐││
○○│││
└────────────┐
└──││─────────┐│
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┌──┘│┼┼┼┼┼┼┼┼┼││
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△△○△│┼┼┼┼┼┼┼┼┼││
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○△○⑳△○㉑△△┼┼┼┼┼││
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○○┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼││
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼㉒白髪大倭根子命
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┌─────────────┘X
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㉓袁祁命
││
│X
㉔意富祁命
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△△△△㉕○△
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┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼↓⑮五世の子孫
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│○△㉗│△△△△△△○○△△△○
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┼┼┼△△○○○

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○○○○○○○○△△○○○○○○○
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