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■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.14] ■■■
[718] 雑種言語
太安万侶は倭の風土を見抜いていたと言えよう。
中国仏教一色化が進み、朝廷の公文書が漢語となり、官僚統治機構整備に邁進しているさ中、宮中に伝わる倭語口誦叙事を漢字表記化して記録に残そうとして編纂したのだから、当然と言えば当然だが。

その様な見方が散りばめられている「古事記」を読むのだから、少なくとも、現在の日本の風土についての自分なりの見方ができる程度の感性を持っていないと、そこらをスルーしてしまいかねないと思う。
ここらは、十分心してかかるべきだと思うので、一言まとめておくことにした。

思い込み無しで「古事記」を眺めれば、太安万侶は、倭の風土を①多言語 ②多文化 ③多宗教 の混淆からなる雑炊様と考えていたとしか思えない。
(この用語は「多種併存」を意味するので、本当は、不適当。正確に記載すれば、<雑種言語 雑炊的文化 混淆宗教>ということ。インド亜大陸で見られる<多言語 多文化 多宗教>状況とは全く異なる。対立的概念と言っても間違いではない。・・・現在の日本列島では、同一郷土出身者が集まれば、気分的にはほとんど単一感を味わうことができて、方言が飛び交うのが普通。しかし、郷里以外との差異など実は僅かなので、同一地域出身者が固まって住むことは滅多にない。しかし、インドの都会では、同一地域出身者が一カ所に集まって生活することが少なくない。言語と食生活等の習慣が共通でないから、生活上えらく不便だから当然だが、こういった地区の住人はみかけ単一だが、宗教的には各家ごとにバラバラであって当たり前。ミクロでも完璧なモザイク社会としての"多種"状況である。)

・・・と言うことで、現代の状況を紐解きながら、順に検討して行こう。

①雑種言語 📖日本語は雑種言語なのでは…
EUの調査によれば、この地域総体で自称バイリンガルは65%に及ぶ。イタリアの数値が丁度その辺りだが、数値が低い英国でも35%に達している。英語が義務教育化している日本では、バイリンガルの定義がことのほか難しく、無理にデータを創れば3割を越えるだろうが、活用実態では1割強というところだろう。
こうした数字を見れば、いかにも外国語会話嫌悪感情がありそうに映るが、全くの逆で、日本語発音化させた渡来語は山ほど。しかも、そうした語彙にファッショナブル感を覚える人が多いようで、日本語英語という不可思議な言葉だらけになってしまう。言うまでもないが、一種のピジン語。それは古代から綿々と受け継がれて来た習慣ともいえるだろう。漢語は当たり前で、サンスクリットから欧米諸語まで、移入語を調べれば続々なのだから。語彙だけ見れば、雑種化言語そのもので、渡来語との由来もわからなくなっているものが多い。(なかには、東洋には見当たらない概念の西欧語を、"勝手"漢語訳にした語彙もあり、近代化のために中国が大量輸入して、中国語として普通使い化していることは御存じの通り。)
もう一つの現代日本語の特徴は表意文字への愛着。助詞を表音文字とし、意味がある文字は漢語語彙の表意文字とする習慣が「古事記」以来体に染みついているからだろう。・・・1964年東京オリンピックでの勝見勝の活躍が大きかったと思うが、pictogram〜E-mojiの世界は日本の十八番とみられている。
ある意味、現代絵文字は、漢字作成を思わせるところがあるが、それはその通りでもあるが、誤解を生むので注意を要する。儒教型官僚国家では帝国内の独創性発揮者とは統制を覆そうとする天敵だからだ。やっていることとは、極めて有能な官僚が帝国外者の有用な新機軸を見つけ出し、それを真似ての導入。そこで成果が出れば天子の功績にする仕組み。天子独裁帝国の強大化政策で官僚同士が命を賭けてしのぎを削っているのだから、その注力度合いは半端ない。
それを考えると、pictogram的漢字はおそらくシュメールコンセプトの模倣と思われる。一方、純正漢字は、白川静が指摘したように、あくまでも呪文字だろう。発祥は四川辺りの可能性が高そう。(小生はそのうち酉陽洞窟が見つかり証拠品が出土するとにらんでいるが、政権維持に拙いとなれば即座に抹消されるので陽の目をみないかも。)

日本の表現嗜好は、こうした体質とは異なるが、勿論、独特な性情。一例をあげれば、🚻が好まれず、建物の全体デザイン観を無視して、男女色分けをしたがる様な傾向。実は、コレ、極めて特徴的なのである。(色覚表示は反ユニバーサルデザインだからだ。)もともと、男女という概念と、トイレには何の関係も無く恣意的に決められた表現な訳で("お手洗い"や"ご不浄"とか、"restroom" "toilet[小布]"は意味を恣意的にずらした表現で、どこでも同様とも言える。lavatory[洗面所]-bathroomならあり得るが、似たようなもの。)、今や、All genderを掲げる都市もあり、ここらの表現嗜好の解釈は難しい。8割以上が英語を喋れる国でも、訪問者が分からぬ"D H"表示に未だに拘っていたりするのだから。
  【英】Ladies and Gentlemen(⇒Women Men)
  【日本語訳】紳士 淑女(⇒殿方 御婦人)・・・男女の順番を入れ替えている。
  【中国語訳】女士們 先生們(⇒女 男)
  【蘭版】Dames en Heren
  【独版】Damen und Herren
  【仏版】Mesdames et Messieurs


