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■■■ 「古事記」解釈 [2023.4.18] ■■■
[664]本文のプレ道教性[6]鬼道について
おそらく、「古事記」の検討に、「墨子」を持ち出す人は滅多にいない。そこで、わざわざ触れてみた📖訳ではない。イデオロギー・宗教的主張を繰り広げるつもりがないのに、社会一般に習って無視するのもどうかナと思っただけ。

単純な話である。
通称「魏志倭人伝」(「三國志」"魏書"三十 烏丸鮮卑東夷)記載の<名曰"卑彌呼" 事鬼道 能惑衆 年巳長大無夫婿有男弟佐治國>が超有名だが、ここでの<鬼道>の解釈は定まっていないとされているから、「墨子」も登場させざるを得なくなる。

この語彙、「魏志倭人伝」での用法が特殊であるとする理由は無いし、比較対象を欠いている訳でもない。同一書でも用例があるのだから。
魯遂據漢中 以鬼道教民 自號"師君"・・・又置義米肉 縣於義舍 行路者量腹取足 若過多 鬼道輒病之 [「三國志」魏書巻八二公孫陶四張傳 張魯傳]
宗教王国"五斗米道"創始者の孫で曹操軍に敗北した話である。

鬼道="五斗米道"的道教と見なせば、倭国にすでに道教渡来となる訳で、まともな議論などできる訳がなかろう。要するに、説が色々あるということではなく、道教そのものが定義されていないから、議論の態をなしていないだけ。当事者はそうは思わないだろうが。
そもそも、鬼神は漢語では一般用語である。そこから、<鬼道>という語彙が生まれるのは極く自然なことで、どうのこうの語る意味は薄い。・・・
孝武皇帝初即位 尤敬鬼神之祀・・・"天神貴者泰一 泰一佐曰五帝 古者天子以春秋祭泰一東南郊 用太牢具 七日 為壇開八通之鬼道"  [「史記」卷十二孝武本紀第十二]
"天神・・・鬼道"・・・黃帝西南 除八通鬼道 [「漢書」卷二十五上 郊祀志 第五]
沛人張魯 母有恣色 兼挾鬼道 往來焉家 遂任魯以為督義司馬 遂與別部司馬張脩將兵掩殺漢中太守蘇固 斷絕斜谷 殺使者 魯既得漢中 遂復殺張脩而并其眾 [「後漢書」卷七十五 劉焉袁術呂布列傳第六十五]

ここらは素人が口をはさむ意味はないので、記述はここまでとする。

太安万侶は史書について十分過ぎるほど知っていたことが序文から想定されるから、倭国がどのように認定されて来たかの認識は現代人以上によく知っていると考えるべきだろう。
読者としても、どんな見方をしていたか想像しておくにこしたことはなかろう。小生は以下の様に区分整理してみた。余計な解説は避けよう。・・・

≪清代欽定二十四史(「史記」〜「明史」@「四庫全書」)

❶「史記は前91年 前漢武帝代成立。
卷一百一十五 朝鮮列傳第五十五<東越列傳第五十四 西南夷列傳第五十六> …倭欠
❷「(前)漢書」は82年 後漢期に成立。儒教ベースの編年体記録の歴史書。
卷二十八下 地理志 第八:玄菟 樂浪[武帝時置 皆朝鮮] 濊貉 句驪[蠻夷]…"然東夷天性柔順・・・樂浪海中有倭人 分爲百餘國 以歳時來獻見云" …倭初出
巻九十五 列傳西南夷兩粵朝鮮傳第六十五 …倭欠
❹「三國志」280年代、晉で成立。三国だが、記載形式から見て、2書は不完全であり、魏を正統王朝と認定していることになろう。
"魏書"三十 烏丸鮮卑東夷(夫餘 高句麗 東沃沮 挹婁 濊 韓 倭人)傳 在帶方東南大海之中 依山島爲國邑・・・卑彌呼 事鬼道 能惑衆 …初の日本列島の状況(習俗・地理)記載
"蜀書"n.a.  "魏書"n.a.
[付記]「三國志」"魏書"の同等史書:「魏略輯本」卷二十一傳:烏丸 夫餘 東沃沮 高句驪 濊國 朝鮮 辰韓 倭人 挹婁 南蠻

