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■■■ 「古事記」解釈 [2022.8.4] ■■■
[580]安万侶が"一応"倭文扱いにした箇所
倭語の話を続けてきたが、「古事記」は序文だけが漢文であるとも言い切れない。従って、そこらを書いておく必要があろう。
下巻最初の16代天皇段冒頭の文章は、倭文で読まざるを得ないけれども、全体構成はすべて漢文調になっているからだ。

要するに、下巻で取り上げるのは儒教ベースの中華帝国統治機構を取り入れた朝廷での話になります、と云っているようなもの。

その凝り方は、なにもそこまでと思わせる位に徹底的。起承転結的4段になっており、視覚的に四言句の漢詩的な雰囲気を感じさせる表現を駆使している。・・・

---前半部---
此天皇之御世

  爲 大后 石之日賣命 之 御名代 定 葛城
亦 爲 太子 伊邪本和氣命 之 御名代 定 壬生
亦 爲 水齒別命 之 御名代 定
亦 爲 大日下王 之 御名代 定 大日下
_ 爲 若日下部王 之 御名代 定 若日下

又 伇秦人
  作 茨田 茨田三宅
又 作 丸邇池 _ 依網

又 掘 難波之堀江 而通海
又 掘 小椅

又 定 墨江之
_ _ ○○○

---後半部---
於是 天皇
❶登高山
 四方之
  詔之
  於國中 烟不發
 國皆貧窮
 自至三年 悉除人民課伇
   …"「日本紀」云人民[和名:比止久佐]一云[於保太加良]"
       [@「倭名類聚抄」巻二人倫部#6]

是以
  大殿破壞
  悉雖雨漏
  都勿脩理
    以椷受其漏雨
    遷避于不漏處
❶後見國中
 於國滿
 爲人民課伇
是以
  百姓之榮
  不苦伇使

 ❹稱其御世
 ❹謂聖帝世  
  …【序文】記載の聖帝は異なるように読める。
    望烟而撫黎元
    於今傳聖帝 定境開邦 制于近淡海 正姓撰氏


この様なお話を倭語で表記する必要があるのかネ、とでも言いたげ。

前半は、公的な官僚の記録文章以上ではなかろうし、後半は倭の叙事詩の体裁とは程遠く、これならいっそのこと漢詩で表現したら如何なものか、というところだろう。それに、内容的に、かなり注意深い表現になっている点も読み取っておく必要があろう。・・・
人民/百姓(大陸なら奴隷を抱える層)の富榮あるいは貧困は必ず衣食住セットになる。そして、天災による民の困窮に対して、天子が臣下の策を通じて応えるというのが、漢代に定着した儒教型善政。ここで描かれている状況は、それとは一致していない、と述べているようにも映る。原因はとんでもない労役賦課にあり、その結果、食が行き渡らなくなり往生していると記載しているだけなのだから。

"民の竈の煙"というフレーズのお蔭で、仁徳天皇(16代 大雀命)の名前を知らぬ人無しとなったお話ではあるものの📖一応は善政天皇としてはいるものの、この天皇段で、一番力が入っている記載譚は、"國中烟不發 國皆貧窮"ではなく、女鳥王譚の方。📖稗田阿礼の爆笑傑作
太安万侶にしてみれば、儒教型官僚統治システム導入期であるから、ふれてはおきますが、本来的には叙事詩の題材になるような題材ではござらぬ、といったところではなかろうか。

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