→INDEX

■■■ 「古事記」解釈 [2022.11.12] ■■■
[歌鑑賞40]此の御酒は吾が御酒ならず
【御祖 息長帶日賣命】天皇勝利凱旋の酒宴
許能美岐波このみきは 和賀美岐那良受わかみきならず 久志能加美くしのかみ 登許余邇伊麻須とこよにいます 伊波多多須いはたたす 須久那美迦微能すくなみかみの 加牟菩岐かむすき 本岐玖琉本斯ほきくるほし 登余本岐とよほき 本岐母登本斯ほきもとほし 麻都理許斯まつりこし 美岐敍みきそ 阿佐受袁勢あさずをせ 佐佐ささ
⑭(5-7)-(5-7)-(5-7)-(4-6)-(4-6)-(5-3)-5-2

    於是 還上坐時
    其御祖 息長帶日賣命 釀待酒以獻
    爾 其御祖御歌曰

此の御酒は  この御酒は
吾が御酒ならず  吾の御酒ではありません
御酒[奇]の司  神酒の司で
常世に坐す  常世の国におられ
石立たす  岩薬を与えてくれた
少名御神の  少名御神によって
神祝き  神々しく祝福した上で
寿き狂ほし  全霊をもって寿ぎ
豊寿き  さらに豊かに寿ぎ
寿き廻ほし  徹底的に寿ぎ尽して
奉り来し  献上されて来た
御酒そ  神酒ですぞ
浅ず飲せ  そのまま飲み尽くせ
ささ(囃子)  さ〜 さ〜

"此の御酒は吾が御酒ならず"という冒頭句の意味が解り難い。
醸造したのは、自分であるにもかかわらず、魔法のようにして出来上がったという言い回しにも思えるからだ。

一般には、百薬の長ということで、少名御神の酒とされているとの解釈になっているが、それなら疫病対策だろうし、大物主神が似合っているのでは。
醸造者を言わない習わしがあるとも思えず、適当に神の名前を利用することも考えにくく、今一歩腹に落ちない。
粟酒とでも言うなら別だが、酒は高天原でも出雲でも少名御神の登場以前にすでに酩酊する呑み物として通用していたのだから。

"石立たす"も、どのような意味で使われているのか見えてこない、📖石立たす少御神と酒宴

わからないまま放置という訳にもいかないので、少名御神の薬と、酒が関係する論理は見えてこないものの、その線で解釈するしかなさそうである。まさか薬酒でもなかろうし。
・・・デンドロビウムと広い一般名で呼ばれているが、香り高き長生蘭こと(細莖)石斛セッコクの茎を煎じた健胃・強壮薬が、<少彦すくなひこな_薬根くすね(「本草和名」では[一名]以波久須利と。)

ともあれ、少名御神によって、寿ぎ寿ぎさらに寿ぎという特別な酒であると主張しているのだから、一般的な宴会で用いられる酒とは違っている筈。

 (C) 2022 RandDManagement.com  →HOME