→INDEX ■■■ 「古事記」解釈 [2022.4.23] ■■■ [477]甲は毘で乙は備か 一方、乙類ビの場合は、備と見てよいのではないか。 ≪備[人+𤰇]≫ 【語源】矢を放つのに𤰇/𤰈(えびら)で備える。 [呉音]ビ [漢音]ヒ [訓]そなえ-る そなわ-る そなえ 漢語からすれば、正真正銘のビ文字である。 訓での表現も少なくないが、以下のような目立つ場面で登用されるので印象的な字と云えよう。 ◆"宇摩志 ◆自我勝云而於勝" ◆故其日子遲神" ◆[歌80] もちろん、用例の大半は固有名詞の ◆きび 吉備兒嶋/吉備國兒嶋 吉備國 吉備之高嶋宮 大吉備諸進命 大吉備津日子命 若日子建吉備津日子命 吉備上道臣 吉備下道臣 吉備品遲君 吉備之石无別 吉備臣 若建吉備津日子 吉備之兄日子王 吉備臣建日子 大吉備建比賣 吉備海部直 但し、音素文字表記では"岐備"である。・・・ [歌55]岐備比登登…吉備人と もちろん、漢字の意味から、訓の翻訳文字としても用いられている。それ以外の利用は上記のように音素文字であるとの割注か、100%仮名の歌であるから、仕訳し易いように配慮されている。 この字の他にビは無いのかは、なんともいえないところがあるが、気になるのが"火"。 明らかに、ヒの濁音化と思われるが。 ≪火≫ [呉音]カ [漢音]コ [訓]ひ ほ (や-く) ◆うねび 畝火之白檮原宮 畝火山之北方白檮尾上(御陵) 畝火山之美富登(御陵) 畝火山之眞名子谷上(御陵) [歌21/22]宇泥備夜麻…畝傍山 漢字にはそもそもヒ音は無く、訓の翻訳語である。濁音ビに、火としての意味が不要なら、太安万侶的発想では備となって当然だから、山焼きをする山だっやのだろうか。 「万葉集」でも、同様に、ビ音の"火"がある。 尚、「出雲国風土記」のカムナビの表記では火と樋である。樋は上述の 神名樋野@意宇郡 神名火山@秋鹿郡 神名樋山@楯縫郡 神名火山@出雲郡 "神奈備"という一般名では末尾を音素表記にしていることになる。はたして、火という意味があるのか、"辺"的な意味合いかは判断がつかない。奈は格助詞のナ≒之と思われる。 (C) 2022 RandDManagement.com →HOME |