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2007.3.27
 
 


頭脳トレーニングの方法論…

 ビジネスマンが勉強することは悪いことではない。
 というか、勉強しなければ落ちこぼれかねないご時世である。アリスの世界のように、皆が走っているのだから、のろのろ進めば、後向きに歩いているのと同じこと。

 しかし、数字や記号を正確に覚えるとか、できるだけ沢山の事を頭に詰め込む能力を磨いたところで、たいした価値はないと思う。
 ところが、そう思っているにもかかわらず、クイズや、算数の問題に頭脳を使うと、力が高まると考える人は多いようだ。

 小生は、こんなことをする位なら、読書や、テレビ視聴でもした方がましだと思う。
 頭の使い方が間違っているのではないだろうか。

 普段と違うことをすると、脳味噌の使っていない部分を活性化できるが、日常的なことをしているだけでは、頭が硬くなると思ってしまうようだ。
 なかには、慣れていない指の動きが含まれているミニ体操や、普段使わない筋肉を使ったりするする人もいる。これが、頭のトレーニングに繋がると考えるようだ。
 本当かね〜。
 小生は、こんなことは、時間の無駄と見ている。

 一方、記憶能力の衰えを、神経衰弱ゲームで鍛え直そうと頑張る人もいる。記憶能力で勝負する職業は別だが、知恵で食べていこうと思うなら、こんなことは止めた方がよいのではないが。

 もちろん、こうしたトレーニングが効果薄と主張している訳ではない。やらないよりは、やった方が良い結果は得られると思う。しかし、その時間を他のことに使ったた、もっと大きな効果が出ると信じているからである。

 誤解を恐れず言えば、たいていの人が行っているトレーニングは、左脳とか、右脳とか、言っていても、結局のところは記憶力を高めようというものではないかと思う。
 これは、ビジネスマンの頭脳トレーニングとしては、一番損なやり方である。

 実は、記憶など不完全でよいのである。
 と言うより、いかに不完全にするかが勝負なのだ。

 と言うのは、一番重要なのは、抽象的思考のトレーニングだからである。記憶力や、分析力を強化したところで、何の効果もないのである。

 例えば、数列を見て、そのルールを探し出すゲームをしていると、抽象化の訓練をしているように思ってしまう人もいるようだが、全く違う。受験の数学を体験していれば、実感でわかると思うが、網羅的に、どのようなルールがあるか、分析すれば結果は出る。
 実につまらぬトレーニングである。様々なルールを記憶して、早く結果を出すことに注力しても、抽象発想とは無縁だから、期待している脳の力量向上には繋がらないのだ。

 それでは、何をすべきか。
 第一歩は、曖昧な見方をすることに尽きる。錯綜する膨大なデータを眺め、なんとなく把握する能力を身に着けるには、それこそ「いい加減に」データを見た方がよいのである。
 知恵を絞って解答を考えるようなトレーニングは、それこそ逆効果である。

 ここが肝要なのだが、実は、この“曖昧化”能力は皆が持っている。社会的な生活を送るためには不可欠なスキルなのである。ただ、我々は、そのことを意識していないだけ。

 これでは、よくわからないかも知れないが、遠近法を考えればわかる筈だ。
 掲げた2つの図を見て、どう感じるか。
 へそ曲りでなければ、一方は同じ大きさの人型の遠近図であり、もう一方は大小の人型の上下図と判断するだろう。
 線がどう違うとか、人の形がどうなっているといった点に関心を払う人はいまい。
 このことは、細かな情報を勝手に無視しているということ。両者の違いを見ていると思っているが、実は、驚くほど大雑把に見ている。まさに、“曖昧化”である。しかし、だからこそ、この図に意味付けができるのだ。

 おわかりだろうか。
 “曖昧化”とは、抽象的思考の原点なのである。これができるから、全体が見えるようになる。
 ビジネスマンなら、これは構想力に直結する。

 この話でおわかりだと思うが、抽象的思考とは日常的に行っている行為なのである。ただ、それは無意識の世界。

 従って、抽象思考力をつけるには、『ガツンと一撃』が必要になる。
   →  「創造力を生む『ガツン』とは何か」 [2007年2月27日]

 それがないと、頭に組み込まれているやり方でものを見てしまうからだ。無意識の世界で行われている抽象思考を、有意識の世界に引き戻す必要がある。

 今迄とは違うことをすれば、刺激にはなるが、このようなマインドセットを変える原動力が得られる訳ではないことに注意すべきである。
 つまり、何故、抽象化作業が必要かを理解していないと、たいした成果は得られないということ。

 もともと、ホモサピエンスは、抽象化の意義を理解していたからこそ、繁栄できたのだと思う。本質的な動きを見抜く力をつけないと、生き抜けないことを自覚したのだ。
 脳のトレーニングをするなら、先ずは、この「自覚」ありきである。


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