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■■■ 「古事記」解釈 [2023.7.11] ■■■
[736aaa] 太安万侶:「漢倭辞典」
㊍文字を完了して📖若干気になっていたことを書いておこうと思う。

<材>ではなく、植物漢字としてとりあえず<しば>を入れたことと、繊維のカテゴリーに<たえ>を位置付けたことの2点。
前者は、植物学的な名称でないことが気がかり。
後者は逆に植物種(ぬるで/白膠木 かじのき📖)を意味することもままあるからだ。ただ、用例は1つなのでそんなことにわざわざ触れる必要はなさそうだが。

その、柴だが、通常はその用途として、枝を折り取ってまとめ(粗朶)て放置乾燥させた燃料(薪)を考える。しかし、「古事記」ではもっぱら垣根(壁)としての用語。植物品種的には躑躅系の灌木しかあり得ないと思うが、雑木扱いになっていて、普通は無視されることになっている。
薪としては、「爺が山へしば刈りに」で遍く知られる語彙だが、それは竈にくべる燃料。
一方、障壁として用いる場合は、燃やす意味などえらく縁起が悪い訳で、目的は"ふさぐ"ことで全然違っており、この読みは採れない。従って、ふさ-ぐかきと読まざるを得ない。わざわざ割註を施して、訓読みを注意するのだからその違いは重要と見える。

境界を示す<垣>と、燃料の<薪>では余りに役割が異なるのに、同じ文字を当てる方針のは一瞬とまどうが、倭的風土を考慮すればその意義がよくわかる。
漢語に"燔柴"という語彙があり、中華帝国の最高儀式たる天帝祭祀での儀式でのハイライト。玉帛と生贄(基本は都に拉致した敵国人をあてがう。基本姿勢は敵の完璧な抹消のご報告で天帝を喜ばすこと。…儒教の合理主義から、その後に、短期的ではなく、長期的視野で行うことで、損失極小化を図ることになっただけ。それが宗族第一主義宗教の観念。)を燃やして天に向かって煙を上げる祭祀なのだ。(聖書の民の習慣を官僚が導入したと思われる。)
その燃料が柴と呼称されている訳だ。
  "燔柴於太壇祭天也"[「漢書」郊祀志下]
  柴于上帝[「禮記」大傳]

青柴垣は海の底と解釈することが多いが、青垣で囲うことは、天へと魂が戻って行くことになろう。柴によって、一種の結界が設定されたことになる。

≪柴≫…小木散材@「説文解字」
---「古事記」≪柴≫用例---6
語其父大~言 恐之 此國者立奉天~之御子
 卽蹈傾其船而 天逆手矣 於青柴垣打成而隱也<訓柴云布斯>
娶淡海之柴野入杵之女 柴野比賣
多治比之柴垣宮
倉椅柴垣宮

≪垣≫…牆@「説文解字」(:筑墻囲繞)
---「古事記」≪垣≫用例---12
汝等釀八鹽折之酒 亦 作廻垣於其垣作八門
"吾者都岐奉于倭之青垣東山上" 此者坐御諸山上~也
蹈傾其船 而 天逆手矣於青柴垣打成而隱也
師木水垣宮
此王之時始 而 於陵立人垣
師木玉垣宮
亦其山之上 張絁垣立帷幕
多治比之柴垣宮
平群臣之祖名志毘臣立于歌垣・・・袁祁命亦立歌垣
倉椅柴垣宮

【付記】複数の垣がある場合、内側を瑞垣[≒水垣]、外側を荒垣/外垣[≒板垣]、間を内玉垣/中垣との用語を使用しているようだ。

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