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■■■ 「古事記」解釈 [2022.5.24] ■■■
[508][安万侶文法]上声去声表記の役割
「古事記」には声調の四声のうち、上声と去声の記号が振られている。これは、漢語の同音語彙区別の方法であり、はたしてそれが倭語にも当てはまるか、はなはだ疑問である。
現代日本語には無いからである。・・・
  トーン(声調)言語…漢語
   中古4…平声・上声・去声・入声@破音
   北京4…高平・上昇・下降上昇・下降
   南昌6
   呉 7
   広東9
   厦門14

  ピッチ(高低)アクセント言語…日本語
    e.g. はし(端 橋 箸)
    [同一の場合は付属助詞に移行]
  ストレス(強弱)アクセント言語…英語

ただ、表記されていると言っても、一部の神名等だけである。・・・
須比智邇神・宇比地邇
伊邪那美命先言阿那邇夜志愛袁登古袁 後伊邪那岐命言阿那邇夜志愛袁登賣袁
豐雲野神 阿夜訶志古泥神 愛比賣 大野手比賣 大多麻流別 天之吹男神 大山津見神 正鹿山津見神 奧山津見神 市寸嶋比賣命 降出雲國之肥河上在鳥髮地 足名椎・手名椎 天之都度閇知泥神 布帝耳神 大山咋神 菅竈由良度美 取賣王 耳

地文にまで幅広く記載してあるなら、倭語にも声調が存在したと見るのが自然だが、「古事記」はあくまでも倭語。これは漢文現地語読みの知識ある人が読者ということで、当該漢字の読み方を指定するために利用したのではないか。地文なら読みも推定できるが、何の情報も無い名称では、読みは自明ではないからだ。
例えば、"山"は、現代人だと当然のこととして"やま"と読んでしまうが、"セ"と読む人がいてもおかしくない。そのため、""符号を付けたと見る訳である。
従って、宇比地邇うひぢにと読むなら、須比智邇すひち○は"に"では無い。

≪山≫
  [呉音]セ↘
  [漢音]サ↘
  [訓] (ね:当字)
[巻十一#2697]不盡乃高山之[富士の高嶺の]
≪愛≫
  [呉音・漢音]アイ
  [訓]・・・・・・ 
うるはし我那勢命  📖[安万侶サロン]愛の概念
≪麻≫
  [呉音]
  [漢音]
  [慣用音]
  [訓]あさ/あざ お
大多麻↗流おほたま る
[巻一#19]綜麻形乃綜麻(へそ)形の
[巻九#1731]布麻越者幣(ぬさ)置かば
≪手≫
  [呉音]シュ
  [漢音]シユウ
  [慣用音]
  [訓] た
大野手↗おおのて比賣 手↗名椎て なつち
手足和那那岐弖てあしわななきて 天手力男たぢからを
≪夜≫
  [呉音・漢音]
  [訓]
阿夜↗上訶志古泥あやかしこね
夜久毛多都やくもたつ 常夜往とこよいたり
[巻十九#4214]弦爪夜音之遠音尓毛[爪引く夜(よ)音の 遠音にも]
≪邇/迩≫
  [呉音]
  [漢音]
  [訓]ちか-い
宇比地邇うひぢに↗ 須比智邇すひち○

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