「古事記」解釈[歌67](20221209)

■■■　「古事記」解釈 [2022.12.9]　■■■

[歌鑑賞67]女鳥の吾が大王の

【天皇】異母妹女鳥王に求愛
賣杼理能めとりの　和賀意富岐美能わかをふきみの　淤呂須波多をろすはた　他賀多泥呂迦母たがたねろかも
㊃(４-７)-(５-７)
　　　　是以速總別王不復奏
　　　　爾　天皇女鳥王之所坐而坐其殿戸之閾上
　　　　於是女鳥王坐機而織服
　　　　爾　天皇歌曰
女鳥の　　女鳥(女)王が
吾が大王の　　吾が大王の
織ろす機　　織機で織っておられるのは
誰が料ろかも　　誰の織物になるのでしょう

"聖帝"として誰でもが知る⑯大雀命/仁徳天皇からは下巻になるが、この天皇段で、一番力が入っている記載事項は、"國中烟不發國皆貧窮"から始まる善政譚ではなく、女鳥王譚ではなかろうか。
都合５首であり、口誦叙事詩として人気を博す箇所なので、是非にも収録したかったのでは。

歌だけ並べると、天皇の恋に係る波乱万丈の歌物語であり(黑日賣⇒大后⇒八田若郎女⇒女鳥王)、大后完勝譚ということでもあるが、その最後を飾る箇所となる。

なんといってもこの歌につながる地文が傑作。📖稗田阿礼の爆笑傑作
　　大雀命天皇には、仕える弟がいた。名前は、速總別王(敏捷な隼)。
　　庶妹の女鳥王を娶りたいので、仲媒をさせた。
　　すると、女鳥王は速總別王に語った。
　　　「皇后の意に逆らえない天皇の妻は御免蒙ります。
　　　　汝の妻になろうと思います。」
　　そして二人は意気投合し結婚。速總別王は復命せず。
天皇、すでにできている女鳥王を訪問。当時の慣習に則って、八田若郎女と一緒に女鳥王もと考えたのだろうが、余りに鈍すぎてこれでは好色とは言いかねる。
┼⑮┬宮主矢河枝比売(丸邇比布礼能意富美の娘)
┼┼├─宇遅能和紀郎子…既指定皇位継承者
┼┼├─八田若郎女
┼┼└─女鳥王

客観的に眺めれば、皇統譜が枝分かれだらけになることを避ける動きをしていることになる。少なくとも上記の脈流は消滅した訳で。