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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2016.12.21 ■■■

身近な水生植物

草名を見た瞬間に、どうせなんだかわからん植物なんだろうナと思ってしまう文章がある。・・・

銅匙草,生水中,葉如剪刀。
  [卷十九 廣動植類之四 草篇]

ただ、これに限っては、慈姑/澤瀉[オモダカ]/Arrowheadの仲間ではないかとの印象を与える書き方。いかにも匙型の葉をもつ、−/顎無[アギナシ]/−という類縁を見たことがあればだが。(オモダカ自体、規格品とは程遠い植物だから、素人には別種と言われても、というところ。)

中国名は"慈姑"だが、この名称は、日本のクワイを意味していないので注意が必要だ。
   「烏芋こと荸薺の話」[2014.2.24]
しかし、ここでは、その"烏芋"食話とは違う意味で"慈姑"を使っているのでご注意頂きたい。あくまでも、オモダカの漢語名としてなのである。
オモダカこそ、"慈姑"の元祖であろうという意味で使っている訳。野生の"慈姑"の根茎は小さく、苦み成分も感じるものだった訳で、それは現在のオモダカに当たるだろうという見方。ひょっとすると、オモダカの根茎を美味しく食べる調理の方法もあったのかも。そうでなければ、改良する気がおきる筈がないから。なにせ、中華料理では矢鱈にクワイが入ってくるのだから。
   「くわゐの話」[2008.7.15]

尚、クワイ系の葉の形は鏃型であると思ってしまうが、そうなっている時しか知らないだけ。水中からの伸び始めは細葉だし、やがて楕円形になる。写真に映っているのは最終形なのである。
水があれば匙も錆びて緑青色になる訳だ。葉の色がそっくりとは言い難いが。

自邸の広大な庭"修竹里園"の南にある池にも、銅匙草は生えていたので、普段からじっくり観察していたと思われる。

「初夏題段郎中修竹里南園」   唐 劉得仁
 高人游息處,與此曲池連。
 密樹才春後,深山在目前。
 遠峯初絶雨,片石欲生煙。
 數有僧來宿,應縁靜好禪。


その池、冬景色のなかで青々としている草があると。・・・

水耐冬,此草經冬在水不死。
成式於城南村墅池中見之。


なんの情報もないので、こちらもどんな植物か想像がつかぬが、なにも書いていないところをみると、珍しい印象を与えない植物だろう。それが、寒い冬でも元気ですゾ、ということでとりあげたのでは。
そう考えると、一番の候補は、水繁縷[ミズハコベ]か。ハコベを知らない人はいないだろうから、水生のハコベも冬を乗り切る力ありと書いておきたかったのだと思う。それに、水温さえ変動しなければ、暑い夏も乗り越えるし。

ま、緑を愛でるのもよいが、段家菜主催の2代目としては、水草は食としても野趣あって魅力的なのですゾ、という話も忘れていない。・・・

水韭,生於水,状如韭而葉細長,可食。

水韭/〃[ミズニラ]/Quillwortsは沈水植物。
流れが弱い浅い場所に棲息している。アクアショップで 見かけるのは温暖な地の中華水韮らしい。
この他には高山型の高寒水韭や、貴水韭、台湾水韮があるが、写真で見る限り皆同じにみえる。シダ系なので胞子繁殖だろうから、激変する環境に対応できまい。自然保護区の群生地を除けば、しており、野生種が生き延びれる環境はほとんど無いのでは。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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