「古事記」解釈[758](20230728)

■■■　「古事記」解釈 [2023.7.28]　■■■

[758] 太安万侶:「漢倭辞典」成語

別天神から神世七代の最終伊邪那岐神と伊邪那美神までの世界で見ると、２文字成語で多様な倭語の世界を表現していることがわかる。

固有名詞は、読者がもともと知らなければ読みなど気にかけず、漢字が暗示するイメージだけわかれば十分だし、御存じならそのイメージから自分読みするのでさしたる問題はない。
一般名詞ではこんなところが目につく。・・・
天地あめつち
国土くに(の)つち
獨神ひとりかみ
神世かみ(の)よ
天神あま(つ)かみ
　　吾身あ(が)み
　　汝身な(が)み
　　　　御身お(ほ)み
　　　　御所みところ
　　　　御柱みはしら
　　　　御刀みたち

問題は動詞系語彙だが、試しに整理してみれば、さしたることはなさそう。辞書表記としては、"～之し"とするとわかり易いのでは。文脈に応じて変える必要があるのか検討すればよいだけ。たまに、"之"が記載されているので気付いたに過ぎぬが。
基本は動詞の２連続なので成語として複合動詞と見れないこともないが、互いにたいした関係性がある訳でもなく、軽い語彙連続であり、覚えやすいので多用されたのだろう。・・・
(初發はじめ(に) おこりし)
萌騰もえあがりし
成神かみなりまし✅
　　隱身み(を)かくしまし✅
　　(神避かむさりし)
　　　　修理ことわり(を)なほし✅
　　　　固成かためなし
成坐なりま(さえ)し
見立みたてし
　　約竟ちぎりおへし
　　言竟いほおへし
　　作竟つくりおへし
　　流去ながしさりし
　　　　參上まゐ[り] のぼりし
　　　　還降かへりくだりし
　　　　反降かへりおりし
　　　　往廻いきめぐりし
　　　　還坐かへりまし
　　　　逃還にげかえりし
　　　　逃行にげゆきし
　　　　逃來にげきし
　　　　逃迯にげ(に)にげし
　　　　走就たばしりし
病臥やみふし
患惚わづらひ(て)いきどほりし
　　　　相見あひみし
　　　　相論あひかたらはし
取闕とりかけし
引闕ひきかきし
見畏み(て)おそれし
投棄なげすてし
摭食ひろひはみし
　　　　賜名な(を)たまはりし✅
　　　　依賜よせたまひし
　　引塞ひきせし
　　塞坐せきまし
(言こと - 依よさし)　⇒事寄 or 言寄
(御み - 合あひし)　⇒見合 or 身合
(身著み(に)つけし)

特別扱いもある。
2文字であるが単独動詞と見なすしかなさそう。
忿怒
もう１つは、漢文表記方法の"所"を使用。📖
所知

後代に入ると、いかにも漢語熟語的に映る記載が登場してくる。倭語なのに、いかにも恣意的な書きっぷり。当該時代感覚を伝えていると思われる。・・・
㊥⑩
伇病-多起　神氣-不起
伇氣-悉息　國家-安平
天下-太平　人民-富榮
弓端之調　手末之調
天神　地祇
赤色　黒色
楯矛　幣帛
容姿端正　形姿威儀
愁歎
㊦⑯
國中-烟不發　國皆-貧窮　悉除人民之課伇
後見國中-於國滿烟　爲人民富今科課伇