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■■■ 「古事記」解釈 [2023.5.21] ■■■
[696] 「古事記」仮名勝手音 比火毘備
ひhiビbi「古事記」仮名の<>は、現代日本語の発音では<ɸɯ̟ᵝ bɯ̟ᵝ >だが、「古事記」成立時は<>つまり子音が<清音p 濁音b>だったと推定されているとの話をした。ホホウ、そうなのか。それなら、<p>音は、おそらく、現代のように目立つ破裂音ではなく、聴き取り難い弱音だろうとの勝手な推察位しかコメントのつけようが無いが。📖(無声母音)
・・・ハ行の音として、真っ先に<ふ>を選んだのは、現代音は<両唇摩擦音 ɯ>ではなく、<唇齒摩擦音 f>とする向きも多いようだからでもある。サンプル採集地域が違えば、音もかなり替わるから驚くべきことではないが、小生はド素人なので、<微弱破裂音p⇒摩擦音ɸ>という流れに妙に納得感を覚えた訳である。

要するに、雑炊型言語たる倭語としては、わかり易い母音構造のもと、子音についても、それに合わせたシンプルな仕組みになっている筈ということになる。くどいが、倭語は母音語であり、独立して子音を発音できない人々の社会を作り上げたいるから、子音の発音は"わかり易さ"が命。
(ギリシア文明系はもともと母音表記せずで、表面的には子音命。中原系は、36子音x多数母音で400音ほど暗記を強制させられた上に声調まで覚える必要があるという正真正銘の"王朝統制"の子音語。倭語とは体質が180度異なる。発音にしてから、印度系のように、厳格に設定することを嫌ったようで、曖昧性や多義性を容認。と言うか、面白がって変化させる話者も少なくないので、ここで取り上げているハ行音のように融通無碍そのもの。これこそ、雑炊型言語の一大特徴と言えよう。)

大所を掴むなら、こんな流れか。・・・
❶母音構造
[祖音][a̱]⇔[ɯ̟ᵝ ]>&[i]>
  + [追加音][≒o̞ ]> …2音に分岐( e.g. ɒ系 & ɔ系)
    + [渡来導入音][e̞ ]> 
❷母音装飾音(基本的子音)
   …最小単位の発声音"cV"確立
  シラブル化語彙(音と拍は不整合)
❸濁音化
---文字表記化---
  語彙分解モーラ化(50音の拍表現化)…「古事記」成立
❹母音無声化的代替子音(ハ行子音)
❺撥音
❻拗音化等々

破裂音を避けて摩擦音に。
古代音[p]系:パ ピ プ ぺ ポ
現代音
 ハ[ha̱]@声門  ・・・語頭[p]→[ɸ]→[h]
 ヒ[çi]@硬口蓋  ・・・語頭[p]→[ɸ]→[h]→[ç]
 フ[ɸɯ̟ᵝ]@両唇  ・・・語頭[p]→[ɸ]
 ヘ[he̞]@声門
 ホ[hoo̞]@声門
従って、もともとのp濁音化音[b]は現代のh濁音化音[ɦ]とは音がかなり違うことになろう。
古代音[b]系:
 バ[ba̱]
 ビ[bʲi]
 ブ[bɯ̟ᵝ]
 ベ[be̞]
 ボ[bo̞]

現代音にはさらに特殊音が制定されており、外来音表記に用いる片仮名ファ フィ _ フェ フォもある。ɸではなく、f音系の音のようだから、現代になって、f行が突然増えたということかも知れない。雑炊言語の本領画期である。この音かは定かではないが、フュもある筈だが、小生は用例を見かけたことがないし、発音もできない。さらに、文字表記オノマトペ も加えれば、いくらでも類音が出てきそう。ヒャだけでなく、ヒェやもよく見かけるが、この場合は、発音は難なくできそう。

(匕:比の旁)(〃) [萬]【甲】
比  比賀迦久良婆:ひがかくらば
日  是豊楽之日:このとよのあかりのひ
氷  零大氷雨:いたくひさめふりき
桧  生蘿及桧榲:こけとひすぎとおひ
合  令占合麻迦那波:うらなひまかなはしめ
卑  1例のみ(天之菩卑能命:あめのほひのみこと)
毘  1例のみ(都毘迩斯良牟登:つひにしらむと)
相  1例のみ(布斗摩迩迩占相:ふとまににうらなひ)
hi [萬]…斐【乙】
火  火之迦具土神:ひのかぐつちのかみ
斐  淤斐陀弖流:おひだてる
肥  毛由流肥能:もゆるひの
干  1例のみ(干萎病枯:ひしなゑ)
樋  1例のみ(樋速日神:にひはやひのかみ)
ビ [萬]…毗/毘【甲】 @呉音
毘  斯毘:しび
日  御真木入日子:みまきいりびこ
比  1例のみ(酒部阿比古:さかべのあびこ)
bi [萬]…備【乙】 @呉音
備  宇泥備夜麻:うねびやま
火  畝火山:うねびやま

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