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■■■ 「古事記」解釈 [2023.9.8] ■■■
[800] 太安万侶:「漢倭辞典」🦌
鹿文字についてはすでに検討したことがあるものの📖鹿の扱いは至って淡泊、冠頭垂・脚下・偏繞・旁・構と俯瞰的に文字を眺めてみて、鹿偏は確かにあるものの、メジャーな漢字展開がありそうにも思えなったので、確認を兼ねて追加記述。
--収載--
【鹿】_17 【借訓】 14 _3
【麁[鹿+𠂊]≒__1  取毛麁物毛柔物
 …大嘗祭では阿波忌部調製の麻織物"麁服あらたえ"が供納される。
--非使用--
 冠頭垂…【麈】【塵/𪋻】【麋】【麝】【鏖[(訓)皆殺し]
 脚下…【麗】【麓】【簏[竹器]【蔍[蔍蹄草]
 偏繞…【麒】【麟】【鄜[地名]
 旁…【漉】【轆】【㦇[心閑/心轉]
 構…n.a.
 他関連…【㲋[𠮥(兔)+比(鹿)]【萩[=鹿鳴草@倭]

<神生([3]風・木・山・野4神)>
[野神]鹿屋野比売カヤノヒメ
 …萱/茅場と思われる。
<火之迦具土神>
[因御刀所生之神@屍体頭所]正鹿山津見マサカヤマツミ
 …"正鹿"は、正真正銘の<山の靈>という意味で付けられた修飾語だろう。
<天石屋戸>
[御幣]天香山之眞男鹿之肩拔
 …亀甲卜占代替の様相を見てしまうが、山信仰の場合は鹿卜だったかも。⿔系文字では見かけないが、麢 𪋺 𪋻があるから。霝鹿は山岳域棲息の羚のこと。
<国譲>
[天若日子]天之"麻迦古"弓アメノマカコユミ
  ⇔天之眞鹿子弓
[天尾羽張~]且 其天尾羽張~者 逆塞上天安河之水 而 塞道居 故他~不得行 故 別遣天迦久アメノカク~可問 故 爾 使天迦久~ 問天尾羽張~之時
  ⇔天之鹿児神
この神は、固有種の日本羚羊カモシカを指すと考えられるが、鹿族動物ではない。枝角ではないし落角もしない山羊系。ガレ場単独行動が多い草食性山岳棲息種。近縁は台灣長鬃山羊。(東南アジア〜ヒマラヤ方面の種は寒冷高地棲なので大型化している。)ゴーラル[華北/朝鮮(長尾)山羚]も同類となる。
<降臨>
[天忍日命&天津久米命]天之眞鹿兒矢アメノマカゴヤ
 …狩鹿用ではなく、神聖なカモシカ角の矢と見た方がよさそう。誰もが知る地名"カゴ"で読むが、鹿児かのこでもある。本来の字義は子鹿ではなく、虦貓類の最強猛獣。
<①天皇段>
[八咫烏@芳野]問:「汝誰也」 答曰:「僕者國神 名謂 井氷鹿<此者 吉野首等祖也>」
 …多くの解説で、本性は水女神と見なされているが、尾付尻皮をつけており、発祥は、冷涼な山岳部の沢の水場を知る狩猟民と考えた方がよいと思う。後世の道教的目で眺めると、刀と鏡を聖器とする水垢離信仰者に映るし、古代の水銀鉱脈探索のプロでもあるから、光る水のある場所を本貫地と見なすのは真っ当ではある。
<⑥天皇段>
[后(⇒⑦天皇)](姪)忍鹿比賣命
<⑦天皇段>
[皇子 日子寤間命]針間牛鹿臣 祖
 …播磨では牛・鹿の畜養があったのだろうか。
[皇子 日子刺肩別命]・・・角鹿海直 祖
 …海を泳ぐ角鹿イメージか。
<⑪天皇段>
[皇子 大中津日子命]・・・高巣鹿之別・・・等祖也
[倭建命]還上幸時 到足柄之坂本 於食御粮處 其坂~化白鹿 而 來立
 …アルビノ鹿があり得るのかはわからぬが、白猪 八尋白智鳥 白鳥 白犬と同等の特別扱いということだろう。
<⑭天皇段>
[伊奢沙和氣大~之命]經歷 淡海 及 若狹國 之時
於高志前之角鹿 造假宮 而 坐
 :
故其旦幸行于濱之時 毀鼻入鹿魚既依一浦 於是 御子令白于~云於我給御食之魚
故 亦稱其御名 號 御食津大~ 故 於今謂 氣比大~ 也
亦其 入鹿魚之鼻血臰
故 號其浦謂 血浦 今謂 都奴賀也

 …いるか(海豚)の血⇒血浦⇒都奴賀⇒角鹿(敦賀)⇒入鹿魚との無理を感じさせる譚だが、話の核は、御食魚であること。
<⑯天皇段>
[天之日矛系譜(清日子と當摩之灯繧フ子)]酢鹿之諸男
 …妹が菅竈"由良度美"なので、酢鹿と菅が対応しているように見える。馬飼の土地だろうから、肉食を好む帰化人のイメージがありそう。
<⑳天皇段>
[忍歯王]淡海之佐々紀山君之祖名韓帒白:「淡海之久多綿之蚊屋野 多在猪鹿 其立足者如荻原 指擧角者如枯樹御獦」
<㉑天皇段>
[歌#97]美延斯怒能みえしのの 袁牟漏賀多氣爾をむろかたけに 志斯布須登ししふすと(鹿猪伏すと) 多禮曾たれそ 意富麻幣爾麻袁須をふまへにまをす 夜須美斯志やすみしし 和賀淤富岐美能わかをふきみの 斯志麻都登ししまつと(鹿猪待つと)・・
 …シシの漢訳文字は宍[=肉/𠕜…出自からすれば、冂であって宀ではない。]。猪肉の場合はイの宍で、鹿肉だとカの宍となる。後者は俗称話語ではシカとなり、シシのための狩猟となれば、主対象は鹿猪。
<㉚天皇段>
[妃]伊勢大鹿首 小熊子郎女
 …なかなかに面白い。大・小は単なる接頭修飾ではなかも。小熊とは低地の林に棲息する倭熊。(大型の羆系は大陸の知識であって、出会ったことはない筈。)そうなると、大鹿は、種で云えば、寒冷地の蝦夷鹿。

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