何故にこんな話を持ち出したかと言えば、倭語が多言語混淆志向であるからといって、ユニバーサルに通用する言語を目指している訳ではない点に注意しておく必要があるから。
グローバル覇権国の文化取り込みに付随して、その言語も語彙として自分達が発音し易く表記も便利な様に変えて言語プールになかに放り込んでいると言っても、決して同一土俵での言語交流を目指している訳ではない。反ユニバーサルたることで、独自性を保とうとしているようなもの。外国語をバラバラにして破片を大量に移入し、結果的にプラスと評価できれば自国語の一部として使うに過ぎない。文化的に融合してしまった領域の断片的語彙なら、言葉の出自など気にする人はすぐにいなくなり、元の言語とは無縁な日本語に成ってしまう。

こうした体質を考えると、倭語の系譜を探るのが難しいのは自明と言えよう。
しかし、難しいと思ってしまうのは、印欧語一色世界の発想で考えるからで、欧州に於ける異質言語を眺めると、なんら特異な現象ではないことがわかる。・・・
【印欧系】
【ウラル系】フィンランド
(フィン) エストニア(バルト)
    マジャル@ハンガリー(ウゴル)
【セム系】マルタ
(アラビア語マグリブ類似)
【孤立】バスク

バスク人の民族系統は不詳。(土着かも定かでは無い。)印欧語とは全く異なるものの、遺伝子から見た人種としては孤立どころか、印欧系としか思えない。
しかも、歴史的には、ローマ帝国時代から、文化的に孤立していた訳ではない。漁労にも進取的だったりして、経済的に極めて豊かな国だった可能性が高い。そのため、欧州のなかで独自の地位を築いていたと考えるべきで、中華帝国覇権から逃げ伸びた少数民族の地位とは異なる。(スペイン内乱敗北やチェ・ゲバラ輩出でそのイメージが変わっているので注意が必要。)一見、不可思議な存在に映るが、養育上の母系社会が温存されたため、男系支配の社会の印欧語との混淆が進まなかっただけで、文化的に孤立していた訳では無いと考えれば、至極当然の帰結。
バスク語とは、印欧語に洗われる以前の欧州土着語の残渣と見なせば、どうという話ではない。

この発想からすれば、漢語に洗われる以前の土着語の残渣も存在していておかしくない。極東の端ての地に、そんな言語が存在していてもなんら不思議ではなかろう。バスク同様に、中華帝国から、文化的に孤立していた訳ではなく、農耕にも進取的だったりして、経済的に豊かな国だった可能性があろう。
そう考えると、現代のアジアに於ける語族系統は再編する必要があろう。シナ系とチベット・ビルマ系を一緒にして大ぐくりすべきではないし、チベット・ビルマ系と日本諸語は同系列と見なす発想が必要となってくる。
語彙の流入が多い点に着目しすぎては、本質が見えなくなるということ。全体を俯瞰して見れば、こうなろう。・・・
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【シナ系】…禹は西羌で周も西夷。殷/商は異民族の侵入者。
  📖殷の帝も蛮夷戎狄の類が出自
【タイ・カダイ系】…百越
【ミャオ/苗・ヤオ/瑶系】…三苗
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【チベット系】…氐羌
 チベット/西藏 + ゾンカ/宗喀@ブータン シッキム/錫金
     シェルパ/雪巴 ラダック/拉達克
@カシミール
 ネパール/尼泊爾・バサ/ネワール/內瓦爾
 チャン/羌(プミ/普米) + 西夏有文字
 チンポー/景頗・カチン/克欽
 ローバ/珞巴
 ヌン/儂

【ロロ・ビルマ/Lolo‐Burmese語群】
 ビルマ/Burmese + マル ラシ アツィ アチャン
   
(ロロ/Lolo/イ有文字/彝系)
 
[北]ナス ノス [中]リス/傈僳 ラフ [南]アカ-ハニ [南東]ニス
 ナシ有文字/Naxi/納西/モソ
@雲南麗江
 ・・・
 トゥチャ/Tujia/土家[ビジ+ムズ]
@湖南-湖北-重慶の交界
 カレン/Karen/克倫
@タイ北部・西部〜ミャンマー東部・南部…<SVO型>声調
 ペー/Bai/白
@雲南大理…<SVO型>
【ドラヴィタ系】
【マレー・ポリネシア系】+【台湾土着系】
【アンダマン パプア オーストラリア タスマニア系】
【ムンダ系】+【モン・クメール系】…濮
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【[印欧大語族]インドアーリア系】…サンスクリット
 ヒンディー
 マガダ
@アッサム・ベンガル・ビハール
 パハール
@ネパール
 シンド
 シンハラ・モルジブ
 カシミール

【ウラル系(フィン・ウゴル サモエード)】
【アルタイ語群(チュルク モンゴル ツングース 朝鮮)】

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