表紙 目次 | ■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.4.26 ■■■ 棘が目立つ木 漢方薬の故事によれば、サイカチ(p角)は民間的霊丹妙薬なのだとか。 老翁自有還魂之術 請用p角末吹入少女鼻孔 方能起死回生! 主適応は去痰だから、かなり強い生理活性物質が入っていそう。 しかし、それは洗浄力が強いことを意味している訳ではあるまい。洗剤として使われた樹木との解説だらけだが、小生はシャボン玉が作れる程度ではないかと見る。 油汚れを落とそうというなら、溶血作用が認められるというムクロジが圧倒的な力を発揮する筈。 役に立つとされたのは、洗浄ではなく、もっぱら薬の方では。上記の話など、いかにも、意識を失ったらサイカチで刺激を与えて救命すべしと言わんばかりだし。 そんなこともあって、江戸期には、結構植えられていたようだ。 JR中央線水道橋駅から御茶ノ水駅方向への南側線路際に道があるが、そこにも植わっていた模様。小生はアテネフランセへの坂道と呼んでいたが、「皀角坂」こと、サイカチ坂と呼ばれていたそうである。 今も、街路樹がサイカチ一色なら、是非見たいところだが、残念ながらそうはならない。ただ、線路が見えるようになると、他の道に比べればそれなりの風景にはなるが、特段魅力を感じる道とは言い難い。 しかし、サイカチが皆無という訳でもないのである。1960年に3本植樹されたからだ。何本残っているのかはわからないが、少なくとも1本は現存していることが、すぐにわかる。 自治体の土木部の大英断に思わず拍手である。 オット、どういうことかって。 そんなのは自明。 この木は棘が鋭いからだ。それを見れば誰だって驚く。 住民のなかには、万一、子供が眼でも突き刺したらどうするつもりと指弾する人がいない訳がない。不退転の決意がないとなかなか植樹する気にはなれまい。そうでなければ、マメに棘の剪定をするしかないのだから。 従って、マメの莢がつく街路樹としては、普通は、エンジュ [→] が選ばれる。(これはこれで、どうも病気がちのようで、お勧めとは言い難い。そうそう、エンジュは「槐」だが、サイカチには角があるのだから、こちらにしてもよかった気がする。) 坂道の話に戻ると、ココは街路樹はどうあれ、11階建てのレンガ色の建物に「さいかち坂ビル」との名称が掲げてあるので、誰でも坂名はすぐにわかる。余程に愛着のある名称ということか。 もちろんのこと、坂名標識も立っている。どこの区もこの手の表示にはえらく熱心だから。・・・実際、上り切った辺りから右折する道は「小栗坂」だし、さらに進んで右折するのが「とちの木通り」で、御茶ノ水駅そばになれば「かえで通り」となる。 ただ、愉快なのは、石製の旧標識は歩道の高さ調整の結果半分位埋まっているとの写真がよく紹介されていること。多分、教育委員会が地名表示に注力する前のものなのだろう。小生はそんな存在に気付かなかったがじっくり街を見ている人は流石違う。 そうそう、句碑もある。その手の趣味人には喜ばれれそうだが、この地と関係するとも思えない。 p角子の 実はそのままの 落葉哉 ここで気になったのは、漢字表記。坂名標識の記載は教育委員会マターだから、江戸期の文献で確認をとって、「皀」を使用しているのだろうが、「p」として欲しかった。細かなことではあるが。 秋になればわかるが、種子が熟す頃は莢が焦げ茶色になる。従って、この莢を「p莢」と呼んだと見るべきだろう。(尚、中国での名称は「山p荚」。) 言うまでもないが、「p」は「皁」で、黒色を示しているから、使われて当然だからだ。一方、「皀」だと、意味は「かんばしい」であり、用いる理由はとんと思いつかない。 唯一考えられるのは、「p」を使いたくなかったから、類似文字にしたということ。 なにせ、種子のことを、「p角子」ではなく、「西海子」と表記する位だ。樹木名サイカチもここから来ているなら、こちらで表記した方が面白いと思うが、そうはいかなかったのだろう。 よけいなお世話かもしれぬが。 (参考)「神田資料室 特集 神田・坂道散歩 文学でめぐる神田の坂」神田学会 「日本の樹木」出鱈目解説−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |