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■■■ 「古事記」解釈 [2022.10.30] ■■■
[歌鑑賞28]久方の天香久山
【倭建命】初夜@所期の地
比佐迦多能ひさかたの 阿米能迦具夜麻あめのかぐやま 斗迦麻邇とかまに 佐和多流久毘さわたるくび 比波煩曾ひはぼそ 多和夜賀比那袁たわやがひなを 麻迦牟登波まかむとは 阿禮波須禮杼あれはすれど 佐泥牟登波さねむとは 阿禮波意母閇杼あれはおもへど 那賀祁勢流ながけせる 意須比能須蘇爾おすひのすそに 都紀多知邇祁理つきたちにけり
⑬(5-7)-(4-6)-(4-7)-(5-6)-(5-7)-(5-7)-7

    美夜受比賣 其於意須比之襴著月經
    故 見其月經
    御歌曰

久方の  
天香久山  天の香具山
利鎌に  鋭利な鎌(の姿の様に)
さ渡る鵠  渡っていく大白鳥は
繊細  とても細やかで
手弱が腕を  嫋やかな腕を
枕かむとは  抱こうと
吾はすれど  我はするものの
さ寝むとは  (そして)寝ようと
吾は思へど  我は思っているものの
汝が着せる  君が着ている
衣裾の裾に  衣裾の裾に
月立ちにけり  月が経っているではないか

枕詞<久方の>は、"〜光のどけき春の日に・・・"(紀友則)で覚えることになっているが、余りに広範囲で使用されており(天[あめ/あま] 空・月 月夜 雲 雨 雪 霰 霞 光 昼 夜 星・都 桂 岩戸 鏡)、天空に関係していそうという以上ではなく、説明はさっぱり要領を得ない。
当然ながら「萬葉集」での用例も多いが、天の香久山は1つのみだし、 天の香久山に必要という訳でもなさそう。
  [巻十#1812]久方之 天芳山 此夕 霞霏 春立下
こんなことが解釈の参考になるとも思えないが、調べざるを得ないのは、どうして美夜受比賣との初夜のシーンに天の香久山が登場するのかわからないからである。

検索すると、巨大な磐座がご神体とされており、月の誕生石と呼ばれているとあるから、"月立ちにけり"のイントロかも知れないと思ったりもするものの、男女の営みの障害でもある月経と係る論理が見えてこない。

天の香久山は王権・神権と係っておりどのような意味があるのか色々と考えさせられる箇所だ。📖天の香久山伝承譚こそが肝

クビは普通は<頸>であり、鵠/白鳥くくいであると言えるのかは若干疑問だが、"さ渡る"としている以上間違いなさそうだ。しかも、"利鎌に・繊細"とあり、鳥としての特徴が、少女的な細くて白い腕と絡む形容として似合っているのは確か。
ただ、肉感的な女性の性的魅力を語っている訳では無いから、年少であることを意味していそう。もともと婚約だけですませたのは、その時点では、ただちに睦会うには幼女過ぎたということかも。

月と白鳥という組み合わせはそれなりに絵になる光景ではあろうが、それを月経に繋げるセンスはどこから来ているのか、よくわからない。

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