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■■■ 「古事記」解釈 [2023.9.17] ■■■
[809] 太安万侶:「漢倭辞典」動詞形形容詞
叙述部は、活用語【動詞】だけでなく、【形容詞】【形容動詞】も3本柱として扱われている。その他に重要な品詞としては、活用語の語尾に付着する【助動詞】と、動詞を形容する【副詞】がある。

実用上はこうした分類は活用を覚えるのには役には立つが、倭語の特徴を掴みづらくする結果を招いてしまう。
体言noun用言verbという言い方が良いとは思わないが、これを構造文法的<主ー述>に見るのではなく、文は体言系語彙と用言形語彙からなるとの見方として捉えると、倭語の出自を考える上では役に立つ。倭語〜日本語は紛れ無き<動詞>語であるが、漢語や多くの欧語は<名詞語>("noun adjective:名詞に付加")ということを意識することになるから。
ここまで書くと、ご想像がつくかもしれないが、【形容詞】【形容動詞】は動詞類とみなし、2つに分割せず、1つにまとめた方が圧倒的にわかり易かろう。そして、できれば、"形容"の名称も替えるのが望ましい。屈折語の"形容"詞とはほぼ名詞であり、動詞と並ぶ叙述部分を担う役割は果たせないのに、あたかもそれと同機能であるかと勘違いしてしまう名称は不適当だと思う。

ここらの問題は、根が深そう。

屈折語に於ける形容詞とは、前述した、想定名詞分類に於ける"抽象概念系"語彙を発展させた様なもの。
一方、日本語の形容詞は、名詞派生ではなく、心情を吐露する時の発声を叙述化した語彙としか思えない。活用が異なるので、動詞とは別な印象を与えてしまうが、本質的には同類と言うべきだろう。
なんのことはなく、"こおろこおろ"に活用語尾を付けて叙述化語彙にする様なもの。
現代語では、"熱い⇒アッツ!"が多用されるが、促音便では無いこうした言葉が使われるのも、語幹アツがもともとの感情表現の核だった古代の慣習復活の可能性が高い。そう考えれば、このアツに活用語尾を付けて文章語として成立させたのが、"熱し"と考えればよいだけのことになろう。
・・・日本語文法書では、この手の感動や驚きの表現手法として、語幹部分で言い切る語法が古くから存在するとしている。(俗語でもなければ誤用でもなく、「あな、[語幹]。」「[語幹]-の〜や。」用例が多い。)これを形容詞(古文では形容動詞も含まれる。)の原初形態と見るのが一番素直だろう。

【形容詞】【形容動詞】は一括してしまい、動詞中心の動詞族としてまとめてしまえば、文法的に難しいことを考える必要はなくなる。それこそが雑種言語の姿勢と言えるのでは。

【詞義】
 事物・動作・心情の具体的な状態
  1 比較的客観的(形態 容貌)
  2 特色描述(評価 or 情感)
【活用】 語幹-活用語尾
   _く _く _し _き けれ ーー
    …通称≪ク活用≫
【増補的表現】
 情意辞"si"導入
    語幹-し-活用語尾 …通称≪シク活用≫
【動詞族としての変態詞】
 動詞修飾型(連用形)
 動詞修飾詞化(副詞形) …く or に
 動詞由来[語幹+接尾辞]
【動詞取り込み詞】
 動詞体-し e.g. 艶めく 懐く 恥ず-ka-
 "あり"導入⇒後続助動詞用変形活用📖
  -く[連用形]-あり[動詞:ラ変変格活用]-(助動詞)
   く-あら く-あり し-あり し-ある し-あれ し-あれ
   く_ら か_り  ーーー  か_る  ーーー か_れ
    …通称≪補助活用≫
【非動詞との関係性】
 名詞由来[名詞-し] e.g. 大人
 名詞修飾型(連体形)
 名詞化[語幹+接尾辞]
【代表的語彙】情緒表現が大元だと見る。
  〳〵-し (擬音・擬態・重畳 etc.) …清々すがすが-し 忌々ゆゆ-し 諸々
  〜な-し …限り 心 かたじけ こち やむ事
  〜を-し …口
あきらけ-し あたたけ-し あたら-し 怪/恠あや-し あら-し あれ-し いた-し いらな-し 顕/現うつ-し うつく-し "宇摩"うま-し うま-し うるは-し うらこひ-し うれ-し "宇禮多"うれた-し かぐは-し かしこ-し かた-し がた-し -し くは-し くら-し -し けは-し 日長けなが-し こは-し -し さが-し さだ-し しけ-し しこ(め)-し しろ-し すず-し すぼ-し ただれ-し たふと-し たか-し 手弱たよわ-し つら-し とも-し なつか-し なまめか-し なみだぐま-し -し はづか-し はるけ-し ひと-し 間無まな-し ゆら-し よろ-し わか-し  無礼ゐやな-し をさな-し をぢな-し

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