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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.24 ■■■

木本のmisc.検討

「卷十八 廣動植之三 木篇」は訳のわからぬものも色々あるので、それらをゴッタ煮的に書いておこう。詳細に調べた訳ではないので、そのようなものとしてお読み頂ければ幸い。

○ 先ずは、植物名は知られていても、説明がわからぬものから。・・・
霄花】
中露水,損人目。


霄花】はノウゼンカズラ/Chinese trumpet vine。貝原益軒が、「酉陽雑俎」のこの部分をネタに書いているそうだ。
しかし、この植物は無毒である。虫が寄ってくるのだから、露に危険性があるとは考えにくいから、当然の結論だろう。益軒先生、成式にひっかけられたな。
別名が"目赫"で。
花の露が入ると、目が真っ赤っ赤になるという冗談だろう。
霄は青空に向かってどこまでも伸びていく蔓性植物で、眩しいと言っても過言ではない派手な花が咲くから、目を奪われるゾということでは。

○ これはえらく難しい。・・・
【松驕z,
即【鐘藤】也。
葉大, 晉安人以為盤。


揚州の晉安郡[@福建福州]を指すのだろうか。
そう思うのは、【鐘藤】とは"吊鐘藤"とか"猪菜藤"と呼ばれる昼顔の仲間の植物ではないかと見るから。熱帯種で、台湾〜両広一部〜雲南南部から海南辺りに自生。但し、大きい葉でも"盤"と呼べるほどではないようだし、昼顔系の葉は普通は薄肉で切れ込みがあるので、ピッタリとはいかない。しかし、ヒルガオ系には、多少厚く光沢があって丸型のものもあるから、その手の種かも。
表面に薄っすらとした毛羽があったりすれば、粘着しにくいので、ベトつく物を載せて使い捨てにするには便利と見てのこと。特に、海岸縁では有用だろう。
もっとも、熱帯では、葉皿と言えばバナナとかタロイモ。と言っても、巻いて焼いたり蒸したりする用途が多いが。

一方、【松驕zの字に拘れば、"髢リ"は唐鼠黐/トウネズミモチ/Glossy privet。"女"とも呼ぶ。松とは不凋木の意味にすぎまい。葉は厚くて楕円形で大とは言い難いが、椿の葉同様には使えそうである。

○ 「果物本草」[→]で、Kiwifruitとしてとりあげたが、今になって気付いた点あり。・・・
【侯騷】,
蔓生,子如卵,既甘且冷,輕身消酒。
《廣誌》言,因王太仆所獻。

王"太僕"ということで、大勢いる車馬管轄の官人の1人である王としたが、「本草綱目」を見ると《出酉陽雑俎》は"王太仆"。
王太仆/王冰は「黄帝内経素門」を執筆した唐代の医家だ。
甘くて美味しいが、身体を冷やす効果も大いにありますゾとの"学説"を展開したのであろう。

○ 曹操[魏武帝]が弾丸ボリボリ。・・・
【蠡薺】,
子如彈丸,魏武帝常啖之。


魏武帝は、「宦官という卑しい存在の倅」と罵倒されたりしているから、品の無いものを食べている情景では。ただ、「四時食制」という著書がある
マカダミアナッツと近縁の小果山龍眼/山茂樫ではないか。中が軟い果実で、ラクビーボール形状で長さ1cm強。可食との記載はみつからないから大ハズレかも知れぬ。

○ リンゴではないとも言え、リンゴだとも言え。・・・
【白】,
出涼州野豬澤,大如兔頭。


(略字:奈)=木+示。白川流で考えれば、示は神に供える台であり、その上に木が生贄的に捧げられていることになる。実なのであろう。

これは、日本の店頭に並ぶ西洋リンゴ系を指す。唐代の感覚から言えば、これは林檎ではない。林檎とは、現在、日本では食べることはない和リンゴの方で、花紅と呼ばれたりすることが多い。
  「It's apples and RINGOs.」[2014.3.3]
3種ありそう。産地は例えばこんなもの、という程度の情報。・・・
 白…涼州@甘粛の産
 青(緑)…@関中の産
 赤…酒泉@甘粛の産

柰は、紫系もあるようだ。・・・
【脂衣】,
漢時紫大如升,核紫花青,研之有汁,可漆。
或著衣,不可浣也。


信州林檎の産地では、伐採されたリンゴ樹木の皮の「苹果(ピンゴ)染」が伝わっている。色素があれば、染色は難しい訳ではない。
"漆"に使えるというのは信じがたいが、芯が蜜化している場合、ソルビトール量がとてつもなく多く、この物質は保湿・湿潤効果を出す用途でも使われているからその辺りの現象を指しているとしたら、驚きである。

○今村選定版で収載されている話を、逸「周書」王會から拾った。・・・
【比
白州比,比者華若羽。伐其本為車,終行不敗。


【比】とは棕櫚/Hemp palmのことらしい。
皮や葉は使い道が豊富であるが、幹材は余り知られていない。
車に使うと全日運行可能という意味は、濡れても腐らないという意味だろう。それと、真っ直ぐであるから、力がかかる方向で使えば持ちがよいのは間違いない。重量感ある材なので緻密な組織と思われ、火にも強かろう。
そう考えると、鐘つき棒に最適と解釈される仏教説話がありそうな気がするが、見つからなかった。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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