→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2024.6.11] ■■■
[916] 37
「古事記」㊤では、天照大御神を色々と取り上げてはいるものの、天孫降臨譚以外は、他の神の段の一部でしかなく、㊤の主役として描かれている訳でもない。

それでも、天孫降臨譚だけは大御神が圧倒的な存在感を見せているかと云えば、そうとも言いかねる。
葦原中国を子孫が統治するとの宣託を発してはいるものの、それに沿って一気呵成に流れが進むストーリーにはなっていないからだ。
どちらかと云えば、紆余曲折あって、ついに実現という印象を与える内容。始祖譚だから、圧倒的力を見せつける場面で終始してもよさそうなものだが。

実は、それは、天皇統治実現過程での支援の仕方でも言える。
大和盆地を目指すも、苦闘で呻吟していた<日の御子>が、大御神の威光によって、即、完璧な勝利を収めたという話になりそうに思うが、高天原の神々の力で護ったというスタイル。中華帝国流の華々しき上意下達譚は肌合いが合わないのだろう。
㊥❶~倭伊波禮毘古命㊃布都御魂・八咫烏
   「己夢云 天照大~ 高木~ 二柱~之命以・・・」
それに、天皇統治に大御神が関与するのはこの事績のみ。寂しい印象も否めない。
但し、倭国の新羅出征指導の役割を果たしているので、こちらも加えるべきかも。しかし、それを躊躇しがちになるのは、実質的には天罰譚になっているからだ。
㊥⓮帶中日子天皇㊂建內宿禰:殯宮
   「是天照大御~御心者・・・」
国家的には特筆すべき支援だが、皇后に降臨して詞を発しており、その詔に従った皇后の新羅征服を成功に導いたということで、血脈上の<日の御子>の護持ではない。それどころか、詔を無視した天皇の命を奪ってしまう。ここでは、以前とは打って変わって、極めて厳しい神として登場している。
(本居宣長は、⓬天皇段での倭建命の西征にも大御神が神威を発揮したと見なしている。その可能性はあるものの、あくまでも推定。そう読める文章が記載されている訳ではない。)

しかしながら、降臨一行に対して鏡を授け、我御魂として伊都岐奉うように命じており、そのレガリアが祀られている伊勢大神宮に関して、㊥で3ヶ所の記載がある。
❿御眞木入日子印惠命㊀師木水垣宮
  妹 豊鉏比賣命【拜祭伊勢大~之宮也
⓫伊久米伊理毘古伊佐知命㊀師木玉垣宮
  倭比賣命者【拜祭伊勢大~宮也】
⓬大帶日子淤斯呂和氣天皇㊁小碓命/倭建命御子⓹阿豆麻
      ❶言向和平東方十二道之荒夫琉~

  參入伊勢大御~宮 拝~朝廷
「古事記」の記述の仕方を考えれば、大和盆地内統治から、倭国としての国家統治体制を確立する過程で、伊勢大神宮が果たした役割は小さなものではなかったことを示唆している。このことは、<日の御子>支援というより、倭国護持の神として祀られていることを意味しているのかも。(「古事記」の記述からすれば、女神の魂たるレガリアは、<日の御子>が座す宮から離れた地に安置され、天宇受売~の流れを受け継いだ形での祭祀が行われたということなのだろう。天皇ではなく、比賣による拜祭に拘っており、中華帝国型帝室祭祀とは全く異なった対応がなされている。尚、小碓命は、性別確立前の童であり、同様な位置付けと見ることもできる。)
  続く

 (C) 2024 RandDManagement.com  →HOME