❸「後漢書」は、かなり遅れてから、432年 南朝宋で成立。・・・倭の記載内容は魏志倭人伝を踏襲しただけ。
卷八十五 東夷列傳第七十五:夫餘國 高句麗 東沃沮 三韓(馬韓 辰韓 弁辰) (百餘國incl.倭奴國 倭女王國incl.南拘奴國 硃儒國 裸國 K齒國) 在韓東南大海中 依山島爲居・・・桓 靈間 倭國大亂 更相攻伐 歴年無主 有一女子名曰卑彌呼 年長不嫁 事鬼神道 能以妖惑衆 於是共立為王

❹「魏志倭人伝」(台与@266年)〜❻「宋書倭国伝」(讃@413年)の間の大陸内戦時は史書に倭の記録無し。

❻「宋書」は487年南朝斉で南朝梁の学者により成立。外交経緯記載。…古代の倭国の状況には関心無し。
卷九十七 列傳第五十七 夷(南夷 西南夷 東夷[高句驪國 百濟國 倭國 ]) 蠻 在高驪東南大海中・・・自稱使持節 都督倭百濟新羅任那加羅秦韓慕韓七國諸軍事 安東大將軍倭國王
❼「南齊書」は梁朝の510-526年に成立。卷五十八 列傳第三十九 東夷:高麗國 [冊封六國]加羅國 倭國 (新羅 任那 秦韓 慕韓) 在帶方東南大海島中 漢末以來 立女王
❿「魏書554年 北齊で成立。
卷一百列傳第八十八:高句麗 百濟 勿吉 失韋 豆莫婁 地豆于 庫莫奚 契丹 烏洛侯 …倭欠

唐代 (618-907年)前期には、続々編纂。・・・636年に姚思廉が「梁書」「陳書」、李百薬が「北斉書」、令狐徳棻etc.が「周書」、648年に房玄齢etc.が「晋書」、656年には魏徴&長孫無忌が「隋書」、さらに659年には李延寿が「南史」「北史」を奉じている。
❺「晋書卷九十七 列傳第六十七 四夷傳 #1東夷:夫餘國 馬韓 辰韓 肅慎氏 倭人 裨離等十國 在帶方東南大海中 依山島爲國・・・卑彌呼
❽「梁書卷五十四 列伝第四十八 諸夷:[海南諸國]林邑国・扶南国・盤盤国・丹丹国・干瑽利国・狼牙修国・婆利国・中天竺国・師子国・[東夷諸戎]高句驪・百済・新羅・・文身国・大漢国・扶桑国・[西北諸戎]河南王国・高昌国・滑国・周古柯国・呵跋檀国・胡蜜丹国・白題国・亀茲・于闐・渇盤陁国・末国・波斯国・宕昌国・ケ至国・武興国・芮芮国 帶方萬二千餘里 大抵在會稽之東 相去絕遠 從帶方至倭 循海水行・・・共立一女子卑彌呼爲王 彌呼無夫婿 挾鬼道 能惑衆 故國人立之
⓯「隋書卷八十一 列傳第四十六 東夷:高麗 百濟 新羅 靺鞨 流求國 俀國 在百濟新羅東南水陸三千里於大海之中 依山島而居・・・有女子名卑彌呼 能以鬼道惑眾 於是國人共立為王
❾「陳書 n.a. …欠
⓫「北斉書 n.a. …欠
⓬「周書卷四十九 列傳第四十一異域上:高麗 百濟 蠻 獠 宕昌羌 ケ至羌 白蘭 氐 稽胡 庫莫奚 …倭欠

⓭「南史卷七十九 列傳第六十九 夷貊下 #1東夷:朝鮮(高句麗 百濟 新羅) 倭國 扶桑國   其南有侏儒國…又南有K齒國 裸國…文身國在倭東北七千餘里…大漢國在文身國東五千餘里 事詳「北史」
⓮「北史卷九十四 列傳第八十二 四夷:高麗 百濟 新羅 勿吉 奚 契丹 室韋 豆莫婁 地豆干 烏洛侯 流求  在百濟新羅東南水陸三千里於大海中 依山島而居・・・有女子名卑彌呼 能以鬼道惑衆 國人共立爲王

