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2005.11.29
 
 


リアリズムに徹すると…

 とある会合で、知己でもない経営幹部の方から、このホームページの愛読者であると囁かれたので驚いた。
 知り合いから教えられたので眺めているそうだが、なかでも政治の話が、経営に大いに参考になるという。

 そして、思わぬ言葉を投げかけられた。
 「要するに、リアリズムに徹し、組織内部の変身志向勢力を組織化して、ベクトルを合わせよ、ということですな。」

 企業経営では、現在、その方向で頑張っており、なんとかなりそうだとのこと。本気で変革を進めようと考える人がでてきたし、そのなかには優秀な人もいそうだから、力がついた時点で、一気に一点突破全面展開策を図るそうである。
 とはいえ、話をお聞かせ頂くと、問題山積のようだから、簡単ではなさそうだが。

 どう進めるべきか思案している時、政治の話を読むと頭が整理されるそうで助かるらしい。
 お役に立てて幸いだ。

 しかし、一企業内での話しと、国の仕組みは全く違うから、政治にはかかわらない方がよいですよと諭された。

 「電子申請の状況を見て下さい」とのこと。

 確かに、僅かの例外を除けば、電子申請は死語に近い状況にある。行政改革どころではない。

 もっとも、これを官僚の立場からみれば、稀にみる大成功プロジェクトということになろう。
 思った以上の成果である。
  → 「白書でe-Japan構想の内実がわかる」 (2002年11月7日)

 IT予算を大幅増加させて、そこらじゅうに立派なハコものを揃えた。
 しかも、この結果発生する新業務を従来業務に加えるような仕組みにしているから、業務の煩雑化が進んだ。お陰で、人員合理化どころか、実質的な人員増を果たせたのである。
 なかでも官僚にとって嬉しいのは、ITベンダーまる投げの水脹れ工事を発注しても、なんのお咎めも受けない点だ。内容を吟味できる人はいないからどうしようもない。それに、巨額のメインテナンス費用を毎年継続的に支払うことになる。
 これで、IT産業から「政府の非効率な仕組みへの批判」を受ける可能性もなくなる。
 IT産業を、政府の「規制と保護」業界に仕立てたと見てよいだろう。
 まさに万々歳だろう。

 要するに、小泉政権の政策とは、長期的な「小さな政府」追求の名のもと、短期的には官僚組織自己増殖予算を大盤振る舞いする性格なのである。
 例えば、独立法人化とは、管理の自由裁量権を認めたにすぎず、当座、政府の費用は嵩む政策と考えた方がよい。
 ほとんどの場合、経営者は官僚だから、民間企業のセンス皆無の経営が行われる。無駄遣いがさらに進むことになろう。

 簡単に言えば、「官僚組織にやさしい保守」政権なのである。官僚組織の協力を仰ぐことで、中身はどうあれ、古色蒼然とした状況だけは打破すべく動いていると考えればよい。お陰で、法律整備は急速に進んだ。

 従って、もしも、官僚組織内部に変革勢力が存在するなら、枠組みはできつつあるから、「小さな政府」に進む可能性もある。

 企業と接することが多い現場の若い人達と会うと、官僚も、そのうち変わるのではないかと期待しがちだが、リアリズムに徹するなら、願望で終わると見た方がよさそうだ。


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