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2003.2.11
 
 


エンジニアの蛸壺化(2:コミュニティ)…

 若手のエンジニアの交流範囲が狭まった理由を、部署内だけで考えているとわかりにくいが、新卒採用者全体を見ると、マクロの問題が見えてくる。

 特に注目すべき点は、製造メーカーへの就職者数の変化である。この数が、90年代に激減した。(下図参照)
 といっても、この間、大学理工学系学部の入学者は一貫して増えている。製造業が採用を抑えたのである。(製造業就職者の割合が一貫して減少している。)
 この変化が、交流に与えた影響を考える必要がある。

 若手エンジニアの所属部署外とのコミュニケーションといえば、社内の同期入社組で築いた交流網と、大学の同期の付き合いが多い。ところが、経験豊かなエンジニアにきいても、若い頃は同じだったという。交流の仕方はほとんど変化がないのだ。

 ところが、就職者が減ってきたのだから、こうした同期コミュニティの大きさは昔とは違う。
 驚くことに、大卒コミュニティの大きさは、10年間でほぼ半分近くにまで縮小している。新卒採用抑制に加えて、修士が増えたため一気に減ったのである
 修士入社の増加も、コミュニティの縮小問題を深刻化させている。修士と学士は同期入社といっても扱いは異なる。年功序列組織の日本企業内では、両者が同じコミュニティに属している感覚は全くない。そうなると、修士コミュニティ規模は極めて小さいといえる。
 修士採用は、もともとは少なかったから、急増したのだが、それでも、採用規模は60年代の大卒数と同じ程度だ。80年代の学卒者コミュニティ規模と比較すれば、こちらも半分以下だ。

 要するに、若手エンジニアの交流コミュニティの規模がほぼ半減した、と見てよい。とてつもない変化が起きたと考えるべきである。

 一般に、交流密度は参加メンバー数の二乗に比例する。これを当てはまれば、若手エンジニアの部署外交流密度は、80年代の4分の1程度になったと推定される。
 文化が変化したために情報が流入しにくくなったのも事実だが、蛸壺化の底流には絶対的交流密度の低下がある。
 従って、いくら外部との接触を推奨しても、年功序列をベースとした同期交流を主体とする限り、効果は限定的である。

 蛸壺化を防ぐには、情報入手のための新しい交流の仕組みを考案するしかあるまい。

   過去記載の
   ・「エンジニアの蛸壺化(1:若手問題)」へ (20030210)


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