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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.7.18 ■■■

受験生の錯乱

「夢とは」[→]で取り上げなかった話をしよう。

受験生の夢についての話だが、他とは大分性格が違う。"策秀才文"[→]を引用したついでと言うのもなんだが、ここらで見ておくのもわるくなかろう。

最近の科挙の試験は矢鱈に難しくなっているし、周囲からの期待からのプレッシャーも大きく、受験生は大変だネ、という気分ありとして、以下を読んで欲しい。
なにせ、長安に逗留して受験勉強する費用だけでも大変な額に上るのだから。

さて、話の方だが、はたして、どこまでが夢で、どこからが現実なのかは、なんとも言い難し。
受験の緊張感と余りの睡眠不足が重なり、それがもはや頂点に達していて、寮生は皆意識朦朧状態だったのではないか。
そんな訳で、受験生達の実名は伏せている。

テストも終え、互いにどうだったか話し、だいたい誰が合格しそうかわかったところで、受かりそうな仲間同士で出かけようとなる。
疲れを感じた時に、気晴らしに、誘い合わせて食べに行く異国情緒満点のお店に。
とはいえ、当然ながら、何時もとは違って、食事どころではない。結果が気になるし、疲労感満杯だからだ。従って、なにもかもが上の空。
ほとんど食べ物を口にしない受験生もいるほど。結局、お金も払わずに早々に帰寮。
当然ながら、全員、即、ぐっすり寝込んでしまった。
で、かすかな犬の声に反応したのか、夢で犬の大喧嘩に直面。ついつい自分も大声をだしてしまい、周りの寮生も含めて目醒めてしまう。自分では昼寝のつもりだが、昼までグースカ寝ていたのである。

何時ものお店に食べに行った夢を見ていたんだ、などと語っていると、そこに、突然として店員がやってくる。何故に支払い無しで帰ったの、と。
夢でも出世払い気分はなかったから、この寮生、ビックリ仰天の図。

その後の結末はあってもなくても同じようなもの。

[825年科挙及第,博學能文]知舉[(考試)]年,
有國子監
[最高學府]明經[儒家經典科],失姓名,
晝寢,夢徙倚於監門。
有一人負衣嚢,衣黄,訪明經姓氏。明經語之,其人笑曰:“君來春及第。”
明經因訪鄰房郷曲五六人,或言得者,明經遂邀入長興裏
[長安の坊里]畢羅店[蕃中畢氏の好む有餡麺粉製蒸熟調理食品の食堂]常所過處。
店外有犬競,驚曰:“差矣!”
遽呼鄰房數人語其夢。
忽見長興店子入門曰:“郎君與客食畢羅計二斤,何不計直而去也?”明經大駭,褫衣質之。且隨驗所夢,相其榻器,皆如夢中。
乃謂店主曰:“我與客?夢中至是,客豈食乎?”店主驚曰:“初怪客前畢羅悉完,疑其嫌置蒜也。”
來春,明經與鄰房三人夢中所訪者,悉及第。

   [續集卷一 支諾皋上]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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