712年「古事記」成立。 ---唐朝[618-907年]睿宗代(父:高宗 母:武則天)

この後の史書はかなり後世になる。…五代十国時代(907-960年)⇒北宋(960-1127年)
⓰「"舊"唐書945年[五代後晋] 卷一百九十九上 列伝第一百四十九上 東夷:高麗・百済国・新羅国・倭国・日本国 …王朝革命想定
⓲「"舊"五代史974年 外国列伝二:吐蕃・回鶻・高麗・渤海靺鞨・黒水靺鞨・新羅・党項・昆明部落・于闐・占城・牂牁蛮 …倭・日本欠

唐朝滅亡混乱期に編纂され、問題を抱えた書と見なされ改訂版作成か。特に、域外は、外交部門所管資料喪失のため、信頼性に乏しかったろう。このため、海外情報は当該国からの聞き取り記録を使うようになったようだ。つまり、これ以後、原資料重視路線を歩めなくなり、編纂者の創作シナリオに沿った記述に。以後の歴史書の記載は、"元寇"記述で一目瞭然だが、各国、それぞれのフィクションが並び立つように。こうした大転換のお蔭で、残存資料皆無の朝鮮半島でさえ、この後100近く経ってから漢籍をもとにした初めての国史が誕生(1145年)することになる。小中華思想蔓延で、フィクションが歴史的事実とされるようになる。
⓳「新五代史1053年 四夷附録第三:奚・吐渾・達靼・党項・突厥・吐蕃・回鶻・于闐・高麗・渤海・新羅・黒水靺鞨・南詔蛮・牂牁蛮・昆明・占城 …倭・日本欠
⓱「新唐書1060年[宋] 卷二百二十列伝第一百四十五 東夷:高麗・百済・新羅・日本・流鬼
天御中主---[三十二世]彥瀲-[天皇]神武-綏靖-安寧-懿コ-孝昭-天安-孝靈-孝元-開化-崇神-垂仁-景行-成務-仲哀-([開化曾孫]女)神功-應神-仁コ-履中-反正-允恭-安康-雄略-清寧-顯宗-仁賢-武烈-繼體-安-宣化-欽明-海達-用明/目多利思比孤-崇峻-([欽明孫]女)雄古-舒明-皇極-孝コ-[子]天豐財-[子]天智-[子]天武-[子]總持-文武-[子]阿用--[子]聖武-(女)孝明-大炊-(聖武女)高野姬-白壁-桓武-諾樂-嵯峨-浮和-仁明-文コ-清和-陽成-光孝
咸亨元年 遣使賀平高麗 後稍習夏音 惡倭名 更號日本 使者自言 國近日所出 以爲名 或云日本乃小國 爲倭所 并 故 冒其號 使者不以情 故 疑焉


ここからは、突如膨大な情報量になる。超巨大帝国の威信とは、凌駕できぬほどの記録量で決まるということか。換言すれば、歴史観にさほどの意義を認めなくなったことになろう。従って、他国認識力は大幅に劣化した可能性が高い。と言うより、支配者の言語が漢語ではなく、文化的に大きく異なる王朝であるため、常識的判断における齟齬が生じ始めたろうし、官僚の姿勢も大きく変わったと考えるべきだろう。
⓴「宋史 元朝1345年巻四百九十一列傳第二百五十外国七:流求國・定安國・渤海國・日本國
天御中主-天村雲尊-天八重雲尊-天彌聞尊-天忍勝尊-瞻波尊-萬魂尊-利利魂尊-國狹槌尊-角龔魂尊-汲津丹尊-面垂見尊-國常立尊-天鑑尊-天萬尊-沫名杵尊-伊奘諾尊-素戔烏尊-天照大神尊-正哉吾勝速日天押穗耳尊-天彥尊-炎尊-彥瀲[二十三世]@筑紫日向宮

㉑「遼史」 ㉒「金史」 ㉓「元史」 ㉔「明史

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