■■■ 「古事記」解釈 [2022.1.10] ■■■
[374]迦毛 加茂 賀茂はすべて鴨
"何故、阿遲鉏高日子根神が迦毛大御神なのか、一見不可思議。"と言うことで、"阿遲"とは鴨類の"味"を意味すると書いたが📖、その続き。何と言ってもわかりにくいのは、事績不詳なのに大御神扱いされていること。後世とはいえ、平安京鴨社の祭祀氏族の祖 鴨建津之身命が"天八咫烏"と号されたとの、姓氏録での記載位しか該当事項が見当たらない。
しかも、その記載にしても、天神とされており、大国主命の子たる阿遲鉏高日子根神は紛れも無き地祇であるから、別の神と見なさざるを得なくなる。
ところが、大和国に古くから存在していたと目される加茂氏祭祀の神社で祀られている神の方は、大国主系譜に載る地祇とされている。両者は無縁の別氏族ということでよいのか気になるところだ。
《「新撰姓氏録」第二帙神別》
[山城国天神]賀茂県主 神魂命孫武津之身命之後也
[山城国天神]鴨県主 (賀茂県主同祖)
神日本磐余彦天皇[謚神武]欲向中洲之時 山中嶮絶 跋渉失路
於是 神魂命孫鴨建津之身命 化如大烏翔飛奉導 遂達中洲
天皇嘉其有功 特厚褒賞 天八咫烏之号 従此始也
[大和国地祇]大神朝臣 素佐能雄命六世孫大国主之後也
初大国主神 娶三島溝杭耳之女玉櫛姫
夜未曙去 来曽不昼到
於是玉櫛姫績苧係衣 至明随苧尋
経於茅渟県陶邑 直指大和国真穂御諸山
還視苧遣 唯有三輪 因之号姓大三輪
[大和国地祇]賀茂朝臣 (大神朝臣同祖) 大国主神之後也
大田田祢古命孫大賀茂都美命[一名大賀茂足尼]奉斎賀茂神社也
[摂津国地祇]鴨部祝 (賀茂朝臣同祖)大国主神之後也
《「新撰姓氏録」第一帙皇別》
[左京]鴨県主 (治田連同祖) 彦坐命之後也
[右京]笠朝臣(孝霊天皇皇子稚武彦命之後也)
応神天皇巡幸吉備国 登加佐米山之時
飄風吹放御笠 天皇怪之
鴨別命言 神祇欲奉天皇 故其状尓 天皇欲知其真偽 令猟其山 所得甚多
天皇大悦 賜名賀佐
[右京]笠臣(笠朝臣同祖) 稚武彦命孫鴨別命之後也
[摂津国]鴨君 同前氏[依羅宿祢:日下部宿祢同祖 彦坐命之後也]
ただ、氏姓録が恣意的な記載で天神にしているとは思えない。山城での鴨社御祭神の扱いはもともと天神だったようだから。・・・
「山城国風土記(逸文)」
山城國風土記曰：
可茂社[＝下鴨神社＠京都]
稱可茂者 "日向曾之峰"天降坐神 賀茂建角身命也
神倭石余 彥比古之御前立坐 而 宿坐大倭葛木山之峰
自彼漸遷 至山代國岡田之賀茂…岡田鴨神社
隨山代河下坐葛野河與賀茂河所會至坐…下鴨神社
見迴賀茂川 而 言：
「雖狹小 然石川清川在」
仍名曰石川瀨見小川
自彼川上坐 定坐久我國之北山基
從爾時 名曰賀茂也
賀茂建角身命 娶丹波國神野神伊可古夜女日女
生子名 玉依彥日子 次曰 玉依姬日賣
玉依日賣 於石川瀨見小川 川遊為時 丹塗矢自川上流下
乃取插置床邊 遂孕生男子
至成人時 外祖父建角身命 造八尋屋 豎八戶扉 釀八腹酒 而 神集集
而 七日七夜樂遊 然與子語言：
「汝父將思人 令飲此酒」
即舉酒坏 向天為祭 分穿屋甍 而 升於天
乃因外祖父之名 號可茂別雷命
所謂丹塗矢者 乙訓郡社坐 火雷命在
可茂建角身命也 丹波神伊可古夜姬日賣也 玉依姬日賣也 三柱神者 蓼倉里三井社坐
一方の地祇とされる大和国の方は、葛城で祀られる神を指すことになる。
どう見ても、阿遲鉏高日子根神＜今謂：迦毛大御神＞で、地祇ということになり、山城国の天神系とは異なることになってしまう。
＜大和国 葛木＠御所＞
⛩葛木坐一言主神社＠御所森脇角田 (御祭神：葛城一言主大神 幼武尊)
⛩(上鴨)高鴨神社＠御所鴨神 (御祭神：味耜高彦根命+下照姫命+天稚彦命+田心姫命)
⛩(中鴨)葛城御歳神社＠御所東持田御歳山 (御祭神：御歳神)
⛩(下鴨)鴨都波神社＠御所宮前 (御祭神：都味波八重事代主命+下照比売命 大田田根子孫大賀茂都美創建)
⛩(姫宮)長柄神社＠御所名柄 (御祭神：下照比売)
∩秋津遺跡＠御所[縄文晩期良質翡翠大型管玉(est.糸魚川産)出土]
┼┼┼┼〇天津国玉神
┼┼┼┼└┬△n.a.
