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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.19 ■■■

ボタニカルシャンプー

"ボタニカル"という名称がつくだけで売れるというのが現代のシャンプー市場の一大特徴。
自ら泡立つ力をもつ植物から抽出した成分が入っていれば、なんだろうと体に良いという、反科学の極みの思想。それが嬉しいだけなく、それを少しでも批判すると"人でなし"と決めつけられる恐ろしい社会であることがよくわかる。

その割には、成式のこの文章は宣伝に登場しないようだ。
洗髪すると、毛が長くなるというのだから使えそうに思うが。

鬼p莢,生江南地,澤如p莢,高一二尺,
沐之長發,葉亦去衣垢。

  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

ともあれ、サポニン/saponin成分があれば、洗剤にはなる。シャボン[羅:sapõ]同様に起泡性を示す言葉だからだ。素人化学では、水酸基がそれなりについている分子ということ。当然ながら、アルカリ性を発揮するが、非水酸基部分も半分を占めているので、界面活性剤の働きをする訳だ。

中国語はpで、サポニン含有豆果が採れる植物名称から来ている。と言っても、サポニン自体は、植物にはなんら珍しくない成分だが。おそらく、様々な構造体がある筈。毒性を持つものもあろう。
大陸では、サポニン含有量と植物原料の入手し易さ、及び人体へのリスクを鑑みると、p莢/唐p莢[唐サイカチ] or 西海子/"common" Honeylocustがベストとの評価がなされていたようだ。日本の評価とは違うようだ。
   「棘が目立つ木」[2014.4.26]
ご存じのように、もっぱら、野茉莉/木[エゴノキ]/Japanese snowbellや無患子/木患子[ムクロジ]/Soap-nut treeの果皮を使っていたと言われている。エゴノキは魚毒性があるとされているから、衣類洗濯用のようだが。
もっとも、それは何時の時代を指すのかの情報が乏しいから、そう言い切れるかはなんとも。
   「和傘部品用材の木」[2015.6.17]

成式が引いてきた、"鬼"p莢は何を指すかだが、p莢の種類は多いが、該当しそうなものは見つからない。[雲南, 華南, 野, 山,小果, ---.]しかし、江南産となると、その類ではなく、より強力な日本のエゴノキの変種の可能性もあるのでは。

尚、南方でも海岸べりだと、最大の豆と呼ばれる、海上を流れてくる"藻玉[フィリピン名:Gugo]"を使うことの方が多いようだ。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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