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■■■ 「古事記」解釈 [2022.10.14] ■■■
[歌鑑賞12]みつみつし久米の子等が粟生には
【久米人】@東遷戦いに当たって気勢を上げる
美都美都斯みつみつし 久米能古良賀くめのこらが 阿波布爾波あはふには 賀美良比登母登かみらひともと 曾泥賀母登そねがもと 曾泥米都那藝弖そねめつなぎて 宇知弖志夜麻牟うちてしやまむ
㊆(5-6)-(5-7)-(5-7)-7

    如此歌 而 拔刀 一時打殺也
    然後 將擊登美毘古之時
    歌曰

みつみつし   気力充実している
久米の子等が  久米の一族が(持っている)
粟生には  粟畠には
臭韮一本  臭韮が一本生えている
苑が本  (それが取られて)苑の下に(在るが)
そ根芽繋ぎて  その根と芽を繋いでしまおう
撃ちてし止まむ  討伐すれば (絶滅させるまで)止まらぬ

No.11に直に続く久米歌。
こちらの歌は敗戦色濃厚が誰の眼にも明らかになった頃、陸軍支配の思想的なよりどころとなった。・・・

それにしても、完璧な軍事独裁を実現した大日本帝国陸軍指導層の特殊性には唖然とさせられる。もともと戦争終結のシナリオさえ持たずにただただ開戦主張という発想自体が、職業軍人では考えられない姿勢だが、敗戦以外にあり得なくなってからも、その対応策を練る者を敵とみなして抹消を図る一方で、皇民全滅を賭けて戦えと呼びかけるのだから、ほぼカルト集団と言ってよかろう。竹槍で爆撃機B-29と戦う訓練を真面目にしていたのだから、末端の人々までもがその気分を共有していたことは間違いあるまい。・・・
古事記所出、畏くも~武天皇が長髄彦を誅したまうた折りの御歌である。御歌はこの後ろになほ二首あり、・・・敵必滅の固い御決意を述べさせたまうたもので、まことに米英撃滅の決戦下一億國民不退轉の決意を表象するにふさはしい合い言葉である。

要するに、久米部耕作地の粟畑に混じって細い一本の韮は、皇賊のようなもの。根こそぎ抜いて、討ち滅ぼしてしまえ、という意味の歌とされる訳だ。

至極わかり易い説明だが、"繋ぎて"とある以上、根っ子を引き抜いてしまうという読み方には無理を感じる。
それに、韮の臭さが匂う状況を避けるのはあくまでも仏教観であって、香り立つことは邪を避けることに繋がるのだから、比喩としては不適切では。漢籍から見る限り、菜としては、韮は嫌われ者どころか穀類とならぶ重要な産物扱いで、畑の雑草ではない。それどころか、効果の程はわからぬが、わざわざ植えたりする植物である。(野蒜採りでわかるように、韮系は好まれていたと考えるべきだろう。)
しかし、そうなると、芽を根に繋げるという、一見、訳のわからぬ言い回しになってしまうので、余計なことは考えずに納得しておこうとなるのが普通。📖焼畑粟から水田稲へ

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