┼┼┼┼┼〇天若日子＝天稚彦命
┼┼┼┼┼│
〇大國主命/宇都志国玉神
└┬△[胸形奧津宮神]多紀理毘賣命
┼├┐┼┼│
┼〇阿遲鉏高日子根神＜今謂：迦毛大御神＞
┼┼△[妹]高比賣命/下光比賣命
┼┼└┬─┘
┼┼┼？
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【御眞木入日子印惠命＠師木水垣宮】段
〇大物主大神＠美和山
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│┼┼〇陶津耳命
│┼┼└┬△n.a.
└┬──△活玉依毘賣
┼〇
┼│ ⛩陶荒田神社＠茅渟陶邑大田森/堺中上之…須恵器製造地
┼└┬△n.a.
┼┼〇飯肩巣見命
┼┼└┬△n.a.
┼┼┼〇建甕槌命
┼┼┼└┬△n.a.
┼┼┼┼〇意富多多泥古＜神君鴨君之祖＞…太多々根子
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〇大国主神
└┬△神屋理毘賣
┼〇事代主神
大国主神の国譲りは、御子 阿遲鉏高日子根神が登場する葬儀場面の後だから、交渉に関与してもよさそうに思うが、一切無縁。
葦原中国の出雲で生まれ、高天原に上って、降臨したのなら、これを機に出雲に居ついてもよさそうにも思う。高天原と出雲の仲を取り持とうということで、やって来たようにも映るが、生まれ変わりと見なされて跡を継ぐ訳のもいかないだろうが。
喪屋を壊して蹴とばすのだが、これは出雲に存在する、山がちの地に造成されている四隅突出型墳の葬祭を意味している可能性もあろう。
何処かへ飛んで行ったことになっていても、あくまでも迦毛大御神である。出雲の加茂地区に、戻って来たことになろう。
この地域は、古代の神々の地であり、大和の葛城地区と繋がりがあったことが判明しており、その地を目指した理由はよくわからぬが、移動したようだ。
そうなると、"大御神"とされている以上、天照大御神と同格扱いだから、初代天皇以前の奈良盆地は阿遲鉏高日子根神の鴨王朝が君臨していたと言うのが太安万侶の見解と見てよさそう。
＜出雲国 斐川赤川合流盆地域＞
∩加茂岩倉遺跡＠雲南加茂[銅鐸39口出土]
∩神原神社古墳＠雲南加茂["景初三年"銘三角縁神獣鏡出土]
∩荒神谷遺跡＠出雲斐川神庭[銅剣358本,銅矛16本,銅鐸6口出土]
「出雲國風土記」意宇郡
賀茂神戸 郡家東南三十四里
所造天下大神命之御子 阿遅須枳高日子命
坐葛城賀茂社 此神之神戸 故云鴨神亀三年改字賀茂
「出雲国風土記」楯縫郡
古老伝云
阿遅須枳高日子命之后 天御梶日女命来 坐多久村
産給多伎都比古命
▲神奈樋山＠出雲多久谷大船山
ただ、"鴨"族は、初代天皇の大和進出の功労者であり、南九州への天孫降臨時点から支えて来たような伝承を持っているところからすると、出雲⇒大和と言うよりは、南九州⇒大和というルートで初代天皇の東遷の先遣隊としての役割を担っていたようにも思える。
その場合、ルートは安芸～吉備だけでなく、四国経由の南海道＜大和国葛城⇔紀国太田⇔讃岐三加茂⇔伊予(⇔大分)＞もあったと考えると、紀の川・吉野・熊野での初代天皇の支援氏族登場も自然な流れと言えそうだ。
各地に存在する神社は、後世創始のことが多いが、なんらかの伝承を踏まえて立地選定されているだろうから、鴨氏族が活動していた地である可能性があろう。
＜阿波国＞
⛩鴨神社＠美馬郡/三好東みよし加茂山ノ上 [賀茂別雷神社勧請]
⛩下賀茂神社＠美馬郡/三好三野 [京都下賀茂神社分霊奉遷]
⛩勝占神社＠勝浦郡/徳島勝占中山 (御祭神：大己貴命)
⛩事代主神社＠阿波郡/阿波市場伊月宮ノ本 (御祭神：事代主命)
⛩賀茂神社＠阿波新開 (御祭神:瓊瓊杵尊+天忍日命+天津久米命+意富加牟積命)
海南下津
⛩阿波国美馬郡 鴨神社[御祭神:鴨王/天日方奇日方命]
⛩下加茂神社＠三好三野加茂野宮
⛩加茂神社＠佐伯鶴見大島, 中津田尻, 大分細
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＜岡山＞
⛩加茂神社…岡山北高松 玉野 総社 津山 真庭 蒜山 久米久米南
⛩鴨神社…玉野長尾 赤磐仁堀西 浅口鴨方 加賀 吉備中央 上加茂
＜広島＞
⛩賀茂神社…福山加茂芦原
＜山口＞
⛩賀茂神社…柳井
⛩鴨神社…山陽小野田厚狭
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❾若倭根子日子大毘毘命/開化天皇＠春日之伊邪河宮
└┬△意祁都比売命(丸邇臣先祖 日子国意祁都命の妹)
┼〇日子坐王＝彦坐命
┼└┬△沙本大闇見戸売(春日 建国勝戸売の息女)
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┼┼〇沙本毘古王(祖:日下部連, 甲斐国造)
┼┼┼〇袁邪本王(祖:葛野之別, 近淡海 蚊野之別)
┼┼┼┼△沙本毘売命/佐波遅比売(⇒伊久米天皇の皇后)
┼┼┼┼┼〇室毘古王(祖:若狭耳